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転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: @SsRay
バベルの塔編

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ep10.バベルの塔編 五層 欲望の試練

 転移の石盤に乗り、創夜たちは次の層へと足を踏み入れた。転移陣の光が静まり、彼らは一瞬、まぶしさに目を細めた。

 そこは――金と光に満ちた宮殿だった。


 天井には果てのない鏡が連なり、床は黄金の水面のように輝いている。

 壁には女神の像が並び、その瞳には宝石がはめ込まれていた。

 ミーナが思わず声を漏らす。

「……すごい、こんなに綺麗な場所、見たことない……」

 セリアが軽く唇を歪めた。

「でも、綺麗すぎる場所ってのは、たいてい『罠』よ」

「こんな変な塔にこんな景色があるのね、メトロポリスの見てた国ってなんだったのかしら」

 エジスがうなずく。

「この層の名は『欲望の試練』。――つまり、心を映す場所です」


 ミリィの未来視の瞳が、鏡の奥を覗く。

 その視線の先で、金の海が波打ち、誰かの姿がぼんやりと映り込んでいた。

 それは――彼女たち『自身』の姿。

「鏡が……私たちを、見てる……」

 静寂を破るように、艶やかな声が響いた。

『――人の子よ。ようこそ、夢幻の宮殿へ』


 黄金の柱の間から現れたのは、

 上半身が美しい女で、下半身が巨大な蛇の姿をした存在だった。

 長い黒髪、琥珀の瞳、金の装飾で包まれた肢体。

 その微笑は、見る者の心をとろかすほどに妖しく、美しい。


『ここでは、欲がすべてを映す。

 望むものを見せよう。求めるものを与えよう。

 さあ――お前たちの『心の鏡』を覗くがいい』


 次の瞬間、空間が割れた。

 鏡が無数に砕け、光の欠片が舞い上がる。

 創夜たちは、それぞれ別々の『鏡の世界』へと引きずり込まれた。

 目を開けると、そこは教室だった。

 夕陽が差し込む窓際、机の上には見慣れたノート。

「……ここ、は……俺の世界?」

 机の前から、笑い声が聞こえる。

 勉強の話をして笑うクラスメイトたち。

 けれど、彼の席の周りだけが、ぽっかりと空いている。

「……また、一人か」


 背後から、ラミアの声がした。

『孤独を恐れている。

 けれど、群れに混じる勇気も持たない。

 欲しいのは理解ではなく、居場所』


 創夜は振り返らず、静かに呟いた。

「……もう、違う。

 今の俺には、仲間がいる」

 教室の景色が、波のように崩れた。


 ――リンの鏡

 リンは静かな山の中に立っていた。

 故郷――龍族の里。

 懐かしい修行の音、父の声。

「リン、強くなれ。誰にも頼るな。お前は龍の血を継ぐ者だ」


 リンはうつむき、拳を握る。

「でも……今は違うアル。

 頼れる仲間がいる。守りたい人もいるネ」

 その言葉に応じて、周囲の山々が崩れ、鏡のように砕け散った。


 ――セリアの鏡


 そこは豪華な舞踏会だった。

 拍手と喝采の中、ドレスを纏ったセリアが中央で微笑んでいる。

 彼女の周囲には、貴族たちの称賛と羨望。

『これがあなたの欲望――承認。

 他人より上であること、認められること』

 セリアはグラスを持ち上げ、苦笑した。

「ふふ、まあ……否定はしないわ。

 でもね――私はもっと面白いものを見つけたの。仲間と笑う自分よ」

 ワイングラスが割れ、赤い液体が光へと溶けた。


 ――ミリィの鏡

 暗い部屋。

 未来視の瞳に映るのは、終わり続ける未来。

 誰かが死ぬ。

 また誰かが消える。

 彼女は、何度もそれを見た。

『望むのは終わりのない平和。

 けれど、未来を知る者は、常に孤独だ』

 ミリィは首を振った。

「違うよ。孤独なんて怖くない。だって、今は――みんながいる」

 鏡が砕け、未来の光が溶けていった。


 ――ミーナの鏡

 炎と叫び。

 剣を構える兵士たち。

 その中心で、傷だらけの自分が震えている。

『悪魔だ! 殺せ!』

 その声を聞いて、ミーナは目を閉じた。

「私は……悪魔じゃない。でも、人間にもなれなかった。――けど、創夜たちは違った」

 涙が頬を伝う。

「助けてくれた。笑ってくれた。

 だから、私は……人間でいたいの!」

 炎が消え、世界が静かに光へと変わった。


 そして、全員の視界が再び重なる。

 五人が元の金の宮殿に戻ると、中央でラミアが微笑んでいた。

『欲を否定せず、受け入れる……それが、真の自由でもあるのね』


 彼女の金色の瞳が柔らかく輝き、

 その身体が静かに砂のように崩れた。

『欲とは、悪ではない。それを支配する心を持つ者だけが――次へ進む資格を得る』


 黄金の宮殿が光に包まれ、

 足元に新たな転移陣が現れる。


 エジスが前へ出て、皆を見回した。

「全員、無事……よかった」

「一層以外、全部が試練って……。

 なんで私だけ影響を受けないのかしら?

 何が起きてるのか、全然わからないわ。こんなの、まだ続くのかしら」


 創夜が小さく笑う。

「俺たちは、欲を力に変えたんだ」

 リンが拳を突き上げる。

「次の階層もいくアルよ!」


 光が彼らを包み、黄金の迷宮は消え去った。

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