表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: @SsRay
バベルの塔編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/91

ep6.バベルの塔編 一層 大地の王

 門を抜けた瞬間、全員の感覚が一瞬で切り替わった。

 そこは、外界とはまるで違うもう一つの世界だった。

 どこまでも広がる草原。だがその草は、色が異様だった。緑ではなく、金属光沢を帯びた灰緑色。風が吹くたびに、草ではなく無数の細い刃が擦れ合うような音が響く。空は、永久に止まったような夕焼けの赤黒い空。太陽も月も見えず、天上には、まるで誰かが描いた『虚構の空』が張り付いている。


 創夜は、無言で一歩前に出た。

「……空気の密度が違うな。ここはもう外とは完全に別次元だ、塔の壁を切ったとき中は別次元になっていると思ったがやはりそうだ。中から壁を切らなくてもわかる」

 リンが大きく背伸びをして、目を細める。

「うわぁ……ここ、なんか変な感じアル。風が生きてるみたいアル!」

 ミリィは羽を広げ、軽く舞い上がりながら周囲を観察する。

「視界は広いけど、遠くにいくほど歪んでる。光がねじれてる……これは、空間屈折結界だよ。塔の中の世界が独自の法則で存在してるの」

 セリアは妖艶な笑みを浮かべて腕を組む。

「ふふ、退屈はしなさそうね。……魔力の流れも複雑だわ。まるで塔そのものが生きてるみたい」

 エジスは軽く手をかざし、地面の草を一枚摘む。

「金属質なのに、ちゃんと生きてる。不思議だね、お兄さん」


 創夜はうなずくと、全員を見渡した。

「バベルの塔は、俺の世界では宗教的な想像上の建造物だ。中はどうなっているという記述は俺の世界には存在しない。まずは探索だな、敵も見当たらないな」

 攻撃力増加、防御力増加、素早さ増加、その他脚力や反射速度なども強化されるフルオーラは既に無詠唱でパーティ全員にかけてある。万全の体制だ。


「了解アル!」

「はーい♪」

「任せて」

「わかった」

「フッ」

「了解、お兄さん!」


 そうして、一行は塔の『内なる世界』の第一歩を踏み出した。

 歩き始めて数分。草原の奥に、巨大な影が立っていた。

 遠くに見える『建物』のようなものは、どう見ても塔内部の構造物とは思えない。朽ちた神殿のような廃墟が点々とし、その間を黒い霧が這っている。


 フィーリアが反応を検知し皆に伝える。

「巨大な敵の反応があるわ、あそこに見える山の方角よ」

「山?今、あの山動かなかったか?」

 その時、地鳴りが鳴り響いた。

 ドォォォォォォン――ッ!

 足元の草原が波打ち、地表が爆発した。

 金属のような草が宙に舞い、地面の奥から何かが這い出てくる。


 ミリィが叫ぶ。

「地面の下から来ます」

 次の瞬間、草原が裂け、黒い巨体が姿を現した。


 ――ヘビモス。

 高さ十メートルを超える、黒鉄のような皮膚を持つ巨獣。

 四肢は岩を砕くような重厚さで、背中には塔の紋章が刻まれている。目は深紅に輝き、呼吸をするたびに熱気と灰の嵐が巻き起こる。


 セリアが驚愕の声を上げた。

「うそ……これ、魔物なの!? 普通、最下層に出ていい存在じゃないわ!」

 ミーナが慌ててデータを読み取る。

「防御値、解析不能! ……創夜、これは冗談抜きでやばい! こいつの外皮、物理も魔法も同時に無効化する構造になってる!」


 リンが笑う。

「こういう強いの大好きアル!」

 だが創夜は静かに手を上げ、リンを止めた。

「待て、リン。あれはまだ起きたばかりだ。――動きが……重い」


 創夜の視線の先で、ヘビモスはゆっくりと首を上げた。

 目が一行を捉える。次の瞬間、空気そのものが震えた。

 ゴォォォォォ――ッ!!

