3-9 同行
「ワーオ、凄まじい早さの脱衣、ワタシじゃなきゃ見逃してるネ」
周囲の視線を釘付けにするエンドをシッコがのんびりと評する。一方で怒りの表情で駆け抜ける影があった。
「このバカー!」
「ヌッ!」
リンガは低い姿勢で踏み込みエンドの服を拾うとその後頭部を叩き、エンドが思わず声を上げる。
勢いで倒れそうになるエンドを掴むと頭を下にして上に放り投げ、パンツとシャツを空中で履かせた後に半回転させ、足から着地させたエンドの頭に外套をダンクのように被せた。
流れるようなその動きは無駄に精錬されており、このようなやり取りが初回でないことを示していた。
「だ・か・ら!脱ぐなー!」
「いや、私が男性である事の証明を手早く出来ると思ってな。」
何故か顔を赤くしているシタラもエンドにおずおずと話しかける。
「え、ええっと、それでも脱ぐのはやり過ぎだと思いますけど・・・」
「うむ、勿論それだけの理由で脱いだ訳ではないよ。」
「え!どんな理由があるんですか?」
驚きの表情のシタラにエンドは笑いながら言う。
「身体に当たる風が気持ちいいではないか。」
「え?えぇ・・・?」
「あー、ウチのアイボーは変なところあるから・・・」
口を開けたままのシタラにリンガが諦めたように声をかける。
周囲の小鬼達は尚も呆然としていたり、倒れている者も居たが、一つの影が奇声を上げて突っ込んでくる。
「ふ、ふおおおお!!えっろぉぉぉ!」
エンドを煽り、折檻されたツインテールの小鬼が目をぐるぐるさせて涎を垂らしながらエンドへと駆け寄る。
「ボクのアイボーに何するんだ!」
「ぐべっ!あ痛い痛い痛い!ギブ!ギブゥ!」
すかさずリンガが割り込みその顔を右手で掴むと力を込めてギリギリと締め付ける。その痛みで理性を取り戻した小鬼が叫びをあげ、周囲の小鬼達もその光景に我を取り戻した。
「リンガ、そろそろ離してやってくれ。」
「むー、分かったよ。それ!」
「あーー!?」
リンガは不満そうな顔でエンドの要請に応じ、小鬼を放り投げた。
小鬼のリーダーも慌てた顔でエンド達に声を掛ける。
「申し訳ない!同朋の度々の無礼、深く詫びさせて欲しい。ただ、その・・・我々が疑ったのが発端であり悪いのではあるが、まだアレは子供で未経験、少々貴方の体は刺激が強すぎたようで、な。」
「だからといって男に急に襲いかかるのはダメだろ!」
「重ねて申し訳ない。私も至玉が同じ目に遭えば同じ思いを持つだろう。」
「落ち着いてくれ、私は気にしていない。悪意があった訳でも無いのだろう。」
エンドが取りなすと、リーダーの小鬼はほっとした表情となる。
「貴方の寛容さに感謝しよう。申し遅れた、私はカリラ、このクランの長をしている。」
エンドとリンガ、そしてシッコも挨拶を交わす。
「ふむ、フラグマンとジェリー・・・初めて会う種族だ。特に男性の探索者とは珍しい。あまりに堂々としていて女性とばかり思っていた。ああそうだ、提案があるのだが、我々と共に集合地点まで行かないか?同じような境遇の仲間は中々居ないしな。」
それに、と呟き傍のシタラの髪を優しく撫でる。
「我らが至玉も同じ男性と会う機会が少ない。普段からなるべく心身に負担はかけないように気を付けているが・・・同性どうしだからこそ心安らげる事もあろう。」
「うむ、構わない。むしろ私も他の男性と関わる事が普段から無い。よい機会だ、こちらこそ宜しく頼む。」
「うーん、アイボーがいいなら」
「ご主人が良いならいーんじゃなイ?」
「・・・感謝する。」
エンド達はペースを落とし、ラ族の集団と暫し行動を共にする事となった。




