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転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: @SsRay
和の国編

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ep4.和の国編 八咫烏神社 創夜・フィーリア編

 創夜は情報収集のため、天空の町「飛鳥郷」を目指して飛んでいた。 だが、その後ろには誰にも見えないはずの影があった。フィーリアだ。 アストラルブレーカーの技術を応用した完璧な隠蔽を展開していた。


(ふふふっ、気づいてないわね。どこに行くのかしら)


 だが、その隠密行動は思わぬ形で破られた。


 創夜は情報収集のため、天空の町「飛鳥郷あすかごう」へと向かっていた。目立つことを避け、静かな飛行術で町の上空を滑空し、人目を避けながら仙人の手がかりを探す。


「しかし、すごい場所だな。岩山に生えたキノコみたいだ」


 創夜は巨大な岩山の頂に降り立ち、一息つく。眼下には雲海が広がり、まさに仙境といった風情だ。


 その時、鋭い声が響いた。 「そこを飛ぶは誰だ! この神域を許可なく侵犯する無礼者め!」


 創夜は眉をひそめた。自分はすでに着地している。見つかったのは、空を飛んでいた時ではないはずだ。 声のする方を見やると、雷雲を纏った巨大な神社――鳴神御社の付近から、複数の黒い影が飛び立つのを確認した。烏天狗の雑魚部下たちだ。


 彼らは創夜を妖魔の残党と誤認したのか、奇声を上げて一斉に攻撃を仕掛けてきた。


「チッ、見つかったか。俺は怪しいものではない。鍛冶職人の仙人を探している旅の者だ!」


 創夜は剣を鞘に納めたまま、声の届く距離まで減速し、説明を試みる。 しかし、烏天狗たちは聞く耳を持たない。


「たわけめ! 妖魔の瘴気しょうきまとう貴様のような者が、神域に何の用がある! 問答無用! 撃ち落とせ!」


 硬い羽根で編まれた矢が創夜の横をかすめる。創夜は攻撃を避けたが、彼らを傷つけるわけにはいかない。 「だから、俺はあやしいものじゃないって言ってるだろう!」


 創夜がなおも説得を試みた瞬間、一人の烏天狗が巨大な団扇うちわを振りかざした。

 ―― 風刃ふうじん


 強烈な突風が創夜めがけて放たれる。


「てめぇ……!」


 風で吹き飛ばされたり、イラつかせてくるその行為が、創夜の頭に血を昇らせた。 その時、烏天狗たちの視線が、創夜の背後、何もない一点に集中した。


「……ん?」


 創夜がいぶかしむと、烏天狗の一人が叫んだ。

「あの女だ! 先ほどから神域をうろついていたのは!」


 突如、空間が揺らぎ、そこにフィーリアの姿が浮き上がった。 彼女は岩陰に身を潜めていたはずなのに、烏天狗たちに発見されてしまったのだ。 フィーリアは完璧な隠蔽技術を展開していたはずだが、何もない空間を凝視されていたためか、わずかな存在の揺らぎを捉えられたらしい。


「この世界の妖魔は感知能力が普通じゃないみたいね」 フィーリアが淡々と創夜の隣に立つ。


「何でここにいるんだ?」

「決まってるじゃない。おもしろそうだからよ!」


 フィーリアが烏天狗たちの方へ視線を向けた。その言葉に、烏天狗たちは激昂する。 「無礼者め!成敗してくれるわ」


 烏天狗たちが弓や槍を構え、フィーリア目掛けて一斉に襲いかかった。 フィーリアは最小限の動きで、風刃や槍の突きをひらりひらりとかわし続ける。まるで舞を踊っているかのような、流れるような回避だった。


「当たらん! なぜ当たらぬ!」

「無駄な動きが多すぎるのよ。しっかり狙いなさい。どこを狙っているのかしら」

 フィーリアは余裕しゃくしゃくでかわし続ける。


「てめぇ……! 俺をイラつかせた上に、フィーリアまで巻き込みやがって。やってやるよ!」

 創夜の逆鱗に触れた。


 ――ミッドナイト・ステラ・クライシス!


 星々が収束するような超高速の斬撃。それは烏天狗たちを一瞬で消滅させた。

「創夜、さっきのって妖魔だったんじゃないの? 私は言われた通り手は出さなかったわよ」

 その直後、近くにあったクリスタルに覆われた屋敷が、爆音と共に弾け飛ぶ。

「――チッ、最悪だ、どう考えてもあれが封印だよな。フィーリア手は出してないけど見つかっていたよな」

「創夜には見つからなかったのに、この世界の特殊な感知能力で発見されたみたいだわ」

「ずっとついてきていたなんて、仲間の気は感知したいときしか探さないようにしているからなぁ」

「解いてしまったものは仕方がない、せっかくだから封印が解かれた神様にでも会いに行こうか」


 創夜は、自分が破ってしまった封印のある八咫烏神社(鳴神御社)へと向かった。 神社では、封印が解かれたことで巫女たちが慌ただしく着物姿で走り回っていた。


 その時、本殿から黒と赤の光を放つ巨大な三本足の鳥の影が浮かび上がった。 影は瞬時に凝縮し、創夜の眼前に、黒い狩衣と炎のような赤い目をした青年の姿で現れた。背中には、夜の闇に溶け込むような漆黒の翼が三対開いている。


