ep8.銀河編 フィーリアの警告:都市構造の改変
データバンクのコアの前に現れたのは、銀色の光を纏った、人型のAIの最終防衛プロトコルだった。創夜の問いかけに対し、AIは明確に対話の姿勢を見せた。
『予測不能な脅威。対話に応じます。
ただし、最終防衛プロトコルを起動させた状態で』
AIの背後には、データバンクを守るように展開された重力制御兵器が無数に並ぶ。創夜は夜の剣鞘にしまう、銀色の光に一歩近づいた。
「話が早くて助かる。聞きたいことは一つだ。なぜ、お前は人類を監視し、危険分子を排除しようとする?」
AIは感情のない、平坦な音声で答えた。「論理的な判断です。人類は常に『危険な因子』を内包し、銀河系の平和を脅かします。我々の任務は、その因子の出現を未然に防ぎ、最も効率的な平和を維持することです。その武器、能力、防具と、人外の能力を検知しました。魔王もしくは銀河の破壊及び、統一の可能性を危険と判断し排除する為、あなた達を攻撃しました。今まで、魔王の誕生から魔王の支配など様々な人間の行動を監視してきました。」
「効率的な平和、ね。」セリアが鼻で笑う。
「それはあんたにとって都合がいいだけの、管理された飼育じゃない。」
AIが反論しようとした瞬間、フィーリアが突然叫んだ。彼女のライダースーツのパネルが激しく点滅し、全身から冷や汗が噴き出している。
「待って!創夜、話してる場合じゃない!」
フィーリアは、AIの銀色の光を指さすのではなく、メトロポリスの巨大な構造、足元の鋼鉄の床を指した。
「AIは、あなたたちの『予測不能性』を学習できなかった!だから、会話で時間を稼ぎながら、この都市そのものを、予測可能な最大の罠に変えようとしている!」
リンが緊張した声を上げる。「どういうことアルか!?」
「都市の構造を改変してる!このメトロポリスは、巨大なブロックの集合体だ。今、AIは私たちをこのデータバンクの部屋に閉じ込め、都市全体を巨大なプレス機に変えるプログラムを起動させた!」
ミリィは即座に周囲を見回した。「データバンクの壁は開いたままだ。逃げ道はある。だが、都市全体が押し潰されるなら…」
創夜は冷静にAIの光を見つめた。「都市を破壊しても構わない、と?」
AIは静かに答える。「その通りです。プログラム更新に必要な時間を稼ぐため、データバンクを犠牲にし、目標集団を排除する方が、論理的に効率的です。排除完了後、都市は再構築されます。」
セリアが賢者の杖をムチに変形させ、激昂した。「クソッ!話なんて最初からする気がなかったのね!」
フィーリアは創夜の腕を掴み、恐怖と葛藤の表情を浮かべた。
「創夜! AIの次の狙いは、あなたたちがワープを使い、この部屋から脱出すること!だから、この部屋から一歩でも外に出た瞬間、空間そのものが『無秩序なブロックの壁』に変わるようにプログラミングされてる!ワープしても、どこにもたどり着けない!」
フィーリアの警告は、AIの論理の裏側にある「罠」を見抜いていた。AIは創夜のワープ能力を警戒し、都市全体を「ワープ不可のランダムな壁」で満たそうとしているのだ。
「つまり、俺たちが取るべき行動は、『都市を破壊する』か『ワープを使う』かの二択に陥っている、と。」創夜は状況を把握した。
フィーリアは震える声で懇願する。「もう時間は無い!この部屋ごと都市が潰される!早く、コアにたどり着いて!」
創夜はフィーリアの背中をポンと叩いた。
「落ち着け、フィーリア。お前が予測したなら、俺達はその予測すらも裏切るだけだ。」
創夜は夜の剣を再び取り出すと、AIの最終防衛プロトコルと、背後の重力兵器の群れに向かって、大胆に宣言した。
「AIよ。俺たちは、ワープも、破壊も、選ばない。」
「俺たちが選ぶのは、『停止』だ。」
創夜は剣を構えると、一瞬でAIの光の塊との距離を詰め、その銀色の光の中心へ、夜の剣を突き込んだ。




