☆2
森を出て川沿いの小道を進むと、
マリーゴールドが咲きこぼれていた。
二匹の蝶々は花から花へと飛び移り、
楽しそうにミツを吸い始める。
あの二匹、仲が良さそう。
カップルかしら?
シロミがそう思っていると、
「おや?」
「あら?」
黄色とオレンジ、
二匹の蝶々が同時に声をあげた。
「カケラがないっ!」
ついさっきまで抱えていた星のカケラ。
それが今は、どこにも見当たらない。
どこかに落としてしまったのだろうか。
「………」
蝶々たちはがっかりしている。
カケラの色は黄色とオレンジ。
マリーゴールドも同じ黄色とオレンジ。
探しだすのは、むずかしそうだ。
困ったわねえ。
さてどうしたものか……と
シロミが考え始めたとき、
通りの向こうから一匹の黒猫が、
近づいてくるのが見えた。
シロミは急いでしゃがみこむと、
お花畑に身をひそめる。
黒猫はなんだか楽しそうだ。
♪あるかな、あるかな、星のカケラ。
それも虹色の流れ星の。
ねがいごとがかなうといいな♪
スキップをしながら歩いてくる。
そこへ二匹の蝶々がふらふらと、
落ち着かない様子で横切ったので、
黒猫は立ち止まると声をかけた。
「どうしたの?」
「この先の森で、
星のカケラを見つけたんだ」
黄色の蝶が答えると、
「すごいや、
ぼくも森へ探しに行くんだよ」
黒猫は目をかがやかせる。
だけど蝶は、
「ボクたちの結婚祝いになるねって
喜んだばかりなのに、そのカケラを
どこかに落としてしまったんだ……」
声のトーンを落としてつぶやいた。
オレンジの蝶も悲しげに、
「どこにいっちゃったのかしら……」
と言うと二匹はそれきり
うつむいてしまった。
なるほど。
だからカケラを見つけたとき、
あんなにうれしそうにしていたんだ。
それなのになくしてしまうなんて、
がっかりするのも無理はない。
シロミは蝶々たちが気の毒になった。
すると……。
「ぼくもいっしょに探してあげる」
黒猫が明るい声で言ってきた。
「もし見つけたら届けてあげるよ」
胸を張り、にっこり笑顔も見せながら。
二匹の蝶々も元気を取り戻したようで、
「ありがとう」
と明るく返すと黒猫を見送った。
黒猫は森を目指して歩きだす。
どうやって探すつもりなのかしら……?
黒猫のことが気になったので、
シロミはこっそりあとを追うことにした。