ep12.リンの故郷 竜族の隠れ里
空知創夜は、修行の地として目星をつけた**「海の町」へ向かっていた。《グラビティ・ギア:鎧武者アーマード・ガーディアン》変形した車に乗っていた内装は広々としており、リン、セリア、ミリィ、ミーナの四人がゆったりと座れるようになっていた。
「創夜の車、相変わらず凄いネ!これ、何の魔石使ってるアルか?」
助手席に座るリンが、窓の外の景色を眺めながら興奮気味に尋ねた。
「魔石?いや、何も使ってないぞ。ジョブが『無職』だから、魔石とか世界に存在する物質に依存する必要がない。全部、俺の**『想像』**の力だ。」
創夜が淡々と答えると、後部座席のセリアがワイングラスを傾けながら微笑んだ。
「ふふ、無職の最強ジョークね。でも、この乗り心地は確かに魔法か魔石の域を超えているわ。まるで揺りかごだもの」
「私はこの装甲の形が好きです!すごく強そう!」ミリィが嬉しそうに後部座席で装甲の壁を叩いた。
ミーナはクッキーをかじりながら、ふと口を開いた。
リンはニコニコしながら答えた。
「私よりも強い人いるネ。昔子供の頃、敵100人に私が囲まれたときに助けてくれたアル!気がついたら敵が100人倒れてたネ!、弟子入りしたくて村中探したけどどこにもいなかったアル!」
「そんなつよいやつがいるのか!是非俺も、秘技でも伝授してもらいたいな。」
「私たちも聞きたい。」
皆の意見が一致した。
「私の村は竜族の隠れ里ネ!」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
皆が驚いた。たまたま立ち寄った村がまさか、竜族の隠れ里だったとは。
リンの過去
「あれは、私がまだ幼かった頃の話アル。里の外に出ちゃだめって言われてたけど、好奇心で里の結界の外に出てしまったネ。そこで、大きな町の近くにある、貧しい人間の村を見つけたアル」
「竜族の隠れ里の結界の外に、貧しい人間の村……」セリアが静かに呟いた。
「そうアル。その村の子どもたちが、とても楽しそうに遊んでいたネ。私も混ざりたかったけど、里の掟で人間とは関われないから、こっそり見ていたアル」
「だけど、ある日、黒い鎧を着た、顔の悪い人たちがたくさん来たアル。彼らは、村の子どもたちを捕まえて、面白半分で蹴ったり、ムチで叩いたりしていたネ。まるで魔物みたいに……」
リンの表情から、笑顔が消えた。その小さな拳が、きつく握られる。
「私は、体が動かなかったアル。恐ろしくて。里の掟も、私が手を出したら里が危なくなる、そう教えられていたから……」
「だが、リンは助けに入ったんだろ?」創夜が先を促した。
リンは大きく頷いた。
「ある子が、もう立ち上がれないほど蹴られて、血を流していたアル。その時、私の頭の中で、何かがプツンと切れたネ」
「里の掟も、怖さも、何もかも、どうでもよくなったアル。ただ、その子を助けたい。あの悪い奴らを、一人残らず消したい!それだけになったネ!」
「私は隠れていた場所から、叫びながら飛び出したアル。当時の私なんて、ただの小さな子ども。敵は、黒い鎧を着た、いかにも悪そうな傭兵団。数えてみたら、100人以上いたネ」
「無謀すぎるわ!」ミリィが思わず声を上げた。
「敵は、私を見て笑ったネ。『こんな可愛いガキが、正義の味方のつもりか』って。汚い手で、私に触ろうとしたネ」
幼いリンは、たった一人で百人の敵に挑んだ。
二、三人を倒したところで――彼女の中で、何かが変わった。
その瞬間、リンはもう“リン”ではなかった。
リンの全身から、見たこともない強い光と魔力が溢れ出した。心臓がドクドクと、爆発しそうなほど高鳴った
ボロボロの子供を敵は人質にし、
「こいつを助けたけりゃ動くな、動いたらこいつの命はないぞ。」
頭の中で、何かがプツンと切れた。
次の瞬間、感情は消えていた。
恐怖も、悲しみも、怒りすらも。まるで、宇宙の果てに一人ぼっちになったみたいに、**『無』**になった。(これは後にゲキリンというリンの最強モードの状態である。)
感情を捨て、ただ『敵を滅ぼす』という意志だけが残った、無我の境地。
速すぎて、敵は何をしているかわからなかった。
