↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[完結]転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: 真柴 零
バベルの塔編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/134

ep16.バベルの塔編 六層 神々との決闘ゼウス(Zeus) vs 創夜

 砂漠を抜けた先――

 そこは、果てしなく続く白の神殿。

 天井を覆うのは雲ひとつない蒼天、だが空気には雷鳴が潜んでいた。

 創夜たちの前に立つのは、黄金の鎧に包まれた巨躯。

 背中から光の翼を広げ、右手には天を裂く槍――雷霆(らいてい)を握る。

「来たか、人の子よ」

 雷鳴が言葉になる。

 ゼウスが一歩踏み出すたびに、天が揺れ、空が鳴る。


 フィーリアが声をかける

「創夜全力でいきなよ!」

 創夜は肩を回しながら、軽い調子で笑った。

「思ったより早く出てきてくれて助かったよ。神のくせに待たせるの好きそうだったからな」


「フハハ……口の減らぬ者だな。

 だがよい――『遊び』ができそうだ」

 ゼウスが掲げた雷霆が、瞬く間に天を裂いた。

 轟音と共に、天空から無数の雷柱が降り注ぐ。


 創夜は軽く剣を構えた。

 その刃に七色の光が宿る。炎、水、風、土、雷、氷、闇――七属性の七つの剣が浮かび、創夜の背後で螺旋状に回転を始めた。

 神殿の床が光の反射で虹に染まる。

「ほう……『七の調律』か。人間がその域に達するとは」

 ゼウスの声が雷鳴に溶ける。

「これはな、『遊び道具』だ。お前がどこまで本気か――試させてもらう」


 創夜が地を蹴る。


 空気が裂け、七つの剣が同時に舞う。

 炎の剣が斬り裂き、氷の刃がその余波を凍らせ、雷の剣が貫く。

 それぞれが別の軌道を描きながら、まるで一人の剣士が七方向から攻撃しているような錯覚を生む。


 ゼウスは雷霆を構え、豪雷を纏った盾でそれを弾く。

「ぬぅんっ!」

 光と光がぶつかり、神殿の壁が一瞬で吹き飛ぶ。

 創夜の剣が天井を砕き、ゼウスの雷が地を裂く。

 セリアが息をのむ。

「なんて魔力密度……! 一撃で国が吹き飛ぶレベルよ!」


 リンが目を細める。

「創夜……遊んでる顔してるアルネ」

 ゼウスが雷霆を横薙ぎに振るう。

 瞬間、雷鳴が弾け、光速の閃光が創夜を飲み込んだ。

 だが、そこには誰もいない。

「……!?」


 ゼウスが目を見開く。

 次の瞬間、背後から風の剣が閃いた。

「風の流れを読むのは得意でね」

 創夜が軽口を叩きながら、ゼウスの背中へ刃を滑らせる。

 ゼウスは咄嗟に雷の壁を展開。

 しかしその壁を貫くように、創夜の氷剣が穿つ。


「二重属性融合――《氷雷閃》!」

 雷が氷に閉じ込められ、爆裂音が静寂の中に吸い込まれる。

 ゼウスの黄金の鎧に亀裂が走った。

「ほう……我の鎧を傷つけたか」

 ゼウスが笑う。

「ならば、我も遊ばせてもらおう」


 ゼウスが雷霆を掲げた。

 その瞬間、空が裂け、雲の奥から無数の雷光が滝のように降り注ぐ。

「神雷招来・オリュンポス・ジャッジメント!」

 白光が世界を覆い、視界が真っ白に染まる。

 創夜の身体が光の奔流に包まれ、神殿ごと吹き飛ばされた。

 砂煙の中、ミリィが叫ぶ。

「創夜――!」


 リンが睨みつける。

「まだ終わってないアル!」

 砂の向こうで、光が弾けた。

「……おいおい。眩しすぎて、髪焦げるだろ」

 紫電の残滓の中から、創夜がゆっくりと歩み出る。

 その手には七属性が融合した一本の剣。

 刃の中心には、夜空の星が浮かんでいた。


「究極融合・星界創刃《アルティメット・ブレード・ネメシス》」


 創夜の剣が鳴動する。

 七属性が融合し、光と闇が螺旋を描く。

「お前の雷は確かに速い。でも――世界そのものを速く動かせば、意味ないだろ?」


 創夜が片目を閉じる。

「時間加速・クロノシフト」

 世界の流れが変わった。

 ゼウスの雷が止まり、空の雲が静止し、雷鳴が遅れて聞こえる。


 その静寂の中――

 創夜の剣が音もなく振り抜かれた。

 斬撃が遅れて炸裂し、神殿の柱が一瞬で崩れ落ちる。

 ゼウスが雷霆を地面に突き立て、光を迸らせて受け止める。

「フハハ……まさか、時間を操るとは!」


 創夜は笑い返す。

「悪いな。これでも少し遊んでるだけなんだ」

 両者の力が拮抗したまま、砂嵐が巻き上がる。

 雷鳴と魔力の嵐が、世界の中心でぶつかり合っていた。

 ゼウスが口元に笑みを浮かべる。

「――面白い。ここまで心が躍ったのは、久しい」


 創夜も同じように笑った。

「おいおい。こっちはまだ、ウォーミングアップだぜ?」

 雷霆が再び唸り、創夜の剣が七色に輝く。

 天が裂け、二つの光がぶつかる――

 神と人、雷と星。

 その瞬間、世界が再び光に包まれた。

