3-19 軍刀
「あれが、ホールか。」
地面から少し高い場所に直径1m強の黒い穴が開いていた。そこからは黒い靄のようなものが流れ出て来てきた。
丁度そこから蝙蝠型の魔獣が飛び出して来るのが見えた。
その様子を確認した一行は頷き合い、静かに距離をとった。
「いやぁマジで簡単に見つけちまいましたね。」
「ああ、コイツを軍の奴らに報告すればおしまいだ!へへっエンドの旦那様々だなぁ」
ラ族の小鬼達が笑いながら囁き合う。戦闘は探索者の仕事では無い為、帰り道もまた極力戦闘は回避しつつ目印として赤い色の布を木の枝に縛り付けながらキャンプ地へと帰還した。
軍の天幕を尋ねると、丁度ランファが居り入ってきた面々に目線を向けた。
「おや、もう見つけられましたか。お早いですね。」
意気揚々と軍人を驚かせようとしていた面々はランファの言葉に鼻白む。
「うん。目印も付けてあるし案内できるよ。でも、あまり驚かないんだね?」
リンガが苦笑いをしながら話すが、ランファは静かに首を振る。
「いえ、想定よりも早いことには驚いていますよ。しかし、エンドさんの特性は知っていますので。」
どこかつまらなそうな顔になった探索者達であったが、まだ日も明るいために小休止後に軍人達を連れて行く事となった。
「では皆さん行きましょうか。」
軍人は指揮官として少尉のランファ、加えて二人の三つ目族の兵士が続く事となる。これはあくまでも確認作業である為、再び基本的には魔獣を避けて進む事になる。とはいえ遭遇した魔獣は主に軍人が対処する話となっている。
多少疲れを見せた探索者はキャンプに残す事になったが索敵能力のあるエンドは共に向かう事となった。
木の枝に縛られた布を目印に軍人達が先行して早いペースで進んで行く。しかしエンドがこのまま進むと中規模な猿型魔獣の群れと遭遇する恐れがあると伝える。
想定される規模を聞いたランファは頷きながらも「問題ありません」と言って直進する。また、特に支援なども不要との事であった。
三つ目族の特性は同族間でのテレパシーであり、連携した動きを得意とする。横一直線となって魔獣の群れに3人は軍刀を抜いて飛び込んで行った。
左右に展開したランファの部下の2人の軍刀はマナメタル製のようであったが、士官であるランファのソレは少し異なり、僅かに発光しブゥンという音を奏でていた。
そして群れの中央を突破しながら流れるように魔獣を斬りつけ、それは抵抗もないようにするりと切断していく。
その様子を探索者達が周囲を警戒しつつも眺めていた。
「アイボー、あれがオーラウェポンだよ。重さと頑丈さが増すだけのマナメタルとは違って本当の意味でのオーラを使った武器だよ。」
「うむ、安直だが凄まじい切れ味だな。」
「作るのは大変らしいけどね。民間には出回らないよ・・・怪しい裏製品は有るらしいけど。」
ランファは逃げようとした大きな猿型の魔獣を切り伏せ、周囲の魔獣も掃討していく。2人の軍人は魔獣たちが逃げるのを妨げてるように動き、程なく戦闘は終わった。
「いずれ駐屯する部隊が付近の掃討も行いますし、魔獣の死体の処理は簡易的で良いでしょう。」
ランファに労いと称賛の言葉をエンドとリンガはかけたが、ランファは大した事は無いと控えめな様子であった。
ハイペースで一行は進むと再びホールが見えて来る。軍人達もそれを目視で確認するとわずかな時間手元の地図や報告書に書き込みを行った。
「ホールは確認できました。ここもホールが閉じるまでの間は部隊が駐留する事にるでしょう。キャンプまで戻れば仕事は完了となります。ご苦労様でした。」
嬉しそうな小鬼達とは対照的に、エンドは難しい顔でじっと目を閉じていた。その様子を見たランファがエンドの傍にいるリンガと目があった。
「どうされたのですか?」
「えっとね、エンドが魔獣の分布がおかしいって言っているんだよ。」
エンドは目を開けるとランファに質問する。
「別の班のエリアになるが、魔獣の動きや感じる気配がこの辺りと違う。確認したいのだが、ホールは一つだけなのかな?」
その言葉にランファは虚を突かれたような顔であったが、すぐに険しい表情となるのであった。