ただただ仲間が頭が理解できない攻撃でやられていく敵は理解できず体から赤いと闘気を放つ幼いリンに言った
「これは、お仕置きが必要だな。いたい目に遭わせてやる。」
まるで、時が止まったみたいだった。リンの拳が、風を切り裂き、リンの咆哮が、空間を震わせた
リンは、誰の顔も見ていなかった。ただ、目の前にいる『悪』を、無情なほどに、一匹残らず消し去る。その作業だけを、機械のように、完璧に実行した。
リンの小さな手から放たれた魔力の奔流が、敵の分厚い鎧を、あっという間に紙屑にした。敵の悲鳴が聞こえたはずだ。でも、リンの耳には何も聞こえなかった。ただ、**『無』**だった。
一撃一撃が、全て致命傷。無駄な動きは一つもなかった。
リンは、話し終えると、深く息を吐いた。再び、彼女の瞳にいつもの無邪気な光が戻る。
そして、リンは敵を殲滅したあと、その場に倒れた。気がついたら、周りにいた100人以上の敵が……皆、胴体に風穴を開けられたり、炭になって倒れてた。(これは、リンは自分がやったとは全く気がついていなかった。)
リンが話し終えると、車内には一瞬の静寂が落ちた。
風の音だけが、車体の外を流れていく。
ミリィが、ぎゅっと膝の上で拳を握りしめながらつぶやいた。
「……リン、それ、すごすぎるよ。子どもなのに……そんなこと、できるなんて……」
セリアは静かにワイングラスを揺らし、深い吐息を漏らした。
「竜族の血、恐るべしね。──でも、それだけじゃないわ」
リンが小首をかしげる。
「それだけじゃないアル?」
セリアは微笑みながら、リンの瞳をまっすぐに見つめた。
「あなたが“助けたい”って強く思ったから、力が呼び起こされたのよ。
竜族の力は、心の在り方で覚醒するものだと、文献にあったわ」
「心の、力……ネ?」リンが胸に手を当ててつぶやく。
ミーナがクッキーをかじる手を止め、ぽつりと口を開いた。
「それってつまり……リンが優しいから強くなれたってこと、だよね」
ミリィが頷きながら微笑んだ。
「うん。リンの力、すごいけど……一番すごいのは、リンの“気持ち”だと思う」
リンは照れくさそうに笑い、頭をかいた。
「みんな……なんか、くすぐったいアル……でも、ありがとネ!」
セリアが軽くグラスを掲げて言った。
「勇気に乾杯、ね」
創夜が小さく笑った。
「……いい仲間だな、ほんと」
創夜だけが、違和感を覚えた。
「うーん。それってつまり、リンは誰が助けてくれたか見てないってことだよな。」
「私よりも強い人が私が倒れている間に助けてくれたネ!いつか遭えたら弟子にしてもらうアル!」
「無我の境地か?リンならあり得そうだな、はははは。」
リンは首をかしげて、創夜を見上げた。
「創夜、なんか言ったアルか?」
(リンは意外と天然なのか、言った意味がわからなかったようだ。)
「何でもないよ。」
(その内わかるか。本当にそんなに強い人があるなら遭ってみたい気もするが俺の感はリンの力だと言っている)
「それにしても、竜族の女の子と、セクシーなセリアと、ビキニアーマーのミリィ、悪魔のミーナ本当にそろそろ、イケメンな男の仲間いれないとバランスが悪すぎるよなぁ。修行もしたいが、どこかにイケメン頼りがいのあるオッサンいないかなぁ。
それとも、生意気な微妙な子供を仲間にして旅するのもゲームによくある展開なんだけどなぁ。」
皆が創夜に突っ込みをいれる。
「私たちじゃ頼りない(アル)か?」
「はいはい。最高のいい仲間ですよ!だけどな、本来はバランスとして、子供チックなイケメンと、頼りがいのあるオッサンがいるものなんだぜ。」
創夜の車は海の見える丘を走っていた。
「海が見えてきた~そろそろ、つくぞ!海と行ったらやっぱりビーチで遊んだ後、海底神殿だよなぁ」
「なぁ、海底神殿ってやっぱりあるよな?」
セリアがワインを飲みながらセクシーなポーズをして答えた。
「海底神殿って昔沈んだといわれている海の中にある遺跡のことかしら。」
創夜が楽しそうにニコニコしながら答えた。
「あるのか!面白くなってきた~!」
頼りになるオッサンとイケメンは不在だが、彼らの賑やかな冒険の旅路は続く。
海の町での新たな修行、創夜は無我の境地にたどり着けるのか!?




