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[完結]転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: 真柴 零
無職転生

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ep2.とりあえず魔王に会いに行く

 創夜は、最初にたどり着いた町――フロンティアの町外れで、小さく息を吐いた。

 ステータスボードに表示され続ける

【職業:  】の文字が、何よりも気分を悪くさせる。

「なんで空欄なんだよ、なんか後で現れるとかないよな。使えるスキルが明らかにチート過ぎる」


 転生直後、豪華な王の前で「そなたは無職である!」と宣告され、警備兵に追《お》い払われた。あの理不尽で恥ずかしい記憶が蘇《よみがえ》る。

 俺は思わず吐き捨てるように呟《つぶや》いた。

「あの冷たい視線。あの王は、本当にこの国を治める正義の王なのか……?魔物がどうとか言っていたが、魔王にでも会いに行こうか。魔王側につくのも悪くはない」

 創夜は、町で調達した装備を確認する。


 武器屋で一番安物の鉄の剣と、目立たないフード付きの黒いローブを選んだところで、店主に値段を言われてようやく気づいた。

「あ、金……」

 追放されたショックと怒りで頭が回っていなかったらしい。

 だが、すぐに思い出した。


「魔物の素材なら大量にある。これ、買い取ってくれ」

 カウンターが埋もれるほどの素材を置くと、店主は目を丸くしながらも査定を始めた。予想以上に高額な売却ができたが、この時、この国のお金の価値が全くわかっていなかった。


「あえてレベル1初期装備で魔王に会いに行くか。今ならなんでもできそうだ。このアイアンブレードでも怖くないな、早めに誰かと会って別な思い出を作らないと、あの王を忘れられなくなってしまう、一度会ってから魔王がどんなやつなのかを俺の目で判断させてもらうか」


 創夜は、情報収集のため酒場へ向かった。

 そして、適当に座っていた男に話しかけた。

「なあ、魔王ってどこにいるんだ?」

 男はすぐに北の方角を指さした。


「お前そんなことも知らないのか? ……あそこの山の奥、名前は暗黒山脈《ダークマウンテン》。この国の北の果て、巨大な山脈を越えた先に魔王城がある。冒険者はみんな、この町から魔王討伐に出て行ったが帰ってこねぇ……おまえもその装備じゃ夢のまた夢だな、ははははっ」

