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2-36 行楽地

 ガラリアの町の組合はそこまで人気がなく、喧騒のない穏やかな空気が流れていた。ドアの開いた音に受付のマギアンが気が付き軽く会釈をする。エンド達は他の探索者の物珍しそうな視線を浴びつつも臆する事なく窓口に立った。


「こんにちは、御用件をお伺いします。」


「ああ、領都からの手紙とか荷物だよ。」


 探索者バッジと背嚢をリンガが見せるとマギアンは小さく頷く。


「それは、お疲れ様です。そこまで領都とこの町は離れては居ないのですが、中々配送が遅れていて困っていた所です。道中マナの少ない場所があって大変だったでしょう?」


 労いの言葉を受けるリンガだが、少し口元が引き攣る。本来はある程度のマナを消耗し疲れ果てて到着するのが通常である。しかしエンドからマナを提供されていた事もあり多少の不快感はあったものの、問題とは言えないレベルであり、そしてそれは決して言えない事でもあった。


「う、うん。まぁまぁかな?でも、仕事だからね。こっちのアイボーも大丈夫だし心配は要らないよ。」


 感じ入った様子のマギアンにリンガは若干の罪悪感を覚え表情の引きつりが止まらなかった。


「しかし、大型種の方だとさらにお辛いでしょう。食事と宿を用意してありますのでご静養なさって下さい•••帰り道も同じ場所を通らないと行けませんし。食事でも足りなければマナの提供もさせていただきますがいかがでしょうか?」


「大丈夫さ!急いで通ってきたからそこまでじゃあない!あ~でも、今日はお言葉に甘えてゆっくり休ませて貰って明日には戻るよ。」


「おや?それならば良いのですが。では宿に案内しますね。」


 受付のマギアンは離席中と書かれた札を立てると席を立ちエンド達を先導する。宿は少し歩いた湖沿いにあるという。


「そういえばここの組合はあまり人数が多く無いのかな?」


 歩きながらエンドが問いかける。建屋の中にいた人数も少なく、受付も一人だけで代わりの者がいないようであった。それなのに自ら案内までしてくれている様子に疑問を持つ。


「ええ、昔は観光客相手にそれなりに送迎などで需要があったようですが、今はこの町の中と周辺の雑務と半年に一回の領都行きの輸送便の手伝いくらいですね。組合員も皆この町の者で外部から人が来る事も余りありません・・・本当に、のどかなものですよ。」


「ふむ?そういうものか。」


 案内された宿は湖に少し迫り出して作られたコテージのようなもので、古びてはいたものの整備はされており、小洒落た綺麗な建屋であった。


「定期的に掃除はしておりますので問題無く使用できると思います。食事の方もこちらにお持ちしますので、ゆっくりして頂ければ幸いです。目の前の桟橋で釣りをなさるのも良いと思います、その際は外の物置に釣具は入っていますのでご自由にお使いください。また、指定の時間であれば温泉も使えるようにしておきますのでお寛ぎ下さい。」


 あまりの好待遇にエンドは驚き、礼を告げる。


「ほう、いたせり尽せりだな!感謝する・・・しかしここまで良い場所であれば住みたがる者も多く居そうだ。」


「そうだね、こんなにマナが濃くて豊かなら来るのは大変でもそういうヒトも来そうだね!」


 リンガも機嫌よくエンドの言葉に同意するが、マギアンは少し困ったような、苦々しい表情で話す。


「•••この町では住んでいる者の縁者以外は如何なる移住者を断っています。リソースは有限ですし、際限なくヒトを受け入れるとこの町の穏やかな暮らしが損なわれる恐れがあるのです。勿論、貴方方のように荷物を運んでくださったり、稀に来る観光客のような一時的な滞在であれば歓迎するのですが•••我々は領都に半年に一度様々なものを格安で運んでいますが、これは難民や移民を受け入れている領都と軍に対して現状を維持し続けるための交換条件としての側面もあるのです。」


 エンドは門番の態度が最初は険しかったことを思い出す。そして、自分達のような者は歓迎するといった言葉も。


「すまないな。言いにくいことを説明させてしまった。それぞれの場所でそれぞれの考えがあるだろう、どこも世知辛い所はあるものだ。」


「そうだね、湖に囲まれているこの町だと大きくする事も難しそうだしね。ま、ボクのいた村でもよそ者はあまり歓迎されなかったしね。」


 理解を示す言葉にマギアンは安心したように笑みをこぼすと、リンガは空気をかえるように提供される料理や町の名産品、釣りの仕方などについて明るい口調でマギアンに聞く。

 マギアンも朗らかに宿の施設の紹介や質問について朗らかに返答するのであった。


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