ep11.王
飛空艇は、雲海を裂き、猛烈な速度で王都へと肉薄した。眼下に広がるのは、かつて創夜を『無職』として冷酷に追い出した、あの巨大な城だ。
「……見えた。あそこが、偽りの王の玉座だ」
創夜の瞳に怒りの火が灯る。
フィーリアが操縦桿を握り、鋭い声で告げた。
「城内には、創夜と同じ異世界から来た人たちの反応があるわ。彼らと戦う必要はないわね。……よし、最短ルートで、王のいる地下空間を目指すわよ!」
「任せろ。余計な邪魔は、させないさ」
創夜が甲板に立つと、艦首から凄まじい魔力の波動が放たれた。城を覆っていた防衛結界が、紙細工のように脆く弾け飛ぶ。
アストラル・ブレイカーは城の最上部、玉座の間を突き破る勢いで急降下し、創夜たちはそこから一気に地下へと続く巨大な螺旋階段を駆け降りた。
地下深くへ到達すると、そこはもはや城の内部とは思えない、不気味な光景が広がっていた。空間そのものが脈打ち、紫色の雷光が奔っている。
「な、何アルか……ここ……空気が重すぎるアル……!」
リンが拳を構え、警戒を強める。
フィーリアの解析が響いた。
「異常な魔力反応。空間が歪んでいるわ。この先に、世界の理を壊すほどの『亀裂』が存在している」
巨大な漆黒の扉を蹴破ると、そこには禍々しい儀式の最中である『王』がいた。
王は、創夜たちの姿を見るなり、醜悪な笑みを浮かべた。
「ククク……来たか、未来視の女、そして、無職のゴミめ、処分するために手を回していたが、まだ生きているとはな。だが、もう遅い。この世界の根源は、既に私の手の中にある」
「黙れ、化け物! 貴様の正体はすでに割れているんだよ!」
創夜が踏み込もうとした瞬間、王の背後の空間が大きく裂けた。それは、この世界とは異なる異次元へと繋がる、巨大な『虚無の亀裂』だった。
「この世界はもうすぐ崩壊し、我が主の食い物となる。わざわざ、ゴミ溜めのような場所で貴様らの相手をする必要はないわ……」
王の体が、闇の瘴気に覆われ、ドロドロとした影の化身へと変質していく。
「さらばだ。この城ごと、貴様らを異界の塵にしてやろう!」
王が叫ぶと、城全体が激しく揺れ始めた。
「『城から一時撤退だ!』 この空間そのものが異次元に飲み込まれるわ!」
「皆、先に飛空艇に行っててくれ、俺はバカどもを地上へ送ってから行く」
そういうと、創夜は瞬間移動でクラスメイト達の気を感知して40数名はいるクラスメイト達全員を次々と一瞬で城の城下町へと飛ばした。後ろに転移し、飛ばしたため、皆、気づくことはなかった。
しかし、王が残した亀裂の衝撃波によって阻まれた。王は城の重要区画を道連れにするように、亀裂の向こう側へと姿を消していく。その光景を創夜は城下町の見張り台の屋根の上から眺めていた。
「あいつ、城ごと逃げ出しやがった……!」
崩落する天井。足元が異次元の渦に呑まれ始める。
一行は崩れゆく地下空間を駆け抜け、待機していたアストラル・ブレイカーへと飛び乗った。
間一髪、アストラル・ブレイカーが城の崩壊現場から急上昇して脱出する。背後では、巨大だった王城の半分が、異次元の亀裂へと吸い込まれ、消滅していった。
屋根の上から一瞬で瞬間移動し甲板に立ち、虚空を見つめる創夜。
「……逃げられたか。だが、追い詰めてやる。あいつがどこへ行こうと、この世界の果てまでな」
セリアが創夜の肩にそっと手を置く。
「大丈夫よ、創夜。あの王は、自分の逃げ道として亀裂を残した。それこそが、私たちの追跡の道標になるわ」
「そうアル。アストラル・ブレイカーなら、次元の壁だって突き破れるはずアル!」
創夜は拳を強く握りしめた。
「ああ。次は逃がさない。俺たちの本当の戦いは、ここからだ!」
最強の飛空艇は、異界の残滓を追い、誰も見たことのない未知の領域へ全速力で加速する。




