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第一話 取り敢えず魔王に会いに行く

「あーもう、マジでなんなんだよ」

創夜は、最初についた町フロンティアの町外れで、盛大にため息をついた。

ステータスボードに表示され続ける**【職業:無職】**の文字が腹立たしい。

「よりによって無職って! 俺のチートスキル設定と全く釣り合ってないだろ。これ、流行りの**『なろう系』でも許されないレベルの矛盾**だぞ、運営バグらせてんじゃねーよ!」

転生直後、王様の目の前で「そなたは無職である!」と大声で宣告され、警備兵に追い出された記憶が蘇る。

「あの王様、見た目だけは豪華なモブキャラにしか見えなかったし、顔がもう『腹黒い悪役』って書いてあったわ。

あんなクソ展開、誰が信じられるんだよ。魔王が悪だなんて、完全にプロパガンダだろ」

創夜は、王様への不信感を募らせるばかりだった。

こうなったら、自分の目で確かめるしかない。

王様が黒なら、魔王は白かもしれない。あるいは、両方グレーの最悪なストーリーかもしれないが。

創夜は、町で調達した装備を確認した。武器屋で買った一番安物の鉄の剣。皮鎧と目立たないフード付きのローブ。

「あえてレベル1初期装備で魔王に会いに行く。これこそが真のロマンっしょ」

装備を整えた後、創夜は情報収集のために酒場へ向かった。

「すいません、魔王ってどこにいるか知ってます?」

銀貨をチラつかせると、バーテンダーは目を剥いた後、すぐに北の方角を指した。

「あれは……暗黒山脈ダークマウンテン。この国の北の果て、巨大な山脈を越えた先に、魔王城がある。行く奴はみんな……」

「暗黒山脈、ね。名前ダサっ! 厨二設定の定番かよ。まるでRPGのパッケージ裏のあらすじだな」

創夜は、そのあまりにも想像通りの設定に、思わずニヤリとした。予想通り、この世界はテンプレ展開だ。

「よし。王様が信用できないので、取り敢えず魔王というやつをこの目で確めて来ます。もし本当にクズなボスキャラだったら、その時考えればいい」

創夜は酒場を出て、再び広大な草原に立った。空は青く澄み渡っている。

「さてと、誰にも見られてないな。行くか」

彼は目を閉じ、全身に魔力を集中させた。魔法名は叫ばない。無詠唱が基本だ。体の周りに魔力が薄い膜のように展開される。

「飛行術、発動」

彼の体がふわりと浮き上がり、そのまま一気に加速する。

創夜は風を切り裂きながら、北の空を見上げた。遠くに見える険しい山脈の影。

「瞬間移動で一瞬で着くけど、それだと尺が足りないからな。ここは派手に飛行シーンを演出してやるか」

創夜はフードを深くかぶり直し、自身の体をバリアで覆うイメージをした。時速数百キロに達するスピードで、無職の転生者は魔王城へと一直線に飛び去っていった。


北の空を凄まじい速度で切り裂き、創夜は巨大な魔王城の敷地内に降り立った。城全体から立ち込める禍々しいオーラが、まるで古臭いホラーゲームのグラフィックのようで、逆に萎える。

「あー、到着っと。飛行術で結構な距離を飛んできたぞ。瞬間移動は戦闘以外で使うとズルい気がしてな」

中庭で出会った四天王バルバスを、話が通じない**「会話拒否するモブキャラ」と断定し、一撃で瞬殺した創夜は、敵を無視して城の奥へと進んだ。道中は飛行術**で最短距離を進む。

そして、玉座の間。そこにいたのは、予想外に華奢な人型の魔王だった。

「貴様が、我が四天王を破った異世界人か」魔王は立ち上がり、黒いマントを翻した。

創夜は剣を鞘に収めたまま、一歩前に出た。

「あんたが魔王か。単刀直入に聞くけど、あんたは本当に世界を滅ぼしたいのか?」創夜は尋ねた。「王都の王様はあんたを悪の権化だと言ってた。だが、俺が知ってるゲームだと、王様の方がクソで、魔王が実はいい奴だったり、世界を守ろうとしてるパターンもあるんだよ」

創夜は真剣な眼差しを魔王に向けた。

「だから、俺は王様を信用できなくてな。わざわざこの目で、あんたが本当に悪いやつか確かめにきた。どうなんだ?」

魔王は創夜の言葉を聞き終える前に、鼻で笑った。

「くだらん。人間など、誰も彼もが我が魔王の敵。質問など無用。その生意気な態度、この魔王が直々に八つ裂きにしてくれよう!」

魔王は漆黒の魔力を収束させ、創夜めがけて放った。

「うわぁ、こっちまで八つ裂きかよ。セリフのバリエーションねーな、テンプレの塊か? それに、人の話を聞けよ、ボスキャラ!」創夜は心底キレた。

魔王の攻撃をバリアで受け止め、創夜は冷たい視線を向けた。

「確認終了。悪いけど、話が通じない奴は、俺のストーリーに要らないんだよ」

創夜はスキルを発動した。

「瞬間移動」

次の瞬間、彼は魔王の真後ろに移動していた。

魔王は驚愕に目を見開いたが、反応する暇はない。

次の瞬間魔王は綺麗に真っ二つに切り裂かれた。

創夜は手に持つ鉄の剣が七色の光を帯びて巨大な剣へと変化していた。

「お前にはがっかりした、もう、なにも話さなくていい。俺はもう、お前と話すことはなにもない消えな。お前はもう、悲鳴しかあげることはできない」

「え、あ……ぐっ……」

魔王は呻き声一つと共に、その場に崩れ落ちた。瞬殺。

創夜は剣を抜き、軽く血を払った。

「ふう。結局、王様も魔王も、つまらない展開しか提供できない、会話拒否のクズだったな。さてと、次にやることでも探すか」

無職の転生者は、静かに魔王城を後にした。


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