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ショートショート11月〜4回目

私が食べているもの

作者: たかさば

私の朝ごはんは、プロテイン。


息子が筋肉量アップのために買い込んだ、プリン風味の甘ったるい粉。

水に溶いて、シェイクして、グビリと飲んで…240kcal。


私の10:00のおやつは、おまんじゅう。


旦那が仕事先でもらってきた、黒糖の36個入り。

毎日六個ずつ食べて、今日でようやくなくなる。


私のお昼ごはんは、カップラーメン。


娘が会社の福引で当てた、台湾ラーメン…ひと箱24個入り。

毎日食べているのに、まだ5個も残っている。


私の15:00のおやつは、イチジク。


旦那が土曜日に町内会の会議に行った時にもらってきた、ご近所さんの庭で採れた新鮮果実。

痛んできたから、そろそろ食べ切ってしまわないと。


私の晩ごはんは、ひき肉で作ったねぎたっぷりのすき焼き風煮鍋、ポテトサラダ、炊き立てのご飯……と思っていたのだけれど。


……お弁当箱を三つ洗っている隙に、なくなってしまったのよね。

食欲旺盛な家族がいると、どれだけたくさんおかずを用意しても、ご飯を炊いてもすぐになくなってしまうのよね。


食欲の秋だもの、仕方ないわね。


私が食べたいと思って買った、秋の新作の菓子パン。

私が食べたいと思って多めに作った、お弁当のおかず。

私が食べたいと思って多めに作った、大好きなメニュー。

私が食べたいと思って多めに炊いた、新米。

私が食べたいと思って買っておいた、美味しそうな大きなバナナ。

私が食べようと思って買っている、ちょっとお高いヨーグルト。

私が食べないといけないなと思って買ってきた、大粒の納豆。


私が食べたいものは、全て家族のおなかの中へ。


粉っぽくて甘ったるい、プロテイン。

旦那も家族も、みんながキライな黒糖。

味の濃すぎる、食べ慣れないカップ麺。

甘くなくておいしくない、食べ慣れない果物。


私が食べたくないものは、すべて私のおなかの中に。


捨ててしまうという選択もあるけれど…もったいないじゃない?

食べないで捨ててしまう事に嫌悪感を覚えてしまうから…仕方ないじゃない?


本当は、食べたい朝ごはんがあるのだけれど。

本当は、食べたいおやつがあるのだけれど。

本当は、食べたいお昼ごはんがあるのだけれど。

本当は、食べに行きたいおやつがあるのだけれど。

本当は、食べたいと思っているのよ、晩ごはん。


私が我慢すれば丸く収まるなら……我慢しちゃうじゃない?


焼きたてのトーストにバターとイチゴジャムを塗って、淹れたてのコーヒー。

市内でちょっと話題になっている和菓子屋さんのかわいい練りきり、ちょっといいお抹茶。

もっちり生麺を使ったオリジナルの和風ツナパスタと、じゃがいものポタージュ。

近所にできた、飲茶屋さんのおやつセット。

自分の食べたい、自分が作った、とびきり美味しいメニュー。


いつかは食べられるのだから…今食べなきゃいけないものを優先させないといけないじゃない?


―――これ食べといて!

―――これ食べてくれない?

―――これ食べるよね!

―――これもらっていい?

―――これ食べていい?

―――これおいしいね!


家族に頼まれたら、聞かれたら、喜ばれたら…微笑むことしかできないじゃない?


―――これキライなんだよね…

―――これおいしくなかった…

―――これ捨ててもいい?

―――これもっと食べたいな…

―――これ食べたらなくなっちゃうよね…

―――これ残しておかないとダメだよね…


家族が微笑んでくれるなら…いいよって言ってあげたいじゃない?


……いつか、食べたいものを、食べたいように、好きなだけ食べられますように。


私は、いつもの願いを思い浮かべながら……。


ご近所さんにもらったきりたんぽを、具のないすき焼き鍋の中に入れて、コンロの火をつけた。


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