2-39 報告
翌朝、エンドは復調したリンガと共にガラリアの町の組合を訪れ、先ずはもてなしの礼を言う。受付には丁度案内してくれたマギアンがおり、一礼を持って返すとその後は領都に持って行く荷物を用意してある部屋に案内された。
なんだかんだでこの豊かな町は領都に近く、そちらにも知り合いが多くいたり、仕事上での付き合いもあって結構な量の荷物が並ぶ。
嵩張るが軽い荷物をエンドが、重そうな荷物はリンガが担ぐと組合の建屋を出ようとした。
「お待ち下さい、昼食をご用意しましたのでお持ち下さい•••またいらっしゃる日を楽しみにしております。」
マギアンの見送りを受けると門番から感謝の言葉を受けつつガラリアの町を出る。荷物のやり取りをする探索者を歓迎しているのは間違い無いが、それでも余所者が消えることへの安堵が町を包んでいるような錯覚をどこかエンドは感じた。
「この時間なら夕方には領都まで着くね。」
「うむ、今のところ道を塞ぐ魔獣も感じられない。手早く進むとしよう。」
マナの少ない地点の道程ではエンドからのマナの補充を受けつつもリンガは多少の不快感を示す。しかし、それを言葉にする事は無かった。
道中に特に問題は生じず日が少し暗くなる頃には領都の門を潜る。探索者のバッジとガラリアからの仕事の依頼書は一行をスムーズに通すこととなった。
営業時間に間に合うように足早に都内を進み、組合の門を潜る。
受付にはマギアンのイースが居て、混雑する時間を過ぎて手隙になっていたカウンターへと案内される。
「お帰りなさいませ、大変なお仕事お疲れ様でした。•••結構な量のお荷物ですね。どうぞこちらに。」
案内された部屋に荷物を下ろすと組合の職員がおり、受け取った背嚢を開けて早速仕分けを始めていた。今日中にそれを終わらせ、明日午前中には個人向けの荷物を配送する予定との事であった。
「ガラリアはいかがでしたでしょうか?」
イースの問いに上機嫌でエンドが答える。
「うむ、実に楽しめた。組合長にも感謝の意を伝えたい所だ。」
「それは良かったです。今は組合長も急ぎの仕事も無かったと思いますのでご案内します。」
そのままイースの先導で組合長の部屋まで行き、軽くノックをすると入ってくれと声が掛かる。
「よう!ガラリアまでの定期便お疲れさん。助かったぜ。」
行儀悪く机の上で足を組むタツキが不適な笑みを浮かべて迎え入れる。
「ああ、此方こそ組合長の配慮に感謝する。中々楽しめる事が出来た。」
「うん、あのマナが少ない道はちょっとキツイけど、それ以外はとても良かったよ。」
「あそこは保養地としても昔有名だったらしいしな、今は少し余所者には厳しいが、客としていくなら悪くない。」
「うむ、美味な料理に湖の風景、相棒と共に釣りと風呂も楽しめた。」
「ちょっ!アイボー!」
「ほぉ、風呂も一緒に入ったのか!リンガ、テメェはまどろっこしいからな!漸くヤッたか!」
下世話に笑いながら愉快そうにタツキはリンガを指さすが、リンガは顔を赤くして慌てて否定した。
「は?ウッソだろテメェ!?お膳立てしてやったのによぉ、オイコラ!テメェ角付いてんのか?」
「付いてるよ!」
一瞬呆けた表情を浮かべたタツキはリンガにくってかかるが、エンドがそれをとりなした。
「相棒は露天風呂で酒を痛飲してしまったようでな、湯当たりしてしまったのだ。」
「ハァ?オイオイ、ガキじゃねえんだからよぉ•••」
「ヘタレだからネー、ウチのボス」
「うおっ!心臓に悪いなオマエ」
エンドの袖からぬるりと顔を出したシッコにタツキが驚く。リンガはますます顔を赤くして無言で部屋を出て行ってしまった。
「組合長すまないね、私の相棒は純真なんだ。そこが可愛い所でもあるがね、行こうかシッコ」
「アイサー」
「ま、お前らがいいなら別にいいけどよ。時間は有限だぜ」
ヒラヒラと手を振るタツキと面白そうに笑っているイースにエンドは背を向け、シッコを身体にくっつけるとリンガの後を追った。
無言のリンガと共に帰宅すると、目の下に隈を作ったコニイと動きが若干スムーズになったアイリスが迎える。
見知らぬマナポットがまた増えており、興奮するコニイはこれが実験の結果三割程の容量を増加させることに成功したらしい。
ガラリアの町の話をすると、コニイはスッと真顔になってリンガに言う。
「リンガ、キミ角付いているのかね?•••なんだその小説のような状況、私は血涙物なんだが。いやホント角付いてる?」
「2回も言うなバカ!」
騒がしい様子を眺めながら、エンドは帰ってきた事を実感するのであった。




