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2-22 大鬼

案内された部屋は隅の方には雑多に物が置かれていたものの、デスクの周辺は綺麗に片付いていた。


「マスター、時間を取ってもらって悪いね、相談したい事・・・」

「まぁ待て、先ずは酒からにするぞ。グラスは俺の分と、あとは二つ・・・いや、三つか?」

「なっ!なんで分かったんだ!?」


「・・・ふむ、相棒よ。私のこの変装は効果があるのか疑問になってきたぞ。ま、バレているのであれば仕方あるまい。」


 エンドがローブをはだけるとシッコがぬるりとその体から離れて横に並び立つ。


「マスター、お初にお目に掛かる。エンドと名乗っている、今後ともよろしく。」

「ジェリーのシッコだヨ!コンゴトモヨロシク」


 鬼はその光景に目を見開き、そして楽しそうに笑う。


「ハハハ!かぁ〜、コイツは驚いたね!グラスの数を聞いた時にリンガの目が揺れたからカマかけてみたら、まさかこんなヤツらが出てくるとはね!デカくていい男と、あとはジェリー?知らん種族だな・・・いや、お前スライムだろ!」


 リンガは自分の様子で色々とバレてしまった事に怒りを感じ舌打ちをした。


「だっはっは!リンガ、テメェは見た目の割に真面目過ぎるんだよ!ああ、待て待て、先に挨拶は返さないとなぁ。」


 鬼は姿勢を正すとエンドを真正面に見る。その背丈はエンドと同じほどで、鍛えられた無駄のない体、加えて豊満な胸がサラシで巻き付けられてつつも隠さず主張していた。


「俺はタツキ、この探索者組合の組合長をやっている。面倒事は嫌いだが大好きだ。まっ、つまらん政治がらみじゃ無ければ歓迎って意味だな。こりゃ面白い奴らが来たもんだ!」


「うむ、楽しんで貰えるのであれば幸いだ。しかし、先ずは酒を注がせてもらおう。マスターもそう言っていた筈だ。」


 臆することも無く答えるエンドを面白そうに目を細めて見て、椅子に音を立てて座る。


「・・・へぇ、良いじゃねえか!男の酌なんてかなり久しぶりだ。金払ったって中々今のご時世見られないさな。」


 琥珀色の酒をタツキのグラスに並々と注ぐ。タツキもその酒瓶をエンドの手から取ると三杯のグラスに傾けた。


「ありがとう。では乾杯するとしようか。」


「ああ、そりゃもちろんだが、何に乾杯するんだよ?」


 エンドは顎に手を当て少し考える。


「月並みだが、この出会いに乾杯というのはどうだろうか?」


「はっはっは、良いけどよ!ベタ過ぎて中々使わない台詞だぜそいつは。じゃあ、乾杯!」


 グラスを掲げてタツキは中身を一気に煽る。エンドもゆっくりグラスを傾けるが、休む事なく全て口の中に一息で消えた。リンガは少し口に入れたものの、顔を顰めて舌を出している。シッコのグラスの中身はいつの間にか空になっていた。


「かぁ〜っ!この銘柄の酒はやっぱり良いな、効くぜ!」


「うむ、角が丸い酒だ。焙煎しているかのような味と風味が後から来るな。」


 エンドの講評にタツキは嬉しそうに笑う。


「なんだお前、イケる口かよ。」


「どうやらそうらしい。これまで酒を飲んだ記憶は無いがね。」


「はっはっは、そのナリで初めての酒かよ!それで旨く飲めるは才能あるぜ!リンガ、お前は飲まないのかよ?」


 リンガはちびちびと舐めるように飲み、その度になんとも言えないような表情になっていた。


「・・・酒はあんまり得意じゃないんだ、特に強い奴は苦手なんだよ、すぐに酔っちゃうし」


 そう話すリンガの頬は既に僅かに赤みがかっていた。


「オイオイだらしねぇなぁ!もっとグッといけグッと!」


 リンガが困ったような顔をしているのを見て、エンドがそのグラスを掴み、飲み干す。


「うむ、やはり良い酒だ。マスターよ、苦手なものを敢えて飲むのもつまらんだろうし、酒も不本意だろう。」


「えぇ!?酒くらい飲めんといかんだろオ

イ!・・・酒が勿体ないのも確かだし、女の飲みかけを躊躇無くいくお前の女気に免じてやるか、ちょっと待ってろ。」


 タツキは立ち上がると棚から茶器を取り出し、流れるような動きでマギアを操作し湯を沸かし、茶を淹れる。芳しい香りが部屋に広がった。その所作は精錬されたものであり、茶を淹れた者がただの粗野な者で無いことを表していた。


「ほれ、茶だ。熱いぞ。」


「あ、ありがとう・・・あ、これ美味しいな!」


「まぁな、俺も仕事中は酒飲むわけにはいかないからよ。ところで、シッコとやら。」


「いや、ワタシ味とか感じないし普通に分解されちゃったヨ、スライムだしネ」


 身も蓋もない言葉にタツキは唖然とする。エンドが右手の人差し指をシッコに向けると、シッコの口がそれを包む。そこからやや強めにマナが流されると、シッコは体を波うたせながら「ウマー」と楽しげに声を上げた。


「ったく、じゃあ飲めるのはオレとお前だけかよ。」


「私では不満かな?」


「そうじゃねえけどよ。だが素面で話すようなつまらん話をするわけじゃねえだろ、今からお前らはよ。」


 腕を組み、鋭い眼光が三人を睨む。


「じゃあ聞かせてもらおうか、リンガ。ある程度予測はついているがな。」





 


 

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