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3-20 急行

「・・・確かに、私達がここまで遭遇してきたのは蝙蝠型と猿型、報告にあった牛型は居ませんでした。」


「うん、ボク達も牛は見てないね。元々ここじゃない何処かから流れてきていただけの可能性もあるけど・・・アイボー、何かおかしいんだよね?」


 リンガの問いかけにエンドは頷く。


「うむ、この周辺の気配が騒がし過ぎて離れた場所の気配は少し読み難いのだが・・・この近辺に比べると小さな気配が疎らで大きな気配が集まっている場所がある。それだけならばまだ良いのだが、その大きな気配の方に動きがある。方角で言えばキャンプ地の方へ向かっている。どうやら何かを追っている様だ。」


 エンドの言葉に周囲の面々の表情が強張る。


「おい!それって探索者が追いかけられてるってことだよな!どっちの班の場所だよ!?」


 ラ族の一人が別の班として活動している仲間を案じて詰め寄る。


「第一班の方だな。カリラ嬢達の班は第二班だった筈だ。」


「そ、そうか。」


 エンドが穏やかに言うと、ホッとした様子で足を止めた。


「それでは早く戻るとしましょう、キャンプ地には他の軍属が居ます。そうそう遅れを取ることは無いでしょうが、牛型魔獣の群れであれば楽観視は出来ませんしね。」


 小型の魔獣の方が数が多く、あちこちに素早く移動する為に一般のヒトにとってはよく遭遇し、その分被害を受ける頻度も高い。一方で大型の魔獣は遭遇する頻度は低いものの、危険度はかなり高いものとなる。


「小さな村であれば一匹でも壊滅的な被害を受けることがあります。探索者の方々がホールを探す為に薄く、広く展開していたのであれば撃退は難しいでしょう。おそらくキャンプ地まで逃げようとしているのでしょう。」


 ランファは踵を返すと片道を引き返そうとする。


「ふむ、待ってくれ。小規模な群れと遭遇しても良いのであれば最短距離を案内できるが?」


「構いません、案内をお願いします。」


「承った。」


 行きとは異なり足早に一行は森を進んで行く。邪魔な藪を払い除け、障害となる魔獣を強襲して退けていく。

 それなりの強行軍となり、先陣を切る軍人にも疲れが見えて来る。それは戦闘以外にも、訓練し鍛えているとはいえ常にあちこちを仕事で移動する探索者に比べると森の中での動きやスタミナには翳りがある。軍人の戦力を温存する為に途中からは追い散らす程度の魔獣であれば探索者達が先陣を切ることとなった。


「む、これはいかんな。」


「どうしたのアイボー?」


「他の小規模な気配も追われるようにキャンプ地へ向かっている。」


「別の班のヒトかな?」


「そうかも知れないが、おそらくは他の小型の魔獣も勢いに呑まれているのだろう。」


「それらが一斉にキャンプまで来ると混乱して対処が難しくなります。良く無いですね。」


 ランファが息を整えながらも真剣な面持ちで呟く。


「しかし、リンガさんもエンドさんも体力が有りますね。息も切らしていない様ですし。」


「あー、ボクは故郷が森の中だったしね。アイボーは多分そういう種族の特性かな。」


「うむ、おそらくな。」


 エンドが振り向くと、探索者の中でも歩けないものは居なかったが疲労の色を濃くしている者が散見された。


「疲れているヒトもいるだろうが、この先邪魔をする魔獣の群れはいないようだ。このままの速度で帰れば何とか間に合わせることができるかも知れない・・・だが、追われている集団の動きが想定よりも早い。魔獣も命の危機であれば足も止まらないか。」


「そう、ですか。急ぎましょう。」


 一行が森を出てキャンプ地が目に映ると、既に小型の魔獣が到達し慌ただしい様子を呈していた。



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