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恋人に子供が出来たらしい

書き貯めが出てきました。

宜しければ...

[由美香が妊娠したらしいわ]


 短く書かれた一文。

 うん、理解できない。

 由美香って俺の彼女、内藤由美香の事だよな。

 いきなり届いた手紙に書かれていた内容がこれで、しかも由美香本人からじゃなく、幼馴染みからなんて..


「ど...ど...どういう事?」


 手紙が手から滑り落ちる。

 覚えが無いかと聞かれりゃ、覚えが...


「ねえよ!!」


 由美香と付き合って3年、確かにする事はして来たが、ここ1年何にもしてねえっての!!


「落ち着け、これは何かの間違いだ...栞の悪ふざけに違いない」


 手紙の主は幼馴染みの清水栞。

 こいつは昔からこんな悪ふざけを...


「した事ねえじゃんか!」


 第一、栞に何のメリットも無い。


「ま...先ずは由美香に連絡を...」


 震える手で由美香の携帯番号を発信する。

 明るく『何それ』って返してくれる....


『お掛けになった通話はお繋ぎ出来ません...』


「...マジかよ」


 無機質な音声に携帯を落としそうになる、

 大学進学の為、二年前に上京して由美香と遠距離恋愛になったが、最近まで連絡はマメに取り合っていた。

 最後に連絡したのが...


「...一週間前か」


 ラインの会話記録は一週間前で終わっていた。

 他愛も無い会話だ。

 ようやくテストが終わるから、来月には帰ると書いて、楽しみで終わっていた。

 直接通話で話したのは二週間前。

 その時だって、異変は無かった...よな?


 そういや最近素っ気なかった気もする。

 電話しても忙しいとかで、ラインも直ぐ既読は着かなかった。

 こっちもレポートやバイトが忙しくて、気にしてなかった。


 いや、本当は怖くて聞けなかったんだ。


 由美香からの告白に付き合いだした俺は、いつの間にか胡座をかいていた。

 フラれる筈が無いと、だから...

 震えながら由美香にラインを送った。


[連絡下さい]


「何で?」


 画面には、まさかのライン拒否。

 こんは馬鹿な事って、あるの?


「...栞に聞くか」


 こうなっては栞から直接聞くしか無い。

 他の友人に聞く選択肢は考えられない、違ったら大変な事になる。


「あ、もしもし栞?俺だけど」


『ああ、孝太?』


 あっさりと電話は繋がった。


「おい、あの手紙って」


『もう着いたんだ』


「ああ、さっきな」


 栞の声から緊張感は感じられない。

 やっぱりイタズラか?


『本当だよ』


「ゲッ!」


 余りに無慈悲な栞の言葉に目の前が真っ暗になる。

 そんな事をアッサリと...


『とにかく帰って来なさい、直接確認すれば良い事だから』


「お...おい!」


『それじゃ帰る時、連絡を頂戴』


「ま、待てって!!」


 通話の終わった電子音が流れる。

 頭が混乱し、何をすれば良いのか分からない。


「簡単に切りやがって」


 とにかく帰って確認するしかない。

 一応、家族に連絡を入れる。

 もちろん由美香の事は言わない、ただ明日帰るとだけ。


[そうか]


[いつまで居るの?]


[土産を待ってるよ]


 能天気な返事が返って来た。

 妹に至っては、土産の指定まで書いてあったので、由美香の一件は知らないのだろう。


 バイト先に急用が出来たから3日程休むと連絡を入れ、大学の友人達にも連絡し、急いで帰郷の準備をした。


 3ヶ月振りの帰郷。

 電車で3時間、実家のある駅で降りる。

 長閑なニュータウンの駅。

 だけどまだ、ここからバスに乗り換えて30分掛かる。

 親父が家を買ったのはバブル末期だったからな。


「次のバスは...マジかよ1時間先じゃんか」


 休日の昼とはいえ、これはキツい。

 タクシーも考えたが、金が勿体無い。


「おい山口!」


「お、なんだ修二か?」


 聞き覚えのある声に振り返ると、友人()()()石井修二が俺を睨んでいた。


「お前...よくも今さら!」


 いきなり突っ掛かって来る修二に、素早く身体を躱す。

 勢い余った修二が派手に転ぶ、それはコントを見るようだった。


「逃げるな!!」


 怒鳴りながら立ち上がる修二だが、逃げてない、避けただけだ。


「石井君止めなさい!!」


 後ろから修二を止めたのは清水栞。

 彼女が俺の幼馴染みで、由美香の事を手紙に書いたんだ。


「よう、栞」


「ひ...久しぶりね孝太」


 栞が赤い顔で笑う。

 前回は栞と会わなかったので、半年振りか。

 しかし、随分と綺麗になったな。

 前から美少女だっだが、今は髪も肩まで伸ばして益々綺麗だ。

 高校時代はショートカットだったのに。


「色目使ってんじゃねえ!」


「スマンな」


 色目なんか使ってないが、弁明するのも面倒だ。

 栞は修二の彼女だった。

 まだ続いていたのか。


「...お前よくも由美香を」


 まだ何か言ってやがる。

 どうやら由美香に子供が出来たって話を知ってるらしい。

 栞からか?そうじゃない、由美香とコイツ(修二)は幼馴染みだから直接だろう。


「落ち着きなさい」


「そうだぞ」


 栞と一緒に興奮する修二を宥める。

 だからコイツは苦手なんだ。

 昔から思い込みが激しく、人の話を聞きやしない。


「ふざけるな!」


 まだ言ってる、なんだってんだ?