 圧倒的な神気。これが、妖魔に封印されていたはずの、朱雀の国の中心を司る神――八咫烏だった。


「おや、随分と面白い客人だ。異界のものよ、ここへ何をしに来たのだ、封印が破られたようだが、火の意思を継ぐものも水の意思を継ぐものもおらぬようだな」


 八咫烏は涼やかな声でそう言うと、創夜の正面に降り立った。巫女は驚愕の表情を浮かべ、すぐにひざまずく。

「八咫烏様! お目覚めに……なされたのですか!?」


 八咫烏の赤い瞳が、真っ直ぐに創夜を捉える。

「カエデには悪いが、俺が封印を解いてしまったようだ」

 創夜がそう言うと、八咫烏は薄く笑みを浮かべた。


「貴様のおかげで、私は自由になった。あの技は、ただの消滅ではない。世界の理すら捻じ曲げるような、『概念の収束』に近い。あれほどの大技を。使うとは、いささか無茶が過ぎる」


 創夜は肩をすくめた。

「すまない。ついカッとなって。加減のし方を忘れちまってた」


「ふむ」八咫烏は創夜を興味深そうに見つめ、クスリと笑った。

「構わん。結果として、私の解放を早めたのは貴様だ。何か望みはあるか? 神として、願いの一つくらいは叶えてやろう」


 創夜は待ってましたとばかりに、すぐに本題を切り出した。 「望みは一つだ。俺は、この和の国にいると言われる『鍛冶の仙人』を探している。その居場所を教えてもらえないか?」


 八咫烏は、少し目を細めて思案した。 「鍛冶の仙人、か。ああ、あの気難しい老人のことか。知っておる。だが、どこにいると聞かれるとあの老人はひとけの無いところを好むからなぁ、邪魔されるのが嫌なのじゃろう。この国におれば、わかるのだがこの国にはおらぬようだ」


「ありがとう、探す手間がはぶけた、俺は帰らせてもらう」 創夜はそういうと、フィーリアと共にすぐさま高速でカエデの家に戻った。


 カエデの家に戻ると、あたりは静まり返っていた。 (あれ、フィーリアがさっきまでいたはずなんだが。手分けして探索しろって言っておいたから、他の場所へでも行ったのか?)


 そう思いながら、創夜は裏手にある温泉へと向かった。


「よーし、誰もいないな。今のうちだ」 ガラリと扉を開けると、そこは旅館の施設のような巨大な塀で囲われた露天風呂だった。 「うわ! 広いな……!」


 感嘆の声を上げながら、もうもうと立ち込める湯気の中へ足を踏み入れると、煙の中に誰かが立っているのに気づいた。


「うわっ、誰かいるのか……?」 創夜が身構えると、煙の向こうから見慣れた猫耳と長い髪が揺れながら現れた。


「……なんだ、フィーリアか。驚かすなよ」 「創夜、お帰りなさい。少し戻るのが遅かったわね」


 湯船の縁に立つフィーリアは、なぜか雑誌の表紙から抜け出してきたような、不自然なほど完璧なポーズを決めていた。腰をくねらせ、指先を頬に添えるその姿はあまりに隙がない。


「創夜、さっきの烏天狗はやはり妖魔だったわ。私がひらひらとかわして隙を作った甲斐があったわね」 そう言いながら、今度は髪をかき上げ、胸を強調するような別のポーズに切り替える。


 創夜は湯船に浸かりながら、前から気になっていたことを口にした。

「……なぁ、フィーリア。さっきから思ってたんだけど、そのポーズはプログラムされたのか?」


 フィーリアは不思議そうに首をかしげ、今度はセリアの真似をするように腕を組み、胸を寄せて揺らしてみせた。 「博士が研究しすぎて、人の感情の頂点を目指した結果かもしれないわね。セリアはこうやって胸を揺らしているわよね?」


 創夜はそれを見て思わず笑った。

「はははっ! いや、一緒にいてわかったんだけど、それ、普通の人が日常生活でよくやるポーズじゃないぞ」


「そうなの?」

「ああ。それはグラビアアイドルとかが写真用に取るポーズだ」


 フィーリアは少し意外そうな顔をして、自分の姿勢を再確認するように視線を落とした。

「不自然だったかしら?」

「いや……まあ、悪くはないけどな」


 創夜が苦笑いしながら言うと、フィーリアは満足げに、また一つ新しいポーズを試しながら湯船へと足を踏み入れた。

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