ep6.和の国編 黒夜神鹿神社 ミリィ編
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状況整理
① 青龍
② 白虎
③ 朱雀→セリアにより解放
④ 玄武
⑤ 大蛇→セリアにより解放
⑥ 黒夜神鹿
⑦ 九尾狐
⑧ 八咫烏→創夜により解放
⑨ 大天狗
⑩ 金烏
⑪ 狛犬
⑫ 麒麟
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ミリィは高速で移動できるのは自分だけなので最速で、大陸を駆け抜けた、その際、アメリカ大陸ほどの地下の沼地があるのだが、その沼地をたった一度のジャンプで、目的地の黒夜神鹿神社の参道に着地した。
神社近くの村人に、鍛冶職人の仙人について尋ねてみる。
「仙人さんかい?さあねぇ。この辺の古い話なら、黒夜神鹿様なら何か知ってるかもねぇ」
村人はそう言ったが、『黒夜神鹿は封印されていて、手がかりがない』とも教えてくれた。
(カエデが封印を解くべき神鹿ね。でも情報が欲しいわ、これは仕方がないことなの)
ミリィは最短距離で神社へと向かった。早く終わらせて、集合しないと。
黒夜神社の鳥居をくぐった瞬間、辺りの空気が一変した。数えきれないほどの変化した狸たち、そして総大将、妖魔・隠神刑部が出現する。
「ふははは!神鹿の神聖なる地を汚染してやる!貴様の速さなど、我らの多勢と妖力からは捌ききれまい!」
隠神刑部は、自信満々にその威容を誇示する。だが、ミリィにとっては、時間消費の多発警報でしかない。
(未来視...。攻撃パターンは三つ、回避は...必要なさそうね)
ミリィの瞳から感情が消える。無我の境地。世界はスローモーションに見えた。
「――終わりよ」
――『瞬速』。
何が起こったか?
ミリィの体がわずかに揺れる。これが超高速の体捌きとなり、彼女を取り囲もうとしていたすべての狸の急所を、一筆書きのように貫く軌道を作り出す。彼女の『瞬速の剣』は、未来視が示した、隠神刑部のほんのわずかな隙間に、吸い込まれるように突き刺さった。
ドサァァァ!
遅れて、隠神刑部と配下の狸たちの体が同時に崩れ落ちた。全員、一撃。彼らは、斬られたことすら認識できなかっただろう。
隠神刑部を倒した衝撃で、神鹿を封じていたクリスタルに亀裂が入り、砕け散った。
クリスタルが砕け散ると同時に、静かだが重々しい神聖な気配が沼地全体に広がった。
黒い体毛と、星々を映したような角を持つ巨大な鹿――黒夜神鹿が、祠の奥からゆっくりと姿を現す。
その眼光は、数多の時を見てきた静謐な知性を宿していた。
『……封印を破り、我が目覚めを促した者よ。汝なんじは、あの火でも水の一族ではないな』
黒夜神鹿の低い声が、ミリィの心に直接響く。
ミリィは剣を収め、問いを投げかける。
「カエデはまた後で来るわ。私はミリィ。聞きたいのは一つよ。この国に、鍛冶職人の仙人はいる?」
黒夜神鹿は微かに首を振る。
『鍛冶職人の仙人か、私の国にはおらぬようじゃ』
「……いないのね。他の国にいるかはわからないの?」
『鍛冶師は、炎と大地、そして鉄を好む。我ら神鹿の国ではない。次の神獣の国へ行けば、手掛かりがあるやもしれぬ。他の国の情報は、わしのように封印されたものに聞くがよい。国のなかであれば容易にわかる』
その言葉に、ミリィの目が鋭くなる。彼女の未来視に、新しいルートの可能性が示された。
「次の神獣の国、ね。教えてくれて感謝するわ、黒夜神鹿」
ミリィは会釈一つで踵を返す。仙人の情報は得られなかったものの、次の場所への確実な指針を得たことは大きい。彼女の目的は、最短での情報収集なのだ。
『……速き者よ。汝の速度は、この世界に類を見ぬ。』
黒夜神鹿の静かな声が、背後から追ってきた。
ミリィは足を止めずに答える。
「ええ、知ってるわ。だから、私は一番遠くへ行くのが役割と言えるわ」
移動の途中、一瞬だけ、白虎の国の境界を横切った。そこには、神獣を祀る白虎神社がある。
ピキッ――。
その神社の領域を通過した瞬間、リンの気を感じた。
「……ん?今の、リンさんの気ね。ここは任せた方がいいわね」
一言だけ呟くと、ミリィはそのまま麒麟の国へと突入した。
