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2-37 休暇

 説明を終えたマギアンがコテージから離れたことを確認し、シッコがエンドから剥がれてヒトの形を取った。


「うーン、それでどういうコトかナ?」


「ま、簡単に言うとメシも風呂も暇つぶしも用意するからあまり出歩かないで欲しいって感じだね。」


 シッコの問いにリンガがベッドに寝ころびながら答える。


「ふむ、別に私たちが事を荒げる必要も無いし、向こうから全く歓迎されていない訳でも無い。ただ、此処は今のままで完結しており、乱されたくないのだろう。」


 ふーん、とシッコは気のない返事をして頭以外の形を崩して床に伸びる。エンドもソファーに腰掛けると一息つく。マナの消耗や体力的な疲れは無くてもそれなりの距離を歩いており、暫し各自で休息をとることとなった。


「そういえば釣りが出来ると言っていたな。」


 窓から湖を眺めていたエンドが思い出したように言うと、リンガも身を起こした。


「そーだね、ボクも暫くやってないなぁ。行ってみようか?」


「うむ、やってみようじゃないか。」


 エンドは周囲のヒトの気配を読むが、湖の中の小さく多い反応以外は感じ取れなかった。リンガが先行して念のために肉眼でもヒトのいない事を確認する。

 桟橋は裏口を出て目の前にあり、用具入れを開けると簡素な竹竿と針が幾つか、タモ、桶、そして粉のようなものが入った缶と深めの皿が置いてある。


「この粉は、練り餌って書いてあるね。水を加えてこねるみたいだ。」


 リンガはタモを濡らして絞った水を皿に入れて粉を加えて捏ねる。粘土状になったそれは少し生臭い匂いがするが、釣り針にくっ付けて手を離すと振り子のように前へと伸び、竿の先を下げて着水させる。エンドとシッコもそれを真似て竿を垂らす。気候は快適で、日を反射しゆらめく湖面は美しかった。


 中々に釣れないまま時間が経つが、時に雑談し、時にぼうっとしながら時間は穏やかに過ぎる。


「お!当たった!」


 突如リンガの竿がしなり、それをゆっくりと竿を上げて寄せるとエンドがタモで掬う。

 30センチ程の魚が暴れるが、リンガは手早く抑えると針を取って桶に入れた。シッコは魚が珍しいのか桶を覗き込んでその様子を観察する。


「ありがとうアイボー、釣れると中々楽しいね!」


 笑顔のリンガにエンドも小さく笑みを返して再び竿を垂らす。日が陰るまで暫し釣りを続けたが、その後も結果は芳しくなくシッコがもう一匹釣れただけであった。


「ドンマイ、アイボー。初めてだし仕方ないよ。」


「いや、残念ではあるが楽しめた。悪く無い経験だ。」


「ンー?でもご主人なら、魚の場所とかわかったんじゃないノ?」


 シッコは自身が釣った魚をつつきながらエンドがその特性を使用しなかったことについて疑問を呈する。


「はっはっは、私は釣りをしに来たのだ。ズルは風情が無かろう。」


「そーいうもんかナ?」


「ああ、そういうものだ。」


 シッコは笑うエンドを不思議そうに見ていたが、納得はしていないものの別に問題は無いと考え飲み込む。


 その時エンドは遠くからコテージに寄ってくる気配を感じて二人に伝える。


「ふむ、丁度案内してくれたマギアンも来るし、釣れた魚について聞いてみよう。」


「そうだね、食べれる魚か分からないし」


 道具を片付け、シッコを纏わせてから外套を被るとコテージの外から近付く人影に声を掛ける。


「ああ、釣りをお楽しみでしたか。釣果は如何でしたか?」


 コテージを回り込んで桟橋まで来たマギアンは湯気をたてる箱の様なものを抱えていた。


「2匹釣れたけど、コレどうしたら良いのかな?」


「ちょっと失礼、ああ、この魚は美味しく食べられますよ。丁度貴方がたの食事をお待ちした所ですし、此処で湖を見ながら食べられるのも良いかと思います。魚はその間にコテージのキッチンをお借りして私が調理しておきましょう。」


「なんと!それは有難い、いたせり尽せりだな。」

「うん、それじゃお言葉に甘えて!」


 桟橋近くのベンチとテーブルにマギアンが持ってきた料理を広げる。湯気を立てているそれは、ガラリアの町で生産された肉と野菜をふんだんに使った贅沢なものであった。

 舌鼓を打ちながら、ゆっくりと食事をしていると、シンプルに塩焼きにされた魚が追加で届けられる。それもまた非常に美味であった。


「温泉も入れておきますので冷めないうちにご利用下さい。」


 一礼し帰ろうとするマギアンにエンドとリンガは再度礼を告げる。


「ふふ、私もマギアンの中ではかなり長く稼働しています。昔は貴方がたの様に、多くのお客様が此処を笑顔で訪れて楽しんでいらっしゃいました。静かな今が悪いとは言いません。しかし、少し寂しいものですね。」


 懐かしそうに笑うマギアンを見送ると、空はもう宵の口となっていた。コテージの中に戻るとエンドは呟く。


「いやしかし、仕事でここまで寛げるのは良いのだろうか?」


「ははっ、これは組合長からの新人へのご褒美だよ。普通ならあまり良い仕事じゃないけど、ボク達には大した事無いしね。」


「ほう、流石は組合の長。戻ったら礼を言わねばな。」


 エンドは自らが所属する事になった組合の長であるタツキの心遣いに感じ入るのであった。

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