☆5
黒猫のあとを追って森に入ると、
今朝飛んできた二羽の小鳥が、
大声で泣いていた。
青と水色のカケラを見つけたものの、
うっかり湖に落としてしまったという。
あーもうっ、
何てことをしてくれるのよ!
シロミが絶望的な気分になりかけたとき
やっぱり黒猫が元気良く言った。
「ねえ、いっしょに探そうよ。
ぼくも手伝うからさ」
「えっ、いいの?」
小鳥たちは驚いて聞き返したが、
「うん!」
黒猫はにっこり笑ってうなずいた。
黒猫と小鳥たちは、森を出てまずは湖へ
行ってみることにしたようだ。
シロミも忍び足であとを追う。
そして……。
そろそろ、これの出番が来たようね。
肩からさげたポシェットから
自作の虹色のカケラを取り出すと、
森を抜け、すぐそばに立つ、
若い木の下にそおっと置いた。
黒猫たちは、広くて大きい湖を前に、
呆然と突っ立っている。
頃合いをみて、
シロミは声をかけることにした。
「あなたたち、
ここで何をしているの?」
「えっと…ぼくたち、
流れ星のカケラを探してるんだ」
「ふーん、色は?
何色のカケラを探しているの?」
小鳥たちは、青と水色のカケラを
探していると言い、黒猫は少しだけ、
小首をかしげたあとでこう答えた。
「ぼくは虹色のカケラを探しているんだ」
やった!
これでようやくお願い事が聞けるのね。
シロミは大きな目を細めてほほえんだ。
「それならあそこの木の下にあったわよ」
「え!?」
黒猫はシロミが指差した木へ駆け寄ると、
虹色のカケラを手に取り、
太陽に透かしてみせる。
「きれいだなあ」
そりゃあそうよ。
私が一週間もかけてつくったんだから。
「それで、あなたは何をお願いするの?
何か願いごとがあるから、
虹色のカケラを探してたんでしょ?
それなら今ここで、
お願いしてみればいいんじゃない?」
赤にオレンジ、黄色に緑、
水色に青に紫色。
なないろにかがやく虹色のカケラ。
シロミはカケラをみつめる黒猫に、
「さあ早く。あなたの願いを言ってみて」
答えるようにうながした。
一体何をお願いするのだろう?
シロミはわくわくしながら、
黒猫の言葉を静かに待った。
「ぼくのおねがいごとはね………」