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2-33 睡眠不足

 短い眠りから覚めたエンドはふと懐の温もりと重さに気がつく。リンガの寝相はそこまで良く無い様であり、エンドの腹の上に頭を乗せて腰に軽く腕をまわしながら寝息を立てていた。

 その柔らかさと温度、その匂いを感じーーー性欲を持て余すな、とエンドは思う。朝の生理現象は当たり前の様にあった。だが空はまだ暗く、明るくなる前には落ち着くだろうと目を閉じて周囲の気配を探る。領都とは異なりこの時間では村人も殆ど起きているものはいない様子であった。


 空が少し明るくなる頃までその温もりを楽しみ、リンガを揺らして起こす。


「相棒、早朝だ。起きて準備をしようか。」


 リンガに声もかけるものの、中々目を覚まさずに逆にしがみつく力を強める。辛抱強く揺らしていると、ようやく眠たげに薄く目を開いた。


「•••んん、朝?おはよー•••ってうわあ!」


 エンドに抱きついている事に気がついたリンガが慌ててその身を離す。


「ご、ごめん!寝づらかったよね?」


「ああ、そうだな。」

「うっ」

「性欲を持て余す。相棒も自分の魅力を知るべきだ。はっはっは、役得では有るがね。」

「なぁっ!?」


 リンガは眉尻を下げて悲しそうな顔となるが、すぐにその頬を赤くする。


「•••アイボー、ホントに男がそういう事言うの、危ないからね。」


 うむ、と適当な相槌を打つエンドであったが、その特殊な深層心理からか、その自己評価はかなり低い。また、一方でリンガもまた自身の容姿については同じ様な傾向があった。

 それを不思議そうに見るのがシッコであり、群れの強い存在が何を躊躇っているのかが分からなかったし、お膳立てまでしたのに何も無かった事について不満を覚えてさえいた。

 携帯食を食べて身支度を整えている間、シッコはリンガの耳元で囁く。


「ヘタレ〜」


「ううっ、まだ出会ってそんな長く経ってはいないし、ボクの身体って小さいし•••」


「へいボス、ご主人誰かにとられちゃうヨ。動物ってタイミングが合えばそんなに時間をかけなくてもくっつくじゃン」


「いや、ヒトってそんな単純じゃ」


「変わらないヨ、動物じゃン•••マァ好きにしなヨ。ワタシはご主人から離れないけどネ〜」


 離れていくシッコに、リンガは真剣な様子で考え込み、拳を強く握っていた。




 まだ明るくなりきらない内に村を出ると、今回の最大の難所である地点を目指す。

 目的地の町はマナが特異的に豊富で農業や畜産が活発に行われているが、そこに繋がる街道や平地のマナがかなり薄くなっており、交通の便はすこぶる悪い。場所によってはそこまで距離は無く、十分にマナを蓄えていれば通れない訳では無く、実際に農畜産物を運ぶ商人もいる。だが、その不快感からか好き好んで行き来する者は居ない。


 その境界線には縄張り争いに敗れた動物や魔獣が押し込められ、そして飢えている。エンドは複数の小さな気配と、それよりもやや大きい気配が近づいているとリンガに話す。


「ファングと、『ハウンド』だと思う。ハウンドは一応中型に分類されるけどそこまで大きくない魔獣だよ。ファングを大きくした様な見た目で、同じ群れを作ることもあるから近い種類って言われてる。」


「危険性はどうかな?」


「ボクが相手にするなら、問題無い。アイボーだと少し不安だね。でも、本当に強いヤツは大体マナが豊富な所にいるし、返り討ちのリスクがあるヒトを襲う事はあまり無い。油断はダメだけどね。」


「なるほど、では新しい装備を試すには良さそうだ。」


「危なかったらすぐ助けるヨ〜」


 街道を進んでいると、まばらに生えた木立からついに魔獣がその姿を現すのであった。




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