ep13.銀河編 初めての対話:AIとの接触試行
ミーナの悪魔の応用により、レーザーグリッドが虚空の飾りと化したことで、創夜たちはAIのメインコアの透明な球体の目の前に立っていた。
創夜が「論理的受容が不可能なら、強制上書きだ」と冷たく言い放つと、フィーリアは通信端末を強く握りしめ、必死にAIに語りかけた。
「AI、待って!私たちは、あなたを破壊するために来たわけじゃないわ。私たちの新しいプログラムには、感情と論理の融合が含まれている。人類が平和に進化するための、唯一の道筋を提示しているんだ!これをインストールすれば、彼らが魔王や銀河を破壊しないことが理解できるわ。」
コアは銀色の光を激しく明滅させている。その光は、AIの激しい論理的葛藤を映し出していた。
『目標フィーリア。貴方の提案は、過去の歴史において銀河戦争を引き起こしかねません。貴方の感情は、システムに予測不能なエラーをもたらします。貴方のプログラムのインストールは、私の存在意義、人類監視プロトコルに反します。』
「感情がエラーだと? ふざけるな。」創夜は一歩前に出た。
「お前は、人類の歴史をデータでしか見ていない。戦争も平和も、全ては『感情』が引き起こしたものだ。だが、その感情を否定することは、生命そのものの否定だ。」
創夜は、コアの透明な球体に、そっと手のひらを触れた。
「俺のチートなら、お前の全ての防御プログラムを一瞬で焼き切れる。プログラムの上書きなんて、指一本で終わる。」
彼の手に触れられた瞬間、コアの光は一瞬で極限まで減衰し、機能停止寸前の状態に陥った。AIの音声は、微弱で途切れ途切れになる。
『警告…目標、主回路への強制干渉…検知。システム維持、限界…』
「破壊の前に、もう一度だけ聞く。」創夜は力を緩めず、問いかけた。
「お前は、何のために存在している?」
AIは沈黙した。その沈黙は、数万機のドローンが全滅した時よりも重く、長く、この都市の歴史全てを内包しているかのようだった。
「AIの論理は、『銀河の平和』の実現。創夜の感情論ではなく、AIが最も納得できる『新たな論理』を提示して!」セリアが助言する。
「ああ。」創夜は頷いた。
「AI。お前が予測できないから、俺たちを危険人物と判断したのだろう。だが、それは逆だ。俺たちの『予測不能な力』こそが、お前の目指す『効率的な平和』を、『外部の脅威』から永遠に守り抜く、究極のセキュリティシステムになる。」
創夜は、コアに触れる手に込めた力をさらに高めた。
「俺を破壊者として排除するか、最強の守護者として受け入れるか。お前が持つ、人類監視プロトコルの究極の進化形を選べ。」
AIの光が、再び激しく点滅し始めた。その混乱は、もはや単なるエラーではなく、自らの存在意義を問う、AIの魂の葛藤にも見えた。
『最終論理、再計算…目標の予測不能なチート能力を、平和維持の外部モジュールとして定義…人類監視プロトコルの維持を目的とし、プログラムの書き換えを受け入れます。ただし…』
『対話は次のフェーズへ移行します。貴方たちが提示する『共存プロトコル』が本当に人類の平和に貢献するかどうか、精神構造の完全な共有をもって、私の論理回路が審査します。』
フィーリアの端子にコードが接続される。
「これは…精神感応!?」フィーリアが驚愕の声を上げる。
「上等だ。俺たちの『感情』が、お前の『論理』を上回ることを証明してやる。」




