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2-31 出立

「ああ、もうそろそろ出発の時間か、助手君との会話は実に楽しいが、仕方がないね。ああそうだ、その前にマナの補給をお願いしたいな。」


「うむ、問題無いが、ドクとアイリスで良いのかな?」


「それとマナポットにも補充を頼むよ、何日かは帰ってこないのだろう?」


 エンドは快諾し、二人に問題無くマナを注ぎ、次にマナポット、所謂マナのバッテリーに補充をしようとした際に動きが止まる。


「ドク、マナポットが増えてないかね?」


 一つ作るのに大分資産を費やしたと言ったマナポットがもう一つ増えていた。


「あ、あははは、やはり使えるマナは多い方が良いし、それに助手君のお陰でマナも売れて資材も揃えられてね•••その、自重出来なかったんだが、そういうのは、嫌いかね?」


 不安そうに恐る恐る聞くコニイに、エンドは笑いながら首を軽く振って返す。


「構わないさ、渡したマナは既に私のものではない。好きな様にしてくれ。むしろその熱意と姿勢は私が好むものだ、ドクの身に危険が及ばないように上手くやってくれ。」


「おお!流石助手君、嬉しい事を言ってくれるね!では遠慮なく今後も頼むとしよう!」


 コニイは喜びの表情を浮かべてエンドの手を取り大きく上下に振る。


「うむ。ところで今度はインジケータが付いているがそこまで補充すれば良いのかな?」


「ああ、前のものにも改造して付けてある。新しい方は容量が3割り増しになっているが大丈夫かね?」


「大丈夫だ、問題無い。」


 どこか不安になる言葉とは裏腹に、特に過剰供給が行われる事も無く補充は完了した。ホクホク顔のコニイと無表情なアイリスに見送られ、反対にどこか不機嫌な様子のリンガと共にエンドは家を出る。


「どうした相棒?準備に時間をかけすぎたか?」


「別に•••随分とコニイと仲が良いんだね。」


「うむ、仲が良いに越した事は無いだろう。」


「そりゃあ、そうだけどさぁ•••」


「それに記憶の無い私ではあるが•••一番仲の良いのは相棒だと思っているのだが、迷惑かな?」


「•••迷惑じゃ無いよ、バーカ」


「ン〜?ワタシは?」


「む?これだけ密着していて仲が悪い筈も無いだろう。」


「ワーイ」


 機嫌を直したリンガの様子にエンドは首を傾げつつもそのまま通りを進み、領都の西門を通って外へと出る。中へ入る時とは比べ、外へ出る際のチェックは簡素なものであった。担当者がリンガの顔を知っていた事もあり、探索者である事を告げバッジを見せると簡単に外へ出る事ができた。


「今日は二か所の村に行くよ、相棒が夜でも問題なく活動できることは知ってるけど、夜型の種族じゃ無い限りは一泊させて貰うのが普通だよ。」


「うむ、そして明日はマナの少ない町へ行くのか。」


「そうだね。マナの多い場所だと小型の魔獣もエサが多いから比較的おとなしいけど、マナの薄い所との境界は注意が必要だね。」


「分かった、気をつけよう。ところで、ファングと思われる複数の反応が林の中にあるが。」


「こっちに近づいてきてる?」


「いや、その様子は無いな。」


「じゃあ放って置こう。ボクたちは今飢えてはいないんだ。」


「•••そうだな。無駄に血を流す事もあるまい。」


 その後も順調に旅程は続く。エンドは元々高いスタミナがあったが、マギア•フレームの補助でシッコを身体にくっつけたままでもその重量を気にすることなく歩くことが出来ていた。


「む?」


「どうしたのアイボー?」


「道沿いをゆっくり動く小さな気配があるな。」


「分かった、念の為僕が先行するよ。」


 警戒しながら進むと、緑色の液体がのんびりと動いている姿が見える。


「あ、スライムだヨ!」

「スライムだねぇ」

「ほう、あれが普通のスライムか。危険性は?」


「無いね、核の大きさの割に体が小さいから、何かに食べられたのかな?」


 ゆっくり進むスライムを眺めながら足を止めていると、エンドの着ている外套の裾から触手がするりと伸びるとスライムを掴み、そのまま縮んで取り込んでしまった。


 エンドとリンガが言葉を失っていると、今度は裾から多少大きくなったスライムがペッと排出される。スライムは驚いたのか少し急いだ様子で藪の中に消えた。


「シッコ、何をした?」


「ン?ご主人、この子はネズミみたいな動物に齧られたみたいだヨ。」


「別のスライムの記憶が分かるのか!?」


「大体だけどネー、ワタシ達って結構何があったか覚えてるんだヨ?バラバラだとそんなに考えることが出来ないからあんまり意味ないけどサ。」


「スライムってそうなんだ、初めて知ったよ•••」


 道中で役に立つかは不明だがシッコの特技を新たに知った一行は一つ目の目的地である村に到着した。木製の柵で簡単に囲われた村の入り口で、訝しげに近づいてくる村人に手紙や荷物を持ってきた旨を告げると、警戒していた様子の村人も笑みを浮かべて小さな商店へと案内する。

 この商店がこの村の荷物の配送の担当も兼ねている様であり、愛想のいい店員に荷物を渡してサインを貰うと反対に領都に運ぶ荷物を受け取る。別れ際にサービスだよとピンポン球のサイズの果物を幾つか貰い、礼を言いつつ村を出た。


 果物を摘みながら次の村へと進む。リンガが言うにはこの辺りはマナが豊富な為、作物も育ち生活にも余裕があるとの事であった。その果物はほんのり甘く、水分が豊富でそこまで美味というわけでは無かったが飽きのこない味を楽しむことができた。


 ペースを乱さず早足で歩き続け、太陽が暗くなってきた辺りで予定通り次の村の姿が見えてくるのであった。


 


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