 天が裂けた。

 雷鳴が音を越え、光が音を飲み込む。


 ゼウスの身体を、黄金の神気が包み込む。

 鎧は砕け、その下から『光そのもの』のような肉体が現れた。

 背には無限に分岐する雷の翼。

 右手には世界を支配する槍、左手には神々の加護そのもの――《盾アイギス》。


「見せよう、人の子よ。これが――我、全能神ゼウスの真なる姿!」

 その声だけで、空間が波打ち、大地が反転する。

 雷が縦横無尽に走り、空間そのものが神の威圧で震えた。

 創夜は剣を静かに鞘へと納めた。

「……いいね。こういうバトル、久しぶりだ」


 風が止まり、砂が宙で静止した。

 創夜の黒髪がゆっくりと舞い上がり、彼の瞳に『無』の輝きが宿る。

 雷鳴が天を裂き、大地が光で埋め尽くされる。

 ゼウスの全能形態――その力は、まさに『創世』そのもの。

 だが創夜の周囲だけは、静寂が支配していた。


 風が止まり、砂の一粒すら動かない。

 それは『無我』。

 彼の意識が個を離れ、自然と同化した瞬間だった。

 ゼウスの瞳が細められる。

「……動かぬ、だと?」

 次の瞬間、雷霆が閃いた。

 雷光が稲妻の竜となり、創夜を貫かんと唸りを上げる。


 轟音。

 光。

 そして――空振り。


 創夜はそこにいた。

 動かぬまま、風の流れと雷のリズムに完全に溶け込み、『避けていないのに当たらない』という矛盾の中に存在していた。


 ゼウスが驚愕に眉を寄せる。

「……貴様、時を止めたのか?」

 創夜は微笑むだけで答えた。

「止めちゃいない。俺が――ただ、『動かないだけ』だ」


 再び雷霆が振るわれる。

 天地を裂く光が十度、二十度と閃く。

 しかし、すべてが創夜を掠めることなく空を切る。

 リンが息を呑む。

「……まるで、雷が避けてるみたいアル」

 フィーリアが震える声で呟く。

「違う……創夜が『世界と同調』してる。雷も、空気も、時間すら敵じゃない……」

 ゼウスが一歩踏み出す。

 その圧力だけで神殿の柱が粉砕された。

「ならば、盾で潰すのみ!」


 アイギスが唸り、雷鳴を纏って創夜に迫る。

 創夜はわずかに身体を傾け、掌を添える。


 ――ドン。


 地響き。

 黄金の盾が一瞬だけ軋んだ。


「……ほう」

 ゼウスの目が見開かれる。『叩かれた』――神盾が人の拳で。


 創夜は静かに息を吐く。

「……重いな。けど、割れないとは言ってないだろ」


 次の瞬間、創夜が再び消える。

 砂の粒子が遅れて舞い上がる。

 風が鳴る。

 雷鳴が遅れて響く。


 そして――ガンッ!!

 二撃目。

 盾の表面に亀裂がひと筋走った。

 ゼウスの肩が僅かに沈む。

「人間の拳ごときが、我が盾に……!」

「神の盾も、叩けば音が鳴るんだな」

 三撃目。

 四撃目。

 五撃目――


 一撃ごとに光が散り、雷の膜が削られていく。

 ゼウスの表情に、初めて焦りが浮かんだ。

「馬鹿な……我が加護を、力ずくで穿つなど……!」


 創夜は微笑みながら言う。

「力じゃない。無だ。お前が世界の理なら――俺は無。全ての狭間に潜る存在さ」

 ゼウスの目が光る。

「ならば、無ごと破壊する!」


 神気が爆発。

 天から降る雷が一本に収束し、アイギスへと注がれる。黄金の盾が、太陽のごとき光を放った。

「神盾終焉形態・ディバイン・バースト!」


 全能の衝撃波が創夜を飲み込む。

 砂漠が消え、地が溶ける。

 神殿が吹き飛び、仲間たちはただ見守るしかなかった。

 ――だが。


 轟音が収まった後、

 光の中心で立っている影が一つ。

「……まだ終わってない」

 創夜の声が、静かに空を切った。


 衣は破れ、肩には焦げ跡。

 だがその瞳は澄み渡る蒼。


「三度目の衝撃……だいぶ硬いな、神様の盾」

 創夜が拳を握る。

 空気が震える。

 天地が押し潰されるほどの圧が拳に集う。


「じゃあ……これでどうだ」

 一歩。

 踏み込む。

 音が消える。

 掌が盾に触れた瞬間、

 全ての色が消えた。


 白。


 そして、破裂音。アイギスが粉々に砕け、ゼウスが後方へ吹き飛ぶ。胸甲が割れ、黄金の血が滲む。それでもゼウスは笑った。

「……フフ……やはり、貴様は人の子ではないな」

 創夜は息を吐き、拳を下ろす。

「いや、人間さ。ただ――少し、面倒なだけだ」


 ゼウスが笑う。

「龍族の娘も、そして貴様も……『神を楽しませる』術を知っている。実に――見事だ。お前の勝ちだ」

 創夜がニッと笑い、背を向ける。

「お褒めにあずかり光栄だ。でもな……これが人間の本気だ」


 ゼウスの瞳に、確かな敬意の光が宿った。


 フィーリアは戻ってきた創夜とハイタッチした。

「あなた、まだなにか隠してるでしょ」

「何のことかな」

「ほんと、面倒な性格してるわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。