麒麟の国は、強固で頑なな大地だった。空は高く、乾燥した赤茶色の土が広がり、強風が吹き荒れている。村人たちは皆、分厚い土壁の家に身を寄せている。ここは、火と鉄を扱う者が好むであろう、大地と乾燥という印象だ。
ミリィが目指した麒麟神社は、広大な大地の中央、岩が隆起した聖地に建っていた。そして、そこに待ち構えていたのは、古代から土着の精強な存在――妖魔・ツチグモ(土蜘蛛)だった。麒麟の大地の象徴に対峙する、根源的で強固な土の力を宿す巨大な妖怪だ。
「よく来た、速き者よ。この大地から生み出された私の糸と、根源の力からは、お前も逃れられまい!」
ツチグモは警告ではなく、宣言するように咆哮した。巨大な口から、硬質で粘着性のある蜘蛛の糸を猛烈な勢いで吐き出す。それはただの糸ではない。大地と魔力を練り込んだ、超高密度の防護トラップだ。辺り一帯は瞬く間に、糸が交錯する、逃げ場のない【檻】に変貌した。
(やっかい。さすがに糸の密度がエグいわね。このままじゃ速度を殺されるわ、なんてね。創夜の横に立ちたくて師匠にお願いしてこの速さを得たのよ)
それは空気抵抗すら無視する、次元の速度。
『未来視』が、糸が交差する無数のポイントの中から、『体が通り抜けられる最小の隙間』を正確に捕捉する。その隙間は、もはや糸の断層に空いた分子レベルの穴に等しかった。
『無我の境地』が、その隙間を絶対に外さない精密機械のような体捌きを指令する。彼女の身体は、極超音速で飛ぶ一本の針だ。
回避?否。それは、彼女の移動経路が、たまたま相手の攻撃の『外側』だった、というだけの話だ。
糸の超高密度な檻の中を、ミリィは完璧に縫って進む。ツチグモは糸を操り、軌道を塞ごうとするが、その思考すらミリィの速度には追いつかない。
次の瞬間、ツチグモの本体に肉薄。
『瞬速の剣』が一閃。大地の力で強固になった妖怪の肉体といえど、その中枢への防御は薄い。
結果は、既に未来視で確定していた。
ツチグモは絶命。自身が張り巡らせた糸の檻の中で、何が起きたか理解する間もなく崩れ落ちた。ミリィの戦闘は、常にコンマ以下の世界で完結するのだ。
ツチグモを倒し、砕けた封印クリスタルの中心から、大地そのものが脈動するかのような巨大な気配が立ち昇った。黄金の鱗と、雄々しい角を持つ神獣――麒麟が、穏やかながらも威厳に満ちた姿で降臨する。
『……速き者よ。汝が我が封印を解き、地の穢れを払ったか』
麒麟の低く響く声が、ミリィに語りかける。
ミリィは剣を収め、単刀直入に尋ねた。
「麒麟。私はミリィ。聞きたいのは一つだけよ。この国に、鍛冶職人の仙人はいる?」
麒麟は優雅に首を傾げた。
『ふむ。火と槌を愛する者たちか。彼らは山を愛し、大地に根を張る。この麒麟の国は大地だが、彼らの求める"炎の源"ではない』
「……またいないのね。やっぱりそうよね」
ミリィは肩を落とし、ため息をつく。最短ルートで探しているはずなのに、情報が遠い。
『だが、焦る必要はない。汝の速度があれば、世界は一瞬であろうに』
麒麟は面白がるように目を細める。
『鍛冶の仙人は、最も高い山、あるいは最も深い森に隠れることを好む。この大陸の十二の神獣のうち、まだ目覚めていない神々を調べれば、その場所が自ずと見えてこよう』
「最も高い山、最も深い森……?」ミリィは心の中でマップと未開放の神獣を照合する。
「ヒント、感謝するわ。これで次の目的地が定まった」
ミリィは会釈し、すぐに踵を返そうとする。
『待て、速き者よ』
「なにかしら?」
『汝の速さを見て、一つ問いたい。汝にとって、その極限の速度は何のためにある? 敵を倒すためか?』
ミリィは一瞬、足を止めた。そして、微かに笑う。
「違うわ。私のこの速さは彼の隣に立つためよ。いつまでも守られるだけの仲間なんて嫌なの。だから努力したのよ」
『ほう?』
「だから、無駄な時間は一秒もいらない。早く用事を済ませて、私の大切な場所に戻らないと」
ミリィはそう言い残し、麒麟が何かを言う暇もなく、『瞬速』でその場を後にした。
麒麟はミリィが消えた空間を見つめ、静かに笑った。
『なるほど。愛のために世界を駆けるか。愉快なものだ』
探索を終え、すっかり夜になった。
「あれ?温泉にセリアの服があるわ」
ミリィは超高速で移動し、カエデの家へと帰宅し温泉に入ったあと、創夜が寝ていることに気がつき、創夜の横で、束の間の平和な眠りについた。




