2-24 証明
少しクールダウンを挟み、リンガも自分の椅子に戻り、それぞれが酒と茶を飲んで落ち着くとタツキは話を続ける。
「原則では探索者の門戸は誰にでも開いている、やる気があれば受け入れるさ。だからエンド、テメェを登録する事は制度上問題ねぇ。だが、身も守れないヤツは自分も周りも危険に巻き込む、これを俺は認めたくねぇ。沢山の兵隊に守られているならいいが、そこんところは精神論じゃねえ、どうすんだよ?」
酒を飲みながらではあるが、その声音は真剣なものであった。
「ボクが最初に助けた時にも、アイボーはファングを二匹仕留めていた。後は広く気配を感じられるし、敵を倒す、というよりも気絶させる事ができるよ。別に探索者は軍じゃないから積極的に戦う仕事じゃないし、流石にボクも何の力もないなら登録させない。」
「あー、フラグマンって種族の特性か。索敵、スタミナ、あと旗?今更だが旗って何だよオイ。とりあえず、俺は実際に見たもんしか信じねぇ。だから度胸は認めるが、俺を納得させて見せろや。」
ふむ、エンドは深く頷くと口を開く。
「マスターの心遣いは有り難く、尤もだ。おそらく、右の部屋で話を聞いている受付のレディも同じ心配をしてくれているのだろう。」
「テメェ・・・いつから分かっていた?」
「最初から。この距離なら個人まで気配で分かるさ。」
小さな足音の後扉が開き、受付にいた青い髪のマギアンが部屋に入り胸に手を当てて頭を下げる。
「皆様大変失礼致しました。全てはマスターの指示ですのでご容赦を。」
「オイテメェ」
「事実でしょう?」
「そうだがよ、言い方があるだろうよ言い方がよォ」
「なに、怪しい部外者が来れば警戒も当然。気にして居ないさ。」
「ボクは少し気になるけど、気持ちは分かるからいいよ。」
「ソリャ気になるよネー」
答えは少し違うが概ね許容の姿勢は同じであった。マギアンも再度頭を下げて返す。
「ったく、紹介するぞ。コイツはイース、ウチの事務仕事をまとめてやってるヤツだ。受付にもよく出ている、マギアンは記憶力が良いしミスが少ないから重宝してるよ。」
「あら、マスターが褒めてくれるなんて珍しいですね。」
「うっせえ!」
「ボク達の挨拶は、横で聞いてたなら要らないかな?」
リンガの質問にタツキとイースは頷いた。
「私も自身の体力には少し驚いている。この場での証明は難しいが、ふむ。」
エンドは唐突に流れるような動きで服を脱ぐと、裸体を晒した。タツキの目はそれに釘付けになり、「デッ!」と叫ぶと口の端から酒が吹き出る。
「どうかな?私も記憶に無いが、この身体は随分と鍛えられているらしもがっ」
「バカー!どっかでやると思ったよ!後何でそんなに脱ぐのが早いんだよ!」
リンガが外套をエンドの頭から被せる。その様子をシッコは楽しそうに見ていた。
「だから何でいつも脱ぐんだよ!?」
「相棒・・・私に死ねと?」
「そこまで!?」
唖然としているタツキと、その様子を珍しそうに見ていたイースであったが、いつまでも硬直しているその頭に手刀を入れる。
「あたっ!た、確かに良い身体だな、同族の男でもそうそう居ない、いやアイツらは鍛えてないから全然違う・・・」
「エンド様、老婆心ながら女性の前で体を晒すのは如何なものかと。」
「だが断る。」
「えぇ・・・?」
「あーもう収集つかなくなるじゃないか!とりあえずエンドの体力があるのは保証するよ!領都まで歩いてきてピンピンしてるし!とりあえずさっさと服を着る!シッコも手伝って!」
「はーイ」
抵抗をせずに服を着させられるエンドをぼんやりと見つつ、なんとかタツキは言葉を返す。
「お、おう。身体は鍛えられてる事は分かったし、そこは良い。後は身を守る手段だな。ちょっとそこに立ってろ。」
服を着たエンドが頷くと、タツキも立ち上がってゆっくりと歩くーーー次の瞬間には加速してエンドの目前に迫る。
「!!」
エンドが咄嗟に旗を生やし、先端が天井に刺さり、石突に体重をかけて突き出された拳を柄で何とか受け止めるが、それでも1mほど後退し傷付いた天井の破片が降り注ぐ。
面白そうに笑うタツキだが、たなびく旗が意思を持つようにその顔を覆うように唸る。
感心したようにそれを見つつも頭を下げて余裕を持ってそれをかわすが、急に顔を歪ませると後ろに跳んで下がる。
「ンっ、クソッ!頭が痺れてやがる、糞みてぇに旗からマナを叩き込んだな、はっ!札束でブン殴るみてぇな随分と豪勢な事をするな!」
「む、下がられてしまったか。遠慮せずに受け取って貰っても構わないのだがね。」
エンドは咄嗟にマナを旗に急速に送り込み、タツキの頭部付近に発散させていた。直接流し込んでいないため気絶させる事は出来なかったもののある程度の衝撃を与える事が出来ていた。
部屋の中には通常あり得ないほどのマナが満ち、イースが驚いたような表情を浮かべる。
エンドが旗を槍のように構え、リンガとシッコが遮る様にその前に立つ。タツキは笑みを浮かべそれを手で制した。




