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2-35 農畜

 ファングやハウンドの額の感覚器でもある魔石を採ると、残りは街道から離れた木立の奥にリンガが全力で投げ飛ばす。

 勿体ないが、解体をするには時間が掛かるし荷物の配送もある。他の場所であれば兎も角、今から向かうマナが豊富な地域では肉なども畜産品の方が遥かに美味しく需要が無いらしい。魔石についてはマギアの材料としてコニイが幾らでも欲しがっているため持って帰る事となった。

 人気のない街道とはいえ、死体を放置すると飢えた魔獣がその肉に残るマナを求めて寄ってきてしまう可能性がある為、少しでも遠くに投げたとリンガが語る。エンドが広く気配を探ると遠くの方に複数の反応がある。遠からずハウンドたちの死体は同じく不遇な地に追い込まれた魔獣達の束の間の食事に供されることとなるだろう。


 道を進むと植生は大分乏しくなり、背の低い痩せた草が生え、その隙間から幽霊草が姿を見せるようになるが、街道はその平原をなお真っ直ぐ伸びていた。


「相棒、大丈夫かな?」


 エンドが浮かない顔のリンガに声をかける。


「うん、マナは十分にあるから問題は無いけど、身体から抜けてく量が多いのはちょっと不快かな。」


「はっはっは、いつでも補充するさ。む?それとも私がマナを放出させながら歩けばいいのか」


「いやいや!こんなとこでマナを撒き散らすのは凄く目立つからダメ!小まめにマナをくれれば大丈夫だから。」


「うむ、分かった。だが、マナというのは場所によって顕著に濃度差が出るのだな・・・厄介なものだ。」


「そうだね、マナは拡散はするけど、水にも溶けるし、土の下でどう流れているのか分からない。急に流れが止まったり変わったりするし・・・大きな流れが急に変わる事は少ないって聞くけど、街へ向かう道を塞がれちゃうと困るよね。よっぽどマナを貯めてから来ないとこんな道を通るのは自殺行為さ。」


 エンドは会話の途中でも気配を探り続けているが、この場所の近くには小さな虫のようなもの以外、動くものは感じ取れなかった。


「ふむ、ゴーストもここには居ないようだ。」


「うん、この先の町がマナ枯れの被害にあった訳じゃ無いからね。住んでいる所がダメになるのが一番酷いことになる。」


 なるほど、とエンドが頷く。


「むしろ、この先の町・・・ガラリアはかなり豊かな所だよ。領都からもそんなに遠く無いし、街道が通りにくくなる前は観光地にもなっていたらしい。ボクも一回だけ仕事で寄ったことがあるけどいい所さ。」


「ほう、それは楽しみだ。」


 とはいえ幽霊街道に比べればマナの乏しい道は遥かに短く、徐々に草木が増え、足元の幽霊草は見えなくなり、遠目に柵で囲われた放牧地が、そしてその奥に白い石壁で囲まれた綺麗な町並みが見えてくる。町は七割程を大きな湖で囲われており、陽光が煌めくのが見える。エンド達は歩き続け、その光景はどんどんと大きく、そして詳細に見えるようになっていった。


 道を進んでいると、近くの放牧地には丸っこくてそれなりに大きなネズミとブタを足して二で割ったような灰色の毛皮を持つ動物がのんびりと草を食んでいるのをエンドは横目に見る。


「ピッカブーだね、動きが遅くて大人しい。草食性でマナが少ない場所でも生きていけるけど、野生のはファングとかによく襲われているのを見る。家畜としては肉が多く取れるし毛皮も使える、糞も肥料になるから領都の近くでも育てているけど、ここまで大きくないね。マナがとても豊富なところだと、空気中のマナと食べ物だけでもマナが足りるらしいね。」


 少し離れた所には作物の茂る畑が、そして働いている人影もちらほらと見える。のどかで豊かな光景にリンガが感じ入るような話す。


「うん。やっぱりここはかなりマナが濃いね、領都よりも濃い感じがする。だから豊かだ。」

 

 遂に町の入り口に到着すると、詰所の硬い表情をした三つ目族から声がかかる。エンド達は探索者である事と、荷物の配送について告げると、門番は表情を柔らかくして歓迎の言葉を言う。


「探索者さんか!ようこそガラリアの町へ!いやはやここまで荷物を運んでくれるヒトは少ないからありがたいよ。私達も作物とか家畜を半年に一度は領都まで運んで売っているけど、けっこう辛くて人気のない役目だ・・・ああ、探索者の支所は門を通ってすぐだからそこまで荷物を頼むよ。そうだ。昔観光で使っていた宿泊施設を今は来客用にしているから、せっかくここまで来たんだし少しゆっくりとしていくといい・・・君達のような客は歓迎するよ。」


 門を通ると綺麗な建屋が並び、領都に比べて穏やかな声が飛び交うヒトビトの生活が見える。門番の言う通り、探索者組合の看板がかかった小洒落た建屋が直ぐに見える。一行はその戸を潜った。

 

 


 


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