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1-20 過負荷

「うわッ!アレ?ここはドコ?ワタシはダレ?」


2人が暫く待っているとシッコは意識を取り戻し、ぐにゃぐにゃと人の形を取り声を上げた。


「ふむ、ここは先程と同じ街道の上だ。そして君はシッコというスライムだ。体は大丈夫かね?」


「いヤ〜、何か凄いビビビっとキテ、コロリ、だヨ!結構マナは溜まったシ変なトコもないシ・・・ちょっとクセになりそうだけドー、うーんやっぱきついっス」


「む?リンガ、マナの補充というのは危険を伴うものなのか?」


エンドの問いにリンガは少し思案し、答える。


「ううん、そんなことは聞いた事がない。でも、エンドにマナを補充してもらう時にはゆっくりやってもらっているけど・・・その、角とかは敏感だからなんだよ。だからあまり一気にマナを入れられるのはかなり感覚的には大きな衝撃があるかも知れない。」


なるほど、とエンドは頷きつつも何か思いついたように唐突な提案をする。


「ふむ、では試しに今度リンガにやってみてもいいかな?」


「何でさ!人の話聞いてた!?」


「いや、ただの興味本位だ・・・感想には個人差があるかも知れない。」


「いやいや、絶対止めてよね!」


「ンー、それは・・・やれってことかナ?」

「なるほど、記憶の無い私には分かりかねるがこれはフリというものか?」


「フリじゃないよ!なんで仲がいいの!?」


どこか息が合っているエンドとシッコを指さしリンガは怒鳴る。


「すまない、まあこれは冗談として」

「エ?冗談だったノ?」

「うむ。」

「アッハイ」


「・・・エンドが言うと冗談にホント聞こえない。なんか嬉しそうだけどさ、ほどほどにしといてよ。」


エンドはそう言われ、自身のテンションが上がっていることに気が付く。


「ああ、そうか。はは、私は力に対抗できる手段を得たことに感動しているのか。」


旗を握りしめエンドは思う。単純な力では敵わない女性や魔獣に対し、それが致死的なものでなくとも対抗手段があるということはとても力強いものであると。勿論力は全てではないし、武力以外の多種多様な力があるのも知っている。だが、武力、ありていに言えば暴力が一時的に多くを支配するということは目を逸らしてはならない一つの真実であった。


「ふふ、では旗を使ったこの技を『電流ビクビク棒』とでも名付けようか。」


「ネーミングセンス悪っ!!しかも何で電流なのさ?」


「いや、また急に言葉が出てきてな・・・電気というのは、使われているのかな?」


エンドは自身に電気とは非常に有用なものであるという、よく分からない先入観があると自覚していた。しかし、これまで見かけた建屋などでそのようなものがあった形跡は見られなかった。


「んー、雷とか静電気とかはそりゃあるけど、リゾトニアとかボクの居たところだと、そんなに使ってないかな。電気を出せるマギアはあるらしいから何か用途はあると思うけど・・・ああ、そうだ!マギアでもマナの流し過ぎで動きがおかしくなる事があって、たしか過負荷、『オーバーロード』って呼ばれているらしい、どうせならそういう名前にしなよ。ん?でも名前って必要なのかな。」


「いやはや名前は必要だよ!私は格好をつけたいからね。ふむカフカか、起きたら虫になりそうな気分だが・・・『オーバーロード』はいいな。支配者になれそうな響き、さすがはリンガだ。」


「は?なんで虫?支配者?いや、あの電流なんちゃらに比べればどれもマシだと思うけど。」


「ン~、ワタシは嫌いじゃないけド、ホントにビクビクしたしサ。」


「こっちもネーミングセンスは無さそうだね・・・でも、そんなにマナを集めたらかなり目立つからあまり人前ではやらないほうがいいかもしれないな。」


「ふむ、善処はしよう・・・が、少し手おくれの様だな。」


「え?」


エンドはにじり寄る多くの気配を感じていた。何百とは言えないが、少なくとも十は超えていることは確実だろうと思う。先ほどのマナの発散を感じ、付近のゴーストが一斉に近づいてきていた。


「ちっ!ゴーストか、この辺りにも結構いたんだね。」


「ごーすと?あ、あのくろいモヤモヤ!いやだヨ~アレマナもっていくんだからネ!早く逃げヨ!」


険しい顔をする2人をエンドは宥め、そして自分に一つの方法を試させてほしいと頼み込む。シッコの方はかなり難色を示したが、一方で短い時間の中でもリンガはエンドの意固地な部分を分かり始めており、そしてまたゴーストへの哀れみも知っていたために渋々了承したのであった。







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