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転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: 真柴 零
バベルの塔編

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ep33.バベルの塔 二十四階 神々との決闘ゼウス(Zeus) vs 創夜

砂漠を抜けた先――

そこは、果てしなく続く白の神殿。

天井を覆うのは雲ひとつない蒼天、だが空気には雷鳴が潜んでいた。


創夜たちの前に立つのは、黄金の鎧に包まれた巨躯。

背中から光の翼を広げ、右手には天を裂く槍――雷霆らいていを握る。


「来たか、人の子よ。」


雷鳴が言葉になる。

ゼウスが一歩踏み出すたびに、天が揺れ、空が鳴る。


盾からエジスの声がした。

「創夜全力できなよ!」


創夜は肩を回しながら、軽い調子で笑った。

「思ったより早く出てきてくれて助かったよ。神のくせに待たせるの好きそうだったからな。」


「フハハ……口の減らぬ者だな。

 だがよい――“遊び”ができそうだ。」


ゼウスが掲げた雷霆が、瞬く間に天を裂いた。

轟音と共に、天空から無数の雷柱が降り注ぐ。


創夜は軽く剣を構えた。

その刃に七色の光が宿る。炎、水、風、土、雷、氷、闇――七属性の精霊が唸りを上げる。


「《属性展開・アルティメットブレード》」


七つの剣が浮かび、創夜の背後で螺旋状に回転を始めた。

神殿の床が光の反射で虹に染まる。


「ほう……“七の調律”か。人間がその域に達するとは。」

ゼウスの声が雷鳴に溶ける。


「これはな、“遊び道具”だ。

 お前がどこまで本気か――試させてもらう。」


創夜が地を蹴る。


空気が裂け、七つの剣が同時に舞う。

炎の剣が斬り裂き、氷の刃がその余波を凍らせ、雷の剣が貫く。

それぞれが別の軌道を描きながら、まるで一人の剣士が七方向から攻撃しているような錯覚を生む。


ゼウスは雷霆を構え、豪雷を纏った盾でそれを弾く。


「ぬぅんっ!」


光と光がぶつかり、神殿の壁が一瞬で吹き飛ぶ。

創夜の剣が天井を砕き、ゼウスの雷が地を裂く。


セリアが息をのむ。

「なんて魔力密度……! 一撃で国が吹き飛ぶレベルよ!」


リンが目を細める。

「創夜……遊んでる顔してるアルネ。」


ゼウスが雷霆を横薙ぎに振るう。

瞬間、雷鳴が弾け、光速の閃光が創夜を飲み込んだ。


だが、そこには誰もいない。


「……!?」


ゼウスが目を見開く。

次の瞬間、背後から風の剣が閃いた。


「風の流れを読むのは得意でね。」


創夜が軽口を叩きながら、ゼウスの背中へ刃を滑らせる。

ゼウスは咄嗟に雷の壁を展開。

しかしその壁を貫くように、創夜の氷剣が穿つ。


「二重属性融合――《氷雷閃》!」


雷が氷に閉じ込められ、爆裂音が静寂の中に吸い込まれる。

ゼウスの黄金の鎧に亀裂が走った。


「ほう……我の鎧を傷つけたか。」

ゼウスが笑う。

「ならば、我も遊ばせてもらおう。」


ゼウスが雷霆を掲げた。

その瞬間、空が裂け、雲の奥から無数の雷光が滝のように降り注ぐ。


「《神雷招来・オリュンポス・ジャッジメント》!」


白光が世界を覆い、視界が真っ白に染まる。

創夜の身体が光の奔流に包まれ、神殿ごと吹き飛ばされた。


砂煙の中、ミリィが叫ぶ。

「創夜――!」


リンが睨みつける。

「まだ終わってないアル!」


砂の向こうで、光が弾けた。


「……おいおい。眩しすぎて、髪焦げるだろ。」


紫電の残滓の中から、創夜がゆっくりと歩み出る。

その手には七属性が融合した一本の剣。

刃の中心には、夜空の星が浮かんでいた。


「《究極融合・星界創刃アルティメット・ブレード・ネメシス》」


創夜の剣が鳴動する。

七属性が融合し、光と闇が螺旋を描く。


「お前の雷は確かに速い。

 でも――世界そのものを速く動かせば、意味ないだろ?」


創夜が片目を閉じる。


「《時間加速・クロノシフト》」


世界の流れが変わった。

ゼウスの雷が止まり、空の雲が静止し、雷鳴が遅れて聞こえる。


その静寂の中――

創夜の剣が音もなく振り抜かれた。


斬撃が遅れて炸裂し、神殿の柱が一瞬で崩れ落ちる。


ゼウスが雷霆を地面に突き立て、光を迸らせて受け止める。


「フハハ……まさか、時間を操るとは!」


創夜は笑い返す。

「悪いな。これでも“少し遊んでる”だけなんだ。」


両者の力が拮抗したまま、砂嵐が巻き上がる。

雷鳴と魔力の嵐が、世界の中心でぶつかり合っていた。


ゼウスが口元に笑みを浮かべる。

「――面白い。ここまで心が躍ったのは、久しい。」


創夜も同じように笑った。

「おいおい。こっちはまだ、ウォーミングアップだぜ?」


雷霆が再び唸り、創夜の剣が七色に輝く。


