3-2 会議室
リンガが軽く手を上げて挨拶すると、ランファもまた気が付いて目礼で返す。エンドは他の軍人にも目をやるが、何人かは仕事で門を出入りする際に見たことがある顔であり同じように会釈する。
「あ、お疲れ様です。特に席に指定はありませんので前の方から詰めてお座りください。」
組合の受付の一人が会場役として差配しており、エンド達に気が付くと声をかけた。指定された時間はあと10分といった所であったが、まだ空席があった。そして、時間もギリギリになった時、音を立ててドアが開いて騒々しく何人かの小鬼が駆け込んできた。
「セーフ!間に合った!」
「だからもっと早く出ようって言ったじゃん!」
「ぜーはー・・・」
息を荒げる小鬼達の集団には既に会場にいるヒトからの注目の視線が注がれ、とりわけ階級が高そうな軍人は額にしわを寄せていた。
「うるせえ!さっさと座れ!」
「ぎゃんっ!」「あだっ」
タツキがその集団の後ろから現れるとまだ入り口にいた小鬼達の尻を軽く蹴飛ばし、そのままのしのしと歩いて自身の席にイースを伴って座った。小鬼達も恨めし気にそれを見ると、そそくさと席に座る。
丁度そのタイミングで定刻となり、一人の軍人が壇上に上がった。吊り目で背の高い美丈夫といった容貌の三つ目族の女性であった。
「諸君、集まって貰い感謝する。私はリンレイ、階級は少佐だ。些か慌しい様子であったが・・・任務の確実な遂行において時間は厳守してもらいたい。今回は遅刻では無いが、以後注意してほしい。」
ギロリと騒いでいた小鬼達を睥睨すると、壁に貼られた地図を棒で指しながら次のような説明を行った。
領都の北、距離でいえば3日から5日の領域近辺で魔獣の増加が見られている。しかも、リゾトニアでは比較的珍しい蝙蝠型が多く、さらに珍しい猿型の魔獣の目撃例もある。
マナが薄い場所が多くて主要な町が無く、そのおかげで被害もあまり出ていないが、故に探索者達からの情報も集まりにくく、精査に時間がかかってしまった。
比較的領都にも近い場所にホールが発生している可能性が高いと判断されたため、今後は場所の特定を行い消滅するまで継続的な監視体制をとる予定となった。
探索者にはそれぞれ区域を分けて調査を行ってもらうが、区域毎に軍から担当者を出すため指示に従って貰いたいとのことであった。
説明が終わり少しざわつく室内をタツキが手を叩いて大きな音を出して止め、注目を集める。
「テメェら落ち着け!まぁ懸念は分かる、マナが薄い場所も結構あるし、それなりに距離もあるから準備が必要だ。それに、軍人と違ってオレ達は基本的に強制される事はない・・・だからそれぞれのグループで話し合いたい事も有るだろうよ。だからこれから2時間時間をやるからまたここに集まれ、一回帰って話をつけたり用事を確認したい奴もいるだろう。それで良いよな少佐?」
リンレイが鷹揚に頷く。驚く様子も無いため、予定調和の流れであったのだろうとエンドは思う。
「諸君、これは直ちに緊急性かまある訳では無いが、急いだ方が良い仕事である事は間違い無い。出発は明後日の朝を予定している、ここにいる諸君はタツキ殿が予定を確認の上能力を見込んだ者と聞いている。多くの参加者を我々も期待している。それでは2時間後に会おう。」
壇上から降りたリンレイは軍人達の集まっている一角は向かうと話し合いを始めていた。
エンドもリンガと話すが、少ない所帯であり当初から参加する予定であったため、早々に話がまとまり暇な時間を持て余すのであった。




