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2-29 初仕事

 組合へ向かう為に身支度を整える三人であるが、エンドが外套とガードマギアを悩んだ様子で見る。


「どうしたの相棒?」


「ああ、どの様に装備すれば邪魔にならないか考えているのだ。」


 リンガは納得する様に頷く。


「うーん、見える様に装備しているとオーラが使えないってバレそうだし、動いたりする時に邪魔になるのも困るよね。」


「ああ、脱ぐ時に邪魔にならない様にどうすればいいのか。」

「そっちか!?」


 最終的にはリンガに着替えを手伝われて外套の内ポケットやベルトを駆使して何とか行動を阻害せず、かつ目立たない格好となった。


「マー、基本的にはワタシがご主人を守るけどネ」


 シッコの言葉にリンガは頷くが、真剣な様子で告げる。


「シッコも便利な体をしているけど、オーラが使えるわけじゃ無い。何かあればまずアイボーと一緒に逃げるんだ。いいね?」


「ハーイ」


 ウネウネとしながら適当な返事をするシッコであったが、内心では真剣に非常時のシミュレーションをしていた。リンガの言う通り、スライムの体は液体であり核さえ無事であれば死なない強靭な点もあるが、動きも鈍く単純な力で言えば非力な部類に入る。何らかの搦手が必要なように感じていた。


 作業に没頭するコニイの代わりにアイリスが玄関まで3人を見送り家を出る。

 活気のある下町を抜け、組合のドアを開くと昨日とは打って変わって多くのヒトでごった返していた。小鬼族やビースト、マギアンが多いが他にも様々な種族が居り、リンガも顔見知りから声がかけられる。


「ようリンガ、そのデカいのは新人か?」


「うん、一緒に組むことになったんだ。」


「ああそうか、教育係かご苦労なこって。よろしくな新人。」


「エンドと言う。よろしく頼む。」


「おう、頑張れよ。」


 臆する様子も気負う様子も無く挨拶をして歩くエンドは体育会系の匂いの強い職場では比較的好意的に受け入れられていた。また、多くの者は仕事を探しに来ているわけであり、それに忙しくて積極的に絡んでくる者も居なかった。


 受付も何箇所かあり、受付嬢のマギアン達が忙しなく動き回っている。リンガの説明では基本的に組合に来て名前を告げると、それぞれに合った仕事を受付から渡されるというシステムとなっていて、単純に早い者勝ちという訳でもない。とはいえ遅く来れば仕事も少なくなるし、人気のない仕事は人員の募集のビラが壁に貼ってあったりもする。

 暫く椅子で待っているとイースから声がかかった為席を立ってカウンターの一つに向かう。


「おはようございます。昨晩はうちのマスターが世話になりました。」


 頭を下げるイースにリンガとエンドも軽く頭を下げて返す。


「こっちこそ時間外に悪かったね。それで、仕事はどんな感じのやつになるの?」


「エンド様は初仕事になりますし、基本的な依頼かつ近場のものを用意してあります•••」


 イースは仕事の内容の書かれた書面を渡すと共に、口頭でも説明を行う。


 仕事は近隣の小規模な村や町への郵便物の配送で、現地の担当者に渡してサインを貰い、その後領都への郵便物を貰い組合まで運ぶ。

 領都周辺はマナが豊富な場所が多い為街道を歩くだけの簡単な仕事ではあるが、1箇所だけ少し離れており、しかも途中でマナが少ない道を通る必要のある村がある。報酬も少し高めではあるが、その道程が苦痛であり割に合わないと人気が無い仕事となっている。


「リンガ様はこの様な仕事を度々受けて下さり、組合としても常日頃から感謝しております。」


「おお・・・流石相棒だ。」

「や、やめてよ。仕方なく受けてるだけだから!」


 エンドの賞賛に照れるリンガを眺めつつ、イースは続ける。


「私共としても、負担を余りかけずにこの様な仕事を依頼できるのは嬉しい限りです。」


 イースの視線はエンドを捉え、エンドは鷹揚に頷く。


「相棒に色々な意味で負担をかけぬよう気をつけよう。」


「でも、無理はダメだよ。多少は負担かけてもいいからね。」


「うむ、面倒をかけるな。」


 簡単な打ち合わせを行い、今日の昼前には出発することとなった。イースから褐色の無骨な荷物の詰まった背嚢を受け取ると受付を離れる。次の探索者がすぐにイースに呼ばれる。

 混雑する組合から出ようとした時、ドアから入ってきた小鬼に声をかけられた。


「あ、リンガじゃん。持ってるの配送のやつ?どこ行くの?あとそのヒト初めて見るね!」


 エンドは挨拶し、リンガも顔見知りの小鬼に行く場所を告げる。仕事によっては守秘義務があるから気を付けるようにとエンドにもついでに説明した。


「うわぁ、あそこ行くの!?良く行くね〜私達小鬼でも結構キツいのに大きなヒトは大丈夫なの?」


「心配してもらい有り難い。だが、私はマナが薄くても動ける種族だから問題は無い。」


「へー、大型種でもそういうのも居るんだね!おっと、仕事なくなる前にいかなきゃ!んじゃ、頑張ってねー」


 あの小鬼はこの国出身で、中々気の良い奴だとリンガは帰り道でエンドに話す。また、相談の結果、一度身支度を整えたらすぐに出発する事として帰宅した。


「助手君!待っていたよ!ちょっと来てくれ!」


 興奮したコニイに帰った早々手を引っ張られてエンドは工房の奥へと向かうのであった。





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