2-4 門番
少し迂回して北門へと進む影が2つ。それは小鬼と布をローブのように被った大柄の影。リンガとシッコを体に貼り付かせたエンドの姿。
「門の中はまだ都じゃない、厳密に言えば外の扱いの筈なんだ。だから何かあれば入れてもらえないけど、こちらも気に入らなければ出ていくこともできるんだ、建前はね。ま、門番はあいつだしとりあえず一度当たって話してみようか、エンドは保護を望んでいないってさ。」
「うむ。別に大した事を望んではいない、騒ぎにならないといいが。」
「だからこの時間帯なんだ。緊急時以外は夜は門を通れないから外から来るヒトは大体が余裕を持って到着する。領都から外に出るにしてもこの時間に出る人ヒトはあまりいない。夜行性のヒトもいるから、多少はいるけどね・・・それでこの時間は門番も少なくなっているんだ。多分、頼めば個室で審査をしてくれると思う。」
なるほどと納得するエンドを後ろ目に見て、暫し進むと誰も並んでいない門へとリンガを先頭に入った。そこはちょっとした広間となっており、詰所のような扉や荷物を置くためのスペースがあった。
そして直立の姿勢を崩さずに視線を向ける軍人の姿があった。
「やあ、ランファ、こんな時間に悪いね」
リンガが明るい口調で声をかけるが、ランファと呼ばれた軍人は固い表情を崩さない。
長身で緑色の軍服をキッチリと着こなす、亜麻色の髪をもつ整った容姿の女性。その額にある碧色の縦に長い紡錘型の宝玉は第3の目にも見えた。
また、女性らしいシルエットに立派な胸部がーーーと考えたエンドを一瞬振り返ったリンガは無表情であったが鬼気迫る何かを感じた。
「いいえ、リンガ。まだ開門時間なので問題ありません。しかし、貴方は何故北門から来たのでしょうか?南門から出立したと記憶して居ますが。」
「ああ、うん。事情があってね。」
「事情とはお連れの方の事でしょうか?」
鋭い眼光が布を被って顔も見えない大柄な影を睨む。それはお世辞にも怪しくない人物とは言えない風貌ではあった。
「うん、依頼の道中で助けたんだ。」
「依頼・・・確か遺髪を故郷の墓地に埋めて欲しいというものでしたか。聞いていたよりもかなり早い帰還ですね。何かトラブルでもありましたか?」
「いいや、依頼は問題なくこなしたよ。現地で回収した証拠もある。早かったのは、『幽霊平原』を抜けたからさ。」
「・・・俄には信じ難いですが、貴方が嘘をつくとも思えません。やはりそちらの方に何かありそうですね。」
「そうだよ。察してくれていると嬉しいけど、少し混み合った事情があるから個室で相談したい。そこでなら連れの顔も見せられると思う。」
僅かに考え込んだランファであったが、少し待つように告げ、別の軍人に声をかけて一言二言話すと戻ってきた。
「いいでしょう。他の人があまり好まない仕事でも進んで行っている事を知っています。貴方を信じましょう。」
「ありがとう。悪い奴らじゃないのはこの角にかけても保証するよ。そう、悪い奴らじゃあないんだけどね・・・」
「わかりました、ではこちらへ」
ランファの先導で幾つかある部屋の一つに入って行く。どうやら最初の関門は通り抜けることができたとリンガは少し安堵した。




