3-16 待機
リアエズの村に現れた集団を村人が遠巻きに警戒するが、軍の下請けの探索者である事を告げると完全に警戒は解かないものの、軍の天幕に案内される。
そこには外気にもいた数人の軍人がおり、荷解きや施設の設営を行っている。その中にはランファの姿もあった。
「おや?お早い到着ですね。あと2日程集合まで時間がありますが。」
「やあランファ、予定よりも早く到着しちゃってね。食べ物もテントも用意してあるから場所を教えてくれれば迷惑はかけないよ。」
改めてリアエズの村を眺めるが、木製の尖った杭でぐるりと覆われた古びた家の並ぶ小規模な集落であった。人口も50人居るかどうか、比較的マナの多い場所ではあるが交通の便も悪くどこと無く鬱屈とした雰囲気が感じられる。一箇所だけ商店兼酒場といった場所はあるが、多くの人数を賄える場所とは到底思えなかった。
「いえ、食糧につきましてはこちらも事前に多く運び込んでますからお気になさらず。早めに来た探索者にも支給する事になってますから。」
そうしないと集合時間ギリギリに来たり、遅れて来たりするヒトが増えるんですよ、と小さく続けた。
「ふむ、それでは好意に甘えるとしようか。」
「そうだね。料理は手伝った方がいいかな?」
「・・・そう、ですね。元々今日は探索者の方々がこんなに来る想定では無かったので私が作ろうかと思って居たのです。明日からは専門の調理担当者が他の物資と共に来る予定ですが。」
ランファの目線が小鬼達の集団に向く。カリラ達もバツの悪そうな顔で、料理を手伝う事となった。
「ねえアイボー、そういえば料理って出来るの?」
「うーむ、領都では店で買ってくる事が殆どだったな。皮剥き等や簡単な手伝いなら出来そうな気もするが。」
「ボクもそこまで凝ったものは作れないなぁ」
「大丈夫ですよ、指示は出しますので。難しそうな時には正直に言って下さいね?まずはあちらに天幕を広げて荷物を置いて来て下さい。その後手等をしっかり洗ってまた来て下さいね。」
ガヤガヤと俄かに活気立ちながら、集団は慣れた様子で排水の溝を掘ったり天幕を張ったりする。エンドも大分慣れて来ており、そう時間も掛けず設営は終わった。
村の寄り合い場の厨房を借りて、探索者達は他の軍人達とも力を合わせて具材の下処理や調理を行っていく。
ランファは巨大な中華鍋を軽々と振りながら的確な指示で様々な料理を次々と作り、バットのような容器に入れていった。
シートのようなマギアの上で保温されているそれらは冷めることなく芳しい匂いを振り撒いて居た。
エンドの脳裏に、中華料理のビュッフェという単語同士が組み合わさった言葉と映像が浮かんだ。
調理が終わると各々が気になる料理を皿に盛り、舌鼓を打つ。不恰好に切られた素材も有ったが、一つのイベントのようなそれは多くの者にとって満足できるものであった。
「皆さんお疲れ様でした。明明後日が集合日ですが、明日からは他の軍人や探索者が着々と来る事が想定されますので、このような手間をかけた食事は難しくなるでしょう。」
えー、という不満の声が上がる。しかし、その理由は納得できるものであったため本格的に文句を言う者は居なかった。
「ランファ、美味しい食事が出来たことに礼を言わせてくれ。早く着いて迷惑をかけた事は申し訳ないが、私達としてはとても良かった。」
「ふふ、喜んで頂けたなら何よりです。料理は私の趣味ですので、沢山作るのも嫌いじゃ無いのですよ。」
エンドが感謝の意を述べると同じような言葉が続く。ランファも満更では無い様子で小さく微笑んでいた。
片付けは主に探索者達が自発的に行い、夜も更けて各自の天幕に戻る。
シタラについては流石に同じ場所で食事はせずに、ラ族の天幕で食べていた。少し不満気な様子のシタラが、僕も女装しようかな、と言い、それを聞いたカリラが興奮しながら悶絶していた。
翌日になると探索者達は自発的に近隣の地形の確認や魔獣の駆除を行い身体を慣らしつつ時間を潰す。
そして新しい面々もどんどんと村に着き、食事も大きな寸胴で保存食を主な利用した塩味の強いスープと、硬めに焼かれたパン、魔獣の肉を焼いたもの程度の腹は膨れるが味はそれなりのものになっていた。調理担当者というのも所謂料理人というより、作業員に近いもののようであった。
そして日が経ち、集合の日、集合の時間を迎えたのであった。




