ep6.バベルの塔の入り方(創夜達専用)
創夜達は、バベルの塔の門番であるゴムの一つ目の魔神二体を楽しそうに殴り終えたものの、門を開く手がかりは丸一日かけても見つかっていなかった。召喚した重騎士のガーディアンズは休む暇を与えずに魔神をボールのようにラリーし続けているが、創夜達はそんな状況をよそに、ひとまず手の空いたメンバーで腰を下ろし、賑やかに食事を楽しんでいた。
「ふう、美味しかったわね。エジスの作ってくれたキノコのスープ、最高よ!」セリアは満足げにセクシーなため息をついた。
エジスは皿を片付けながら苦笑いを浮かべる。「ありがとう。でも、こんなところで優雅に食事をしていていいのか?もう丸一日、門を開く方法を探せていないんだぜ」
創夜はエジスに塔の門番について教えてもらったが、門番の倒し方について、何も情報をもっていないようだ。
「よし、遊ぼう!このゴムの魔神、ただ殴るだけじゃ面白くないよな!」
創夜の提案に、最初に目を輝かせたのはリンだった。
「遊ぶネ!いいアル、創夜!ボコボコにするのはもう飽きたアル!」
「ゴムで、跳ね返って、ブヨブヨ……」ミーナは真剣にブツブツと呟きながら、ふと閃いたように顔を上げた。「ねえ、創夜お兄ちゃん!これって、ボールみたいじゃない?」
その一言が、創夜の思考を決定づけた。
「それだ、ミーナ!」創夜はにやりと笑い、皆に指示を出した。「皆!競技を変更するぞ!エジスとセリアは審判、ミリィは状況報告兼解説で頼む。――リン、ミーナ、俺たちでサッカーだ!ゴールはバベルの塔の壁!」
「ええーっ!私のセクシーな身体で審判なんて退屈だわ!」セリアが抗議するが、創夜は聞かない。
創夜は召喚していたガーディアンズを解除した。
「ボールは二つ!二体の魔神をそれぞれ蹴り合って、先に門に当てた方が勝ちだ!制限時間なし!レディ、ゴー!」
魔神たちは創夜に「ボール」として扱われるのを拒否するかのように、グラビティが解けた瞬間、再び突進してきた。
「さあ、キックオフだ!」
創夜は、迫りくる一体の魔神のブヨブヨとした胴体に、フルオーラを込めた豪快なミドルシュートを放った。
-----ゴムッ!!
打撃を吸収し、その衝撃を創夜に返そうとした魔神の力が、今回は逆手に取られる。魔神は、創夜が蹴り込んだ力と、跳ね返そうとした自身のカウンターの力によって、驚異的な速度でバベルの塔の門へと一直線に飛んでいった!
「すごいネ!創夜のキック、超絶カウンターネ!」リンが喝采を上げ、自身ももう一体の魔神を豪快に蹴り飛ばす。
「ふふん、この魔神、自分がボールになったら反射できなくて可哀そうネ!」
二体の魔神は、まるで巨大なピンボールのように、塔の壁や天井にブヨブヨと跳ね返りながら、門へ向かって乱舞する。創夜たちはそれを追いかけ、更に蹴り込み、塔の入り口はあっという間に熱狂的なサッカーグラウンドと化した。
その時、事件が起こった。
創夜が蹴り込んだ魔神の一体が、勢い余って地面に激突し、**「キックオフ」**の位置で静止した。
地面に丸まったまま動けなくなったその魔神は、ブヨブヨとした体をなんとか持ち上げ、土下座のような姿勢になった。たった一つの目から、まるで涙のような液体がこぼれ落ちているように見える。
そして、その魔神は、ブヨブヨの手を動かし、必死に創夜たちにジェスチャーで訴えかけてきた。
「おかしいわね」
セリアが異常に気づく。創夜が魔神のジェスチャーを読み取り推察する。
「何々、門を開けるからやめてほしい。いいぜ開けてくれるなら用はない。」
ミーナが分析する。
「アーク・スキャン完了!この魔神の最大の弱点は、極度の精神的プレッシャーと、自己破壊願望がないことだよ!殴られても、切られても、反射さえしていれば壊れないけど、**ボールとして扱われる(役割を強制される)**と、ストレスで自壊寸前になるみたい!」
創夜は、リンと顔を見合わせ、エジスが苦笑いを浮かべた。
「おいおい、お兄さん達、まさか門番をいじめて扉を開けさせるなんて……」
エジスが創夜に突っ込む。
「いや、魔神のゴムの反射で遊んでいたのは何処のどいつだよ。」
二体の魔神は震えながら、すぐに巨大な門へと駆け寄り、そのブヨブヨの体をぶつけた。
-----ゴゴゴゴゴ……!!
創夜たちの目の前で、山ほどの大きさのバベルの塔の門が、重厚な音を立ててゆっくりと開いていく。扉の向こうには、底知れぬ暗闇と、未知の気配が広がっていた。
「やれやれ、今回は力じゃなくて、いじめが勝因ね」
セリアが呆れたように笑い、ミリィが解説を締める。
「皆様!魔神をゴールに蹴り込むという、予想外の戦術が成功!バベルの塔の扉が開かれました!創夜パーティ、精神攻撃で塔の攻略続行です!」
創夜は、先に進もうとするリンの肩を叩いた。
「まさか、何も効かない強敵がまだのこっていたなんて、驚いたぜ。」
結局、創夜達はまともな方法で門を開ける方法がわからなかったが、創夜たちは、開いた門の奥へと足を踏み入れた。