 咆哮。それは音ではなく、衝撃波そのものだった。

 地平線まで走る風圧が全員を襲う。ミリィの羽が大きく揺れ、エジスが咄嗟にバリアを展開したが、いきなりだったからか、一瞬で粉砕された。

 フィーリアのマギテック・ゴーレムの巨大な盾が展開され全員を守った。


「防御が……抜かれた!?ごめん油断した。いつもはこんくらいじゃ壊れないんだけどなぁ、結構やばそうだなぁ」

 ミリィは衝撃がすごく、空中へはいかないほうがいいことを悟った。

「振動だけで、この威力」

 次に背中のクリスタルが光り、口から青い光のビームが放たれる。

 エジスが前に出てバリアをはる。

「皆、僕後ろに。バリアを強化するから」


 重なり合う光の盾が次々に現れ、嵐を押し返す。

 その後ろで創夜が構える。

「エジス、持つか!?」

「まだいけるっ!けど、すぐ動かないと押し切られるよ!」

「よし。リン、隙をみて左から回り込め。俺は右から叩く、セリア、氷結で足を固めろ。ミーナ、弱点探知を続行。ミリィ隙を見て攻撃してくれ――!」


 創夜の指示と同時に、一行が一斉に動いた。

 リンが疾風のように左翼を駆け抜け、セリアが魔力を練り上げる。

「フリーズ!」

 氷の鎖が大地から立ち上がり、ヘビモスの4本の脚に絡みつく。

 その直後、フルオーラで強化された素早さで創夜とリンが両サイドから拳を叩き込み敵を挟み撃ちにするが、びくともしない。さらに、創夜やリンの拳でさえこいつは、上に上げられそうにない。重すぎる。

 しかし、巨獣は足の氷を気圧だけで砕いた。

 爆音が轟き、リンが跳び退る。創夜も下がる。


「ちょっと待つアル!?氷が風圧で吹き飛ぶとかおかしいアル!」

 創夜の目が光る。

「なるほどな……こいつはヘビモスだな重力タイプか。重いわけだ。――なら、同じ力でぶつけるしかないな」


 フィーリアの声が響く。

「創夜!解析完了!このヘビモス、魔力と重力を同時に制御してる! 自分の重さを任意に変えられる! だから氷でも縛れない!」


 創夜は静かに右手を上げた。

 黒い風が彼の周囲を巻き上げ、瞳が金色に光る。

 ――グラビティ・オーバードライブ

 地面が軋み、塔の空間全体が震えた。

 ヘビモスの動きがわずかに鈍る。

 しかしその巨体が、一瞬、笑ったように見えた。


 ――ゴォン!!

 重力を制御していたのはヘビモス自身だった。

 創夜の重圧を、逆方向の重力波で押し返してきたのだ。

「チッ、反応が早い……!」

 フィーリアが叫ぶ。

「創夜!あれ、重力魔法の逆位相で反発してる!つまり――!」

「――つまり、同調させれば中和できる!」

 創夜がその言葉を引き取ると同時に、リンが叫んだ。

「創夜、やるアルか!?なら、アタシも全力いくネ!」

 リンの周囲に竜のオーラが立ち上がり、創夜の魔力と混ざり合う。

 二人の力が重なり、重力場の中心に収束する。

 ――双重圧界・白虎竜陣!!


