2-32 宿泊
探索組合の名前を村人に言うと村長の家に案内される。村長の家は他よりも立派で、また役所としての機能を併せ持っていた。
村や町の数が減り、交流も減った現在では国の一部ではあるもののそれぞれの場所で自治を行っており、封建社会にも似た小さな社会が形成されていた。
やや尊大な様子ほ村長は一言「ご苦労」と言って席を外し、後は使用人が代わって荷物の対応を機械的に行っていた。
また、村に一泊したい旨を伝えると、面倒そうな顔をしながらも離れの建屋に案内され勝手に使ってくれと言って去る。そこは狭く、見窄らしく、薄ら埃を被っており、小さなベッドが一つあるだけの掘立て小屋であった。
換気を行い、シッコが埃を払うと漸く一息つき、薄暗い灯りのマギアを起動させ一息つく。
「ま、外れの村だね。野宿よりは良いけどさ。」
「ふむ、対応は事務的であったが。」
「普通の所だと結構丁寧にしてくれるよ。あまり外を出歩く人も少ないし、領都からの手紙や荷物は歓迎されるんだ。あまり酷い対応をされると仕事を請ける組合員もいなくなって村とかも困るだろうし。」
「うむ、先ほどの村の方が通常なのか。」
「我慢できる範囲ではあるけどね、一応は雨風を凌げるし、危害を加えられた訳でもないし•••偶にこういう王様みたいな考えの場所はあるだよね。レポートには事実だけ書いて提出するけど。」
「ふむ、では明日は早めに起きて出発するとしようか。」
「そうだね、別に残る理由もないし。そろそろ寝ようか。」
そう言ったリンガではあったが、ふとこの部屋にはベッドが一つしかない事に気がついた。現在の社会通念上、か弱い男性に寝床を譲る事は一般的だと考えエンドに譲ろうとする。
一方でエンドの方も種族的な特性かあまり睡眠を必要とせず、リンガにしっかり休んでもらいたいと譲り返して埒があかない。
「あ、じゃあシッコにベッドになってもらうのはどうかな?」
「ン〜、あんまり長い時間じゃないならいいけど、ずっと同じ形は疲れるかナ」
「そ、そうなんだ、ごめん。」
「別にいーヨ。でもサ、ならご主人と一緒にベッドで寝ればいーじゃン?」
実のところ、シッコも流動的な身体を完全にずっと同じ全く動かぬ形にする事は面倒であるが、ベッド型程度に大まかな形を維持する事はそんなに問題は無い。だが日々核の分裂と圧縮、細分化を繰り返したシッコは嘘や建前といったものさえ使えるようになって来ていた。
ただしその本質は未だ野生の獣にも似ており、特にリンガの力を持っているのに変に奥手な姿勢については一種の煩わしささえ感じ、群れの一員として後押しをしようと考えていた。
「え!?いや、そんな•••ボ、ボクは良いけど、アイボーがちょっと気にするんじゃ」
「私は一向に構わん。」
「だ、男性がそんな誘う様な事を言うのは危ないよ!」
「ふむ、どちらかと言えば相棒の方が気をつけるべきではないかな、君は魅力的である事を自覚するべきだ。」
「あ、あぅ」
「うっせえかラとっとと入れヨ」
「ぬおっ!」
「わぁっ!」
シッコは触手を伸ばして二人をベッドに押し込めると上から毛布を被せると、エンドが持っていた灯りのマギアも取り上げて部屋は暗闇に包まれる。
「おやすミー」
「ああ、お休み。」
「•••」
エンドはいつも通りの短い睡眠をとり、リンガは悶々としながら睡眠不足で何事も無く朝を迎えるのであった。