 とからかわれたのだが、魔王に会いに行くことしか頭になかった創夜は大して耳に入ってこなかった。

「よし、魔王をこの目で確かめにでも行くか。正直、会ったことないやつがどうだこうだ言うやつのことは信用できない。そいつがどうかは俺が決める」

 創夜は酒場を出て、広大な草原に立った。


 空は澄み渡り、風が心地よい。

「さてと……誰も見てないな」

 彼は静かに目を閉じ、全身に魔力を集中させた。

 魔法名は叫ばない。無詠唱が基本だ。

 体の周囲に、薄く光る魔力の膜が展開される。

 ――飛行術

 ふわりと体が浮き上がり、次の瞬間には空を切り裂くように加速。

 彼は北の空へと一直線に飛び立った。


 遠くに見える険しい山脈の影。

 その向こうにあるのが、魔王城――。

 フードを深くかぶり、全身をバリアで包む。

 時速数百キロを超えるスピードで、無職の転生者は天を翔《かけ》た。

 北の空を切《き》り裂くように飛び続け、

 創夜はやがて巨大な魔王城の敷地《しきち》に降り立った。

 城全体から立《た》ち込める禍々《まがまが》しいオーラ。

 だが、いかにも『闇の城』ですと言わんばかりのテンプレ感に、創夜は逆に冷める。


「……到着っと」

 中庭で出会った四天王バルバスは、話がまるで通じないタイプの会話拒否モブだった。

「魔王様に会いたいだと、人間風情が……」

 と言うセリフを聞いたときには既にそいつは目の前から消えていた。他の三人の四天王も無意識に瞬殺した。

 無心にするほど感情は高ぶっていた。ほとんどの敵を無視し、飛行術で最短距離を突き進む。

 そして――玉座の間。


 そこにいたのは、予想外に華奢《きゃしゃ》な人型の魔王だった。

「貴様が、我が四天王を破《やぶ》った異世界人か」

 魔王は立ち上がり、漆黒《しっこく》のマントを翻《ひるがえ》す。

 創夜は剣を鞘《さや》に納めたまま、一歩前へ。

「あんたが魔王か。単刀直入に聞く――あんた、本当に世界を滅ぼしたいのか?」

 創夜は真剣な眼差しを向ける。


 魔王は鼻で笑った。

「四天王を破るとは、この魔王が直々に八つ裂きにしてくれよう!」

 漆黒の魔力が収束し、創夜めがけて放たれる。

 爆音と共に衝撃波が走るが、創夜は眉《まゆ》一つ動かさない。

 冷めた苛立ちを覚えながら、創夜はバリアで攻撃を受け止めた。

「うわぁ……八つ裂きかよ。てか、人の話を聞けよ、もういい。おまえはロープレのラスボスかって」


 創夜は静かにスキルを発動する。

 ――瞬間移動。

 次の瞬間、彼の姿はかき消え、

 魔王の真後ろに現れた。

 魔王が驚愕《きょうがく》の表情を浮《う》かべた瞬間、

 その体は美しい軌跡《きせき》を描いて――真っ二つに裂《さ》けた。


 創夜の手に握られた鉄の剣は、

 七色の光を帯びて巨大な聖剣のように輝いている。

 ――七色の剣アルティメットブレード 。

 炎、水、風、土、光、闇、雷属性を剣に宿したもので、魔法剣である。

 相手の弱点属性などを無視した攻撃が可能であり、魔法剣なので物理的に破損することはない。

 すべての魔法攻撃に耐性があるものを除き、攻撃は必ず通る。感情が高ぶり、魔王であっても反応できない速度で攻撃した。

「ありえない……なんだこの力は……!」

 魔王は呻《うめ》き声と共に崩れ落ちた。


 ――一撃。

 創夜は静かに剣を抜き、血を払《はら》う。

 創夜は剣を鞘《さや》に戻し、ゆっくりと息を吐く。

「……どう考えても、速すぎたな。ゾーンってやつか」

 言葉にしながら、自分でも苦笑する。

 あの瞬間、自分の動きは完全に常識を超えていた。

 魔王が魔力を放つより早く、気づいたときには背後に回っていた。

 思考よりも先に体が動く。


 成績も一桁ではあったが、優等生たちにアニメ好きだからといないもの扱いされていた創夜はスポーツも個人プレイ中心で得意としていた。バスケットでボールを奪ったらそのままダンクを決めるほどスポーツには自信があるが、ここまでゾーンに入ったのは初めてだった、恐らくアニメの好きなスキルを自由に使えたからだろう。

剣の柄を軽く叩き、創夜は夜明けの空を見上げた。

風が頬をなでる。どこまでも冷たく澄んだ風だった。


「理性で戦ってたら、多分、負けてた。……怒りで突っ走っただけなのに、

なんか一瞬でスッキリしたな。結局、魔王は悪だった……みたいだけど」


言葉にしてみても、胸の奥に残るざらつきは消えない。

魔王は最後まで片言で、まるでRPGの敵キャラみたいにしか喋らなかった。

会話にならない相手を斬り伏せたはずなのに、どこか現実感が薄い。

怒りの反動か、妙に感情が浮いているような、不思議な感覚だけが残っていた。


ほんの少しの静寂ののち、彼は歩き出した。


「……まあいい。無職でも、生き残る本能くらいは一流ってことにしとくか」


その背中は、誰よりも冷静で、そして少しだけ誇らしげだった。


あとがき


無職それは、彼が、必要であれば魔法使いにも、戦士にも、超能力者にもなれるということです。しかし、それは一時的な**「能力の行使」であって、恒久的な「職業への転職」**ではありません。

創夜にとって「無職」は、**全能力を解き放つための「チートスキル」**なのです。



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