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2-2 ゲート

「そろそろいい時間かな」


暗くなりつつある空を見て呟くリンガと、少し先に見える城壁を見てシッコが問いかける。


「ンー、そういえばリゾトニアってどんなところかナ?ワタシは街とかの景色しか知らないけどサ?」


「そうか、シッコも元々は街にいたスライムだけどそこまでは知らないか。ええと・・・」


リンガは一般的な知識の範疇で、と前置きをして語る。


現在の人口は約30万人弱、中央、北西、北東、西、南、東の6つのエリアに分かれていて中央の首都には5万人、他の領都には2万人が暮らしており人口の半分は大都市内に住んでいることとなる。人口は減少傾向で中小の、特に小さな場所の悪い村落は放棄が進んでおりマナの濃い場所への一極集中が見られる。

このリゾトニアはかつてマナの枯渇で故郷を追われた三目族や長耳族が中心の集団が見つけた土地であり、国を作ってからも民主的な議会制で運営されていた。

しかし、オドの濃度上昇による影響がついに及んでくるとこれまでは地形的に便利という理由で作られていた多くの街でマナ不足が生じ、生活に大きな影響が出てきてしまう。勿論それらは徐々に現れていったのであるが、それでも責任の所在などで果断な判断ができず有効な対策は取られないまま薄く広い場当たり的な対応に終始していた。

危機感を感じた軍部がついに蜂起し、政権を掌握。古い都市部の強制放棄とマナが濃い地への機能の移設、特定の場所への支援と再建を目指す集中的かつコンパクトな対策を打ち出しその傘に入れずに犠牲になった者も多いが何とか体制を立て直す。


「これが40年位前って聞いているよ。いまでもトップは軍隊だし、ある程度の規模の街とかには駐留する基地もある。」


「ふむ、人口の減少、一極集中に軍事政権か。トップの定まらない民主制は責任をとる者がおらずに衆愚政治となり緊急時に弱い面もある・・・しかし、軍がいるのであれば昔は別の国と戦争でもしていたのかな?」


「ん?昔のことはあまり知らないけど、多分違うかな?他にもマナがある場所を狙ってくる集団への備えもあったんだろうけど、どちらかと言えば魔獣対策だね。今も軍は『ゲート』から来る魔獣の対応をしているよ。」


「む?ゲートとは何かな。」

「ワタシもしらなーイ。」


「ああ、ゲートも忘れてるのか。うーん、簡単に言うと他の場所どうしを繋ぐ施設だね。ボクも元々はゲートを通ってこの国に来たし、他の国にもゲートを通って行ったこともあるよ。マナを流すと一瞬で別のところまでつながるんだ。」


「なんと!それは何か乗り物では無く?」


「え?当たり前でしょ。」


エンドの脳裏にはワープ装置という単語が浮かぶ。そしてそれが中々現実味がない存在であるという印象が強い。しかし現実には当たり前のように使われているのであれば、疑うべきは自身の頭だと改めて感じた。


「・・・そうか、そういうものなのか。それでは我々が遭遇したファング達もゲートから来ているのかな?」


「うーん、魔獣は普通に暮らしているのもいるからそこは分からないな。ただゲートを通ってくる奴はずる賢くてかなり危険なものも多いらしいよ。もちろん元々住んでいる魔獣でも危険なのはいるけど。」


リンガはチラリと人の形をしたスライムを見る。極限状態での複数個体の合体、そして過剰とも言えるマナの補給があったとはいえ、襲ってきたファングを簡単に返り討ちにするスライムなどは一般的には異常で、そして危険な存在であった。


「ンー?」


視線に気が付き間の抜けた声を出すシッコを見て、それでも知識と理性の片鱗を見せ、しかして裏表無くエンドに懐く姿を思い、リンガは小さく笑った。





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