「なんで栞は庇うんだ!」


「だって孝太は何も言ってないでしょ?」


 確かにそうだ。

 まだ会話らしい会話もしてない。


「由美香の事なら俺は知らんぞ。

 俺の子だってアイツ(由美香)は言ったのか?」


「ふざけるな!お前以外誰が居る!!」


「あのな...」


 由美香が言った訳じゃないのか。


「お前...責任も取らねえで」


「だから、身に覚えが無いって、最後が1年前だから」


「嘘つけ3ヶ月前に帰って来ただろうが!」


「ダメだこりゃ」


 最後にシタのは1年前だと言っても通じそうに無い。

 それにちゃんと避妊してだぞ。


「どうした栞?」


 栞は益々顔を赤くしてる。


「生々しい会話は止めて...」


 おっと、こりゃ不味かったな。

 サバサバした印象の栞だけど、ウブな所は変わらない。

 でも修二とヤることやってるだろ?

 知らないけど。


「お前また栞を!」


「スマン」


 人の彼女にシモの話は不味かったな。


「ちょっと石井君、さっきから大概にしなさい」


「え?」


 栞の雰囲気が一変する。

 その瞳は冷えきり、怒りが滲んでいた。


「もう私達半年前に別れたでしょ」


「そうなの?」


 そんな話初めて聞いたぞ?

 そういや、さっきから栞は修二を石井君って呼んでたな。


「いや...だけど」


 修二に勢いが消え失せる。

 怖いもんね、俺も由美香と付き合った当初に、何度かあの視線喰らったし。


「まったく...男って直ぐサカるから、だから嫌なのよ」


「「...はい」」


 なんだか俺まで責められてない?


「行くよ」


「はい?」


「由美香の家よ、ちゃんとケリを着けなさい」


「そ...そうだな」


 凄い気合いだ、ここは黙って従おう。


「待て!由美香は誰にも会いたく無いって」


 なんで修二は止めるんだ?

 誰の子か知りたくないのか?


「だからよ、由美香の話は要領を得ないし」


「...分かった」


 由美香を妊娠させた相手が俺なら、向こうの両親や家の家族が黙ってる筈無い。

 それは間違いないだろう。

 もしかして、由美香は誰かに乱暴を...

 それなら辻褄が、でも誰かに言うだろ?

 例えば修二とかに。


 渋る修二を栞の車に押し込み、一路由美香の家に向かう。

 後部座席の修二は項垂れ、何やらブツブツ言ってるが、助手席の俺は聞こえないフリをした。

 なにやら展開が見えて来たのだ。


「着いたよ」


「ありがとう」


 栞の運転する車は由美香の家に到着する。

 懐かしい気持ちにはなれなかった。


「おじゃまします」


 玄関で挨拶するが、一向に返事が返って来ない。


「由美香の家族は留守よ」


「そうなんだ?」


「ええ、由美香の両親は遠慮して貰ったから」


「何でそんな勝手な真似を...」


 呻く修二だが、居た方が良いのか?


「入るわよ」


 栞が由美香の部屋をノックする。

 しかし返事が無い。


「よう」


 扉を開けると由美香はクッションを抱え座っていた。

 3ヶ月振りに会う由美香は疲れきった顔で目の下にはどす黒いクマが浮かんでいた。


「孝太...来たんだ」


「そりゃ来るだろ」


 テーブルを挟み、直に腰を下ろす。

 視線の先に由美香のお腹が目に入った。

 目立って膨らんでいないようだけど。


「何ヵ月だ?」


「.......」


 由美香は何も言わず、うつ向いた。


「何ヵ月なんだよ」


 もう一度聞く俺に由美香は身体を震わせた。

 なんだか尋問してるみたいだ。


「おい孝太!」


「ちょっと黙れ」


 由美香の隣に座る修二を睨み付ける。

 いい加減にしろよ。


「3ヶ月に入った所...」


「そっか...」


 なるほど、つまりはそう言う事か。


「相手は修二でしょ」


「おい栞」


 それは俺が言うセリフだろ?