 圧縮された重力波が、まるで巨大な獣の咆哮のようにヘビモスを包み込む。

 空間が歪み、塔の内部が軋んだ。

 ヘビモスの体表がついに揺らぐ。

 だが、その瞬間、奴の背中から無数の黒い柱が突き上がった。


「なっ!? 防御形態か!?」

「違う――これ、エネルギー放出だ!!」

 ミーナが悲鳴を上げる。

「創夜! 魔力が飽和してる! あれ、空間崩壊攻撃くるよ!!」

 創夜は瞬時に全員に命令を出した。

「全員、退避!!最初のビーム以上のやつがくるぞ、最初のは挨拶代わりだったみたいだ」


 ヘビモスの全身が光を放つ。

 空間がねじれ、地平線が歪む。

 まるで世界そのものが押し潰されるような轟音。

 その光の中で、創夜は静かに呟いた。

「……やっぱり、バベルの塔は普通じゃないな、前の世界の魔王でさえ瞬殺できたのに、こいつは厄介だな」


 次の瞬間、世界が白く弾けた――。

 大地が割れた。

 轟音と共に、赤黒い巨体が火口から姿を現す。全身を覆う岩の装甲。燃えるような瞳。

 それが――ヘビモスだった。


 創夜は息をのんだ。

「見た目どおりのバケモノだね。紫雷、効くかな」

 ミーナは自信の得意技が効くのかを気にしている。

 ヘビモスが咆哮を上げると、空気が爆ぜた。重力の波が襲い、地面が沈む。

 リンが龍の血を滾らせ、拳を構えた。

「いくアル!」

 衝撃波を跳ね飛ばし、リンが一直線に突っ込む。拳に龍紋が浮かぶ。

「龍閃・崩撃!」

 大地を砕く一撃がヘビモスの脚に炸裂。だが、岩皮はびくともしない。

 ミリィがフルオーラで強化された素早さで咆哮の振動が落ち着いた一瞬の隙をみて羽を広げ空中から胴体に会心の一撃をいれる。ミリィが得意な会心の一撃だ。ヘビモスの皮膚に傷をつけるが浅い。

