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☆6


黒猫は虹色のカケラを見つめながら、

大きな声でこう言った。


「蝶々さんの黄色とオレンジ、

 うさぎさんの赤と緑、

 小鳥さんの青と水色。

 見つけた星のカケラと同じ色のカケラを

 みんなに届けてあげてください」


えっ?

それがねがいごとなの?


シロミは拍子抜けしそうになった。


だって、もともとかなえたい願いが

あったから、虹色の流れ星のカケラを

探しにきたんじゃなかったの?


それなのに、

さっき会ったばかりのコたちの、

願いを叶えようとするなんて。


黒猫はじーっと手のひらのカケラを

みつめつづけている。

小鳥たちも黒猫を見守っているようだ。


いいわ、わかったわよ。

その願い、叶えてあげようじゃないの。


シロミは魔法の力で、

黒猫のねがいごとをしっかり

演出してみせようと心に決めた。


ありったけの集中力と想像力を働かせ、

虹色のカケラを黒猫の手から

空中へ浮かび上がらせる。


そして太陽の光を通し、

きらりと最後のかがやきを

印象づけた次の瞬間。


パリン!


ようしゃなく音をたて、

虹色のカケラをふたつに割った。


それからすぐに、一色ずつ色の違う

七つの小さなカケラを、

閉じ込めていたガラスから解放させる。


まるで今生まれ出たかのように、

しばらくはふわふわと宙に浮かばせた。


黒猫も小鳥たちも、

この不思議な光景に

目を見張って眺めている。


よぉ~し。いよいよ最後の仕上げだわ。


シロミは集中力を研ぎ澄ませると、

宙に浮かぶ七つのカケラを、

それぞれ必要としているところへ

飛び立たせた。


黄色とオレンジは蝶々のもとへ。

赤と緑はうさぎのもとへ。

青と水色は

この場にいる小鳥たちの足元へ。


「うわあー、よかった、ありがとう!」


小鳥たちは声を上げて喜んでいる。


ふーっ……つかれたぁ。


何とか仕事をやり遂げたシロミは、

ほうっと息を吐く。


見ると黒猫は、にこにこと嬉しそうだ。


ふーん。

もともと自分のねがいごとが

あっただろうに。


ほかの誰かの願いを優先しちゃって、

良かったのかしら?


小鳥たちは黒猫にもう一度お礼を言うと、

家に帰って行く。

小鳥たちに手を振る黒猫に、

シロミはきいてみた。


「本当に、これでよかったの?」


すると黒猫は、


「うん!」


すっきりした顔でうなずく。


へえ……そうなんだ。

まあ、ほかの誰かの願いを

叶えてみたいというのであれば、

私もおんなじだったけどね。


自分の魔法の力を試してみたい……。


去年、母親の話を聞いたときから

ずっと思っていたこと。


それをやっとかなえることができて、

シロミは満足だった。


ひとつ、紫のアメジストのカケラだけが

地面の上に取り残されている。


虹色の素材として必要だったけど、

けっきょく使わなかったわね。


「ひとつ、カケラが残っちゃったわね」


シロミがそうつぶやくと

黒猫はカケラを手に取り、


「これは、きみのだよ」


とシロミに差し出した。


「え? 私の?」


「うん、だって…」


そこでシロミは黒猫に

まじまじと見つめられてどきっとした。


ああ、なんだ……。

私の目の色に気がついたのね。


シロミの瞳は紫色。

カケラと同じ色をしている。


だからこれは私のものっていうわけね。


でもそれを言うならおんなじだ。

この黒猫だってきれいに澄んだ、

紫色の瞳をしている。


ほんとにお人好しなんだわ……。


シロミはこの黒猫と、

もっと話がしてみたくなった。


本当は何を

お願いするつもりだったのだろう?


「じゃあこれは、

 私たちのものにしましょうよ」


シロミはカケラを手に取り、

黒猫に提案した。


「そこの木の下に埋めておくの。

 それでときどき様子を見に来て、

 ここでおしゃべりをするの。

 ……どうかしら?」


シロミはそう言いながら、

胸がどきどきしてきた。


私ったら何を言ってるのかしら。

もし断られたらどうしよう……。


だけどシロミの心配をよそに、

黒猫の頬はだんだん赤く染まっていく。


そして今日一番の笑顔をみせながら、

うれしそうにこう言った。


「じゃあぼくたち、友だちになろうよ」


虹色の流れ星。

そのカケラを見つけると

ひとつだけ願いがかなうという。


これはシロミと黒猫の出逢いの物語。



~おしまい~

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― 新着の感想 ―
[一言] 『虹色の流れ星』の白猫さんサイドのお話ですね! なるほど〜、そうだったのですね。 見つからないなら、作ればいい。実は最初からそういうものだったのかもしれないと思いました。(*´Д`*) 木の…
[良い点] 前の作品で途中から現れた白猫のことがよく分かってよかったです。 シロミは最初は自分の力を試したくて、そのうちかけらをめぐるみんなや黒猫のことを思うようになって、願いを叶えようとした感じがし…
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