2-34 検証
「小さめの気配が五、その後ろに少し強い気配が一つ来る•••見えた、あれがハウンドか。」
ハウンドはファングに似た姿ではあるが、二回り程大きく、そして二本の犬歯は大きく口からはみ出る程であった。
しかし、その配下のファング共々かなり痩せており、そして傷が多く右後脚を引き摺っていた。
リンガは大鉈を抜きながら凄まじい速さで駆け出すと先頭のファングの左の脚を前後共に切断し、二匹目の顎を蹴り上げて砕き、三匹目の胴を中程まで押し切る。残った二匹が散り散りに逃げようとするが、それが出来たのは一匹だけでもう一匹は尾と尻を裂かれて動けなくなる。
ハウンドがリンガに向かうが余裕を持って距離をとり、睨み合う形となる。
「アイボー!やってみな!」
「ああ。」
エンドが杖状のガードマギアを構えてマナを流すと釘にも似た太い針が射出される。
「グギャッ!?」
針は浅くしか刺さらなかったが先端の毒がハウンドに強い痛みを与えて悶えさせる。
その様子を観察しつつ、エンドはこのマギアについて評価を行うーーー針が流れ、バラける。回転も羽根もないからか、集弾性はかなり悪い。この開けた視界で五十は撃ったが当たった数は10に満たず、そして当たっても半分以上は角度が悪くて上手く刺さらず弾かれている。コニイから聞いていた最大射程よりも幾分近くから撃ってこの結果だ。杖の形状も良くない、真っ直ぐな棒は腕を伸ばした際の手首の角度が案外ズレやすい。
だが効果は悪くない、倒すほどのダメージはとても与えられ無いが、牽制としては嫌らしく使えるだろう。
差し詰め毒虫のようなもの。殺す事は容易いが、痛みや不快感を与える存在で厄介かつ割に合わないと思ってくれれば良い。もっとも、マナというご馳走を沢山背負っている為襲われる事は避けられないだろうがーーー
「相棒!次は光と音が出るから退避だ!•••三、二、一、今!」
エンドが声を張り上げる。身体を捻り針を口で抜こうもがくハウンドの付近にボールのようなものが転がり、閃光と爆音が響く。
リンガは距離をとって姿勢を低くし顔を覆うが、音の影響か顔を顰めた。エンドも暫し高い耳鳴りに襲われたが、すぐに瞼を開けると正面を睨む。爆心地のハウンドは混乱した様子で走り回り、意図せずエンドの方にやって来ていた。
リンガが仕留めようとするのを制止し、トンファーのようなマギアを構えるとマナを流し赤熱化させ、ハウンドの横っ面に押しつける。
「ギャァッ!!」
顔を背けたハウンドの首筋をエンドの手から生えた旗の鋭利な先端が襲う。腰を低くして石突を地面に付け、斜め下から勢いよく刺さったそれは、その身体を浮かせる。
ハウンドは自重で傷を広げつつ大量の血を流し地面に落下した。だが、その身体はまだ激しくもがき、苦しんでいた。
「相棒、頼んだ。私では苦しませる時間が長くなる。」
「了解ッ!」
リンガの大鉈がハウンドの脳天を叩くと、身体を一瞬震わせ、ついにその身体は動きを止めた。
「おつかれ、アイボー。どうだった?」
「杖は改善点が多いな。ボムは中々悪くないが、周囲への影響が難しい。このトンファーも怯ませる役には立ちそうだが、決定打に欠ける。だが、ありがたい。どれも素手よりはマシだ。ある適度怯ませる効果はあったようだ•••シッコも助かった。」
エンドの側でいつでも壁として割って入れる位置にいたシッコに労いの声をかけると、笑い声をあげてエンドの体に再びへばりついた。
「うん。どれも決定打にならないけど、時間稼ぎにはなるね。でも、だからこそ一人で戦っちゃ駄目だよ。倒せないんだから。」
「善処しよう。」
「絶対だからね!もう!」
リンガは胡乱気な表情で回答を濁すエンドに念押しをする。何を言っても無茶をしそうな相棒を見逃さないようにしなければと改めて心に誓った。