「硬すぎる……!」

 背後でセリアが詠唱もなく手を掲げる。

 空中から光、闇、氷、炎、雷、土、風魔法を連続で叩き込む

「これでどうだ!」

 どの属性魔法も効果があるのかさえわからないほどだ。

 創夜の大剣が七色に輝く。

「アルティメットブレード改――虹炎剣レインブレイズ!」

 放たれた斬撃が熱線となり、ヘビモスの肩を焼く。

「セリア、俺の魔法剣が効いてるってことは魔法のダメージは通ってそうだ」


 フィーリアの巨大な見たことないほどの大きさのマギテック・ゴーレムの剣が空中に浮きヘビモスの背中を切った。

「鈍感なのね」

「効いてる! でも浅いっ!」

 ミリィが羽ばたき、ヘビモスの背中を駆け抜けた。

「避けてっ!」

 その声の瞬間、創夜が横跳び。直後、地面が陥没し、重力球が爆ぜた。


「……ミリィありがとう」

「見えてたからね♪」ミリィが微笑み、着地の瞬間に閃光を放つ。

「光爪連斬!」

 拳から竜の爪が光の刃となり、ヘビモスの首筋を切り裂く。

 ヘビモスが怒りの咆哮を上げ、天へと飛び上がる。

「飛んだ!?」

 ミーナが目を見開く。

 空中でヘビモスが角を輝かせた。紫の稲妻――いや、重力を帯びた閃光が降る。


「紫電の契印しでんのけいいんッ!!」

 ミーナが指先から悪魔の紋章を放つ。

 悪魔の紫雷が空を裂き、ヘビモスの光を打ち消した。

 爆音とともに空間が歪む。


「ぐっ……!」リンが踏ん張り、拳を構える。

 創夜が叫ぶ。

「リン、いくぞ――白虎乱舞!!」

 同時に突撃。創夜の剣閃とリンの拳圧が交差し、白き嵐となってヘビモスを包む。

 巨体がよろめく。

 その隙に、セリアが両手を掲げた。

「魔力収束・極光の陣――!」

 魔力の奔流がミリィの剣を包む。


「これで終わり!」

 ミリィの剣が虹色に光る。

「アルティメット・スラッシュ――天光断!!!」

 創夜はそれに合わせて重力には重力の剣をぶつける。

「重力の大剣グラビティブレード!」

 光の刃が一直線に伸び、創夜の生成した黒い異様な重力のヘビモスの6倍はあるだろう巨大な魔法剣は空からヘビモス目掛け重力に惹かれるかの如くヘビモスの背中を貫いた。

「オマケよ!」

 フィーリアが重力の剣を上からマギテック・ゴーレムのハンマーで上から打ち込み、完全にヘビモスの核を貫いた。

 爆炎、そして轟音。

 巨獣が崩れ落ち、地面が揺れる。

 地響きが静まり、赤い煙が消えていく。

 巨獣ヘビモスの亡骸がゆっくりと崩れ、消えた

 熱気とともに、戦場に静寂が戻る。


 創夜が剣を肩に担ぎ、深く息を吐いた。

「……っはぁ。さすがに疲れたわ。魔法反射がなくてよかったぜ」

 リンが拳を開き、肩をぐるぐる回す。

「創夜の規格外な強さでもどうなるかと思ったアル、拳が効いてないと思ったけど、鈍感だったアル」


 セリアは額の汗をぬぐいながら、淡く微笑む。

「魔力もだいぶ使ったわ……創夜、よくあの巨体を止めたわね」

 創夜はヘビモスを前に急にあの剣が頭に浮かんだ過去に戦ったことがある強いイメージの力だ。


 ミリィは剣を収め、羽を軽く畳む。

「ふふ、見えてたもの。次の一撃もね」

「ミリィも絶好調だな……」

 創夜が苦笑し、ミーナが横で口を尖らせた。


「創夜、私のクッキー出して」

 創夜がアイテムボックスからクッキーを出すとミーナは一つずつ美味しそうに食べはじめた。

 そんなやり取りにエジスが静かに歩み寄り、

「皆の傷は……なし。防御結界は完璧に機能したようだな」

 創夜が軽く手を上げた。

「ほんと助かった。お前がいなきゃ、敵の威力で俺のフルオーラでも皆を守りきれるかわからないからな」

「エジス、私の盾焦げちゃったんだけど治せる?」 

 フィーリアのマギテック・ゴーレムの盾が生成されたが、黒こげになっていた。

「盾かぁ、強化してあげるよ!」

 エジスは無言でうなずき、フィーリアの盾を回復するだけでなく強化され、盾は緑の謎の光を放っていた。


 創夜が大きく背伸びをした。

「……というわけで、全員、撤収! さすがに今日は疲れたわ」

 リンが肩をすくめる。

「どこ行くネ?」

「決まってるだろ。ここで休憩だ」

 塔の内部は外界と異なり、穏やかな風と涼しい光に満ちていた。

 石造りの壁には、冒険者たちが残した古い痕跡が刻まれている。

 小さな焚き火が灯り、ミーナが鍋をかき回していた。


「ふふん、今日は特製“悪魔鍋”~!」

 創夜が眉をひそめる。

「それ、名前的に危ないやつじゃない?」

「見た目はアレだけど、味は保証するよ?」

「見た目がアレなんだな……」

 ミリィが隣で野菜を切りながら微笑む。

「私は天使風サラダを作るね。天と地の合作になるわ」


 創夜が皿をアイテムボックスから取り出し

 敵地の塔の中に明らかに存在しないはずの焚き火やテーブルが並んでいた。

「戦いの後の料理……悪くないわね。魔力の回復にもなるし」

 創夜は焚き火の前に座り、剣を傍らに置いた。

「こうしてると、戦ってたのが夢みたいだな」

 ミーナが鍋の蓋を開けた。

 芳ばしい香りが一気に広がる。

「できたよ! 悪魔鍋改め――地獄風スタミナシチュー!」

 創夜が笑う。

「名前の改良、ゼロ点!」


 一同の笑い声が、塔の静けさに響いた。

 湯気の中で、誰もがわずかに安堵していた。

 その平和なひとときの裏で――

 エジスだけが、遠い瞳で塔の天井を見つめていた。

 頂上には、まだ知らぬ真実がある

 そう呟くように、彼の唇がわずかに動いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