天が裂け、二つの光がぶつかる――


神と人、雷と星。


その瞬間、世界が再び光に包まれた。


天が裂けた。

雷鳴が音を越え、光が音を飲み込む。


ゼウスの身体を、黄金の神気が包み込む。

鎧は砕け、その下から“光そのもの”のような肉体が現れた。

背には無限に分岐する雷の翼。

右手には世界を支配する槍、左手には神々の加護そのもの――《盾アイギス》。


「見せよう、人の子よ。

 これが――我、全能神ゼウスの真なる姿!」


その声だけで、空間が波打ち、大地が反転する。

雷が縦横無尽に走り、空間そのものが神の威圧で震えた。


創夜は剣を静かに鞘へと納めた。


「……いいね。

 こういうバトル、久しぶりだ。」


風が止まり、砂が宙で静止した。

創夜の黒髪がゆっくりと舞い上がり、彼の瞳に“無”の輝きが宿る。


雷鳴が天を裂き、大地が光で埋め尽くされる。

ゼウスの全能形態――その力は、まさに“創世”そのもの。

だが創夜の周囲だけは、静寂が支配していた。


風が止まり、砂の一粒すら動かない。

それは“無我”。

彼の意識が個を離れ、自然と同化した瞬間だった。


ゼウスの瞳が細められる。

「……動かぬ、だと?」


次の瞬間、雷霆が閃いた。

雷光が稲妻の竜となり、創夜を貫かんと唸りを上げる。


轟音。

光。

そして――空振り。


創夜はそこにいた。

動かぬまま、風の流れと雷のリズムに完全に溶け込み、

“避けていないのに当たらない”という矛盾の中に存在していた。


ゼウスが驚愕に眉を寄せる。

「……貴様、時を止めたのか?」


創夜は微笑むだけで答えた。

「止めちゃいない。俺が――ただ、“動かないだけ”だ。」


再び雷霆が振るわれる。

天地を裂く光が十度、二十度と閃く。

しかし、すべてが創夜を掠めることなく空を切る。


リンが息を呑む。

「……まるで、雷が避けてるみたいアル。」


セリアが震える声で呟く。

「違う……創夜が“世界と同調”してる。

 雷も、空気も、時間すら敵じゃない……。」


ゼウスが一歩踏み出す。

その圧力だけで神殿の柱が粉砕された。

「ならば、盾で潰すのみ!」


《アイギス》が唸り、雷鳴を纏って創夜に迫る。

創夜はわずかに身体を傾け、掌を添える。


――ドン。


地響き。

黄金の盾が一瞬だけ軋んだ。


「……ほう。」

ゼウスの目が見開かれる。

“叩かれた”――神盾が人の拳で。


創夜は静かに息を吐く。

「……重いな。けど、割れないとは言ってないだろ。」


次の瞬間、創夜が再び消える。

砂の粒子が遅れて舞い上がる。


風が鳴る。

雷鳴が遅れて響く。


そして――ガンッ!!


二撃目。

盾の表面に亀裂がひと筋走った。

ゼウスの肩が僅かに沈む。


「人間の拳ごときが、我が盾に……!」


「神の盾も、叩けば音が鳴るんだな。」


三撃目。

四撃目。

五撃目――


一撃ごとに光が散り、雷の膜が削られていく。

ゼウスの表情に、初めて“焦り”が浮かんだ。


「馬鹿な……我が加護を、力ずくで穿つなど……!」


創夜は微笑みながら言う。

「力じゃない。無だ。

 お前が世界の“理”なら――俺は“”。

 全ての狭間に潜る存在さ。」


ゼウスの目が光る。

「ならば、間ごと破壊する!」


神気が爆発。

天から降る雷が一本に収束し、《アイギス》へと注がれる。

黄金の盾が、太陽のごとき光を放った。


「《神盾終焉形態・ディバイン・バースト》!」


全能の衝撃波が創夜を飲み込む。

砂漠が消え、地が溶ける。

神殿が吹き飛び、仲間たちはただ見守るしかなかった。


――だが。


轟音が収まった後、

光の中心で立っている影が一つ。


「……まだ終わってない。」


創夜の声が、静かに空を切った。


衣は破れ、肩には焦げ跡。

だがその瞳は澄み渡る蒼。


「三度目の衝撃……だいぶ硬いな、神様の盾。」


創夜が拳を握る。

空気が震える。

天地が押し潰されるほどの圧が拳に集う。


「じゃあ……これでどうだ。」


一歩。

踏み込む。


音が消える。


掌が盾に触れた瞬間、

全ての色が消えた。


白。


そして、破裂音。


《アイギス》が粉々に砕け、

ゼウスが後方へ吹き飛ぶ。

胸甲が割れ、黄金の血が滲む。


それでもゼウスは笑った。


「……フフ……やはり、貴様は人の子ではないな。」


創夜は息を吐き、拳を下ろす。

「いや、人間さ。ただ――少し、しつこいだけだ。」


ゼウスが笑う。

「龍族の娘も、そして貴様も……

 “神を楽しませる”術を知っている。

 実に――見事だ。お前の勝ちだ。」


創夜がニッと笑い、背を向ける。

「お褒めにあずかり光栄だ。

 でもな……これが人間の“本気”だ。」


ゼウスの瞳に、確かな敬意の光が宿った。

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