「...うん」


 由美香はクッションに顔を埋めて頷いた。

 予想通りか。


「おい由美香、俺の子じゃないって...」


 予想外だったのは修二の反応だ。

 とても演技に見えない。

 そんな腹芸も出来る奴じゃないし。


「怖かった...孝太と別れるのが...」


「あのな...」


 由美香は余りに馬鹿げた言い訳を口にする。

 修二とセックスした時点でアウトだ、なんかズレてるな。

 二人とも、こんな奴だったか?


「孝太は...忙しそうで、私寂しくって...」


 まだ何か言ってるが、聞くに堪えん。

 寂しければ身体を許すのか?

 ましてや、修二は栞の彼氏だぞ。

 半年前に別れていたにしても。


「バ~カ」


「栞?」


 沈黙を破ったのは栞だった。

 軽い言葉と裏腹に、その表情は怒りに満ち溢れていた。


「寂しい?アンタのした事は最低だよ!」


「だな」


 浮気に妊娠、救いようがないな。


「だって」


「おい栞...」


 バカ二人が何か言ってる。もう興味もない。


「人の名前を馴れ馴れしく呼ぶな!!

 お前なんか最初から由美香狙いだったじゃないか!

 その癖、私にヤらせろ、させろって、見境い無いサルに身体を差し出す訳ないでしょ!

 ふざけるな!!」


「...そんな、俺は」


 核心を突かれたな、報いを受けるんだ。


「どっちが誘ったか知らないけど、二人共最低ね」


 そう言うと栞は立ち上がった。


「おい待て栞!」


「来ないで!」


 部屋を飛び出す栞、修二と由美香は追いかけようともしない。

 由美香は栞と親友だったろ?

 修二は栞の彼氏じゃ無かったのかよ。


「お前ら...本当、最低だな」


「...ごめんなさい...ごめんなさい」


 由美香は拳を握りしめ項垂れる。

 その涙に何も感じない。

 冷めるってこういう事なんだ。


「修二」


 もう会う事も無いだろう。

 最後に一言だけ言わして貰うぞ。


「責任は取れよ」


「...うるさい...言われなくても」


「じゃあな、サヨナラだ」


 項垂れる二人を残し、由美香の家を飛び出す。

 栞は停めていた車に乗り込もうとしていた。


「待ってくれ!!」


「来ないでって...言ったじゃない」


「そう言う訳に行かないだろ」


「もう...」


 栞の腕を掴む。

 震える栞が振り返ると、目に涙を溜めていた。


「知ってた?私の初恋って孝太だった事」


「...ああ妹から聞いた」


「そっか...口が軽いな」


 妹がいつか言っていた。

『栞ちゃんは無理してる。本当は兄さんが初恋の相手で、今も好きなんだよ』と。

 冗談だと聞き流してしまった。


「すまん」


「どうして謝るの?」


「いや、だから...その」


「謝られたら一層惨めだよ」


「ごめん」


 でも謝るしか出来ない。

 俺はなんて情けない奴なんだ。


「知ってたんだ、修二はずっと由美香を諦め切れないって。私だって孝太を...」


 由美香は修二を単なる幼馴染みだと言っていた。

 たが、修二はそうじゃ無かった。

 修二は由美香に距離が近いと思ったが、余り気に留めなかった。

 由美香の真実は分からない。

 だからって...栞をこんな目に...クソ!!


「ねえ、私ってなんなの?」


 涙を流す栞に言葉が見つからない。


「こんなになって、まだ孝太を諦め切れないのよ?」


「そうか...」


 知らなかった、では済まされない話だ。


「責任とって」


「責任?」


「うん...私を幼馴染みじゃなくって...お願い」


「それはつまり...」


 恋人って事か?


「直ぐじゃなくて良い、これから、そう意識して欲しいの」


「...分かった」


「本当?」


「ああ、今まで距離が近すぎて...直ぐには、だけど」


 いつも栞は近くに居た。

 ずっと意識しなかったと言ったら嘘になる。

 お互い踏み出せ無かったって事か。

 だけど、これからだ。


「嬉しい!なら早速行こ」


「どこに?」


「孝太の家よ、みんな待ってるから」


 待ってるって、俺の家族が?

 そんな事一言も聞いてないぞ。


「へ?」


「ほら早く」


「元恋人に子供が出来て、俺は新しい恋人が出来たって訳か....」


 車に乗り込む栞の背中に呟いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 選ばれなかった男と両方を読み比べると栞も大概というか、計画的にうまく嵌めて孝太をゲットしたようにも読める。 結局、修二と栞の関係がうまく行ってれば違う未来があったろうに、互いによそ見したまん…
[一言] 書きたい内容は理解できるし、文章も破綻してない。 ただ、できる限り短めにして読みやすいように配慮した結果、キャラが勝手に動いている印象ではなく内容に沿ってただ動いてる印象が否めず、せっかく…
[一言] 中身がない。 あった事実をそれっぽく書いてるだけ。 しかも妊娠発覚してるのにお互いの両親が全く動き見せないのもおかしい。
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