(7)スピークイングリッシュ?
俺たちはゆっくりと街に向けて進んでいた。
山の峠からでは某テーマパークのように見えたが、近くに来ると巨大な城砦都市である。
これは日本じゃないね。
「おい、なんか今度は魔法使いみたいなのが来るぞ!」
ヴォイテクの合図に従って岩陰に隠れる。
なんでわざわざそんなことするかって?
絡まれたくないからだ。
ここまで来る途中でもたくさんの騎馬集団などとすれ違いそうになった。
だがあまり関わりたくないのでその度にこそこそ隠れているのである。
というか絡まれたらめんどくさいでは済まない気がするのだ。
俺の勘がそう言っている。
「魔法使い?ってどんなのだ?」
「えーと…」
ヴォイテクがVTWから送られてくる画像を確認しながら答える。
実は突発的な接敵に備えて俺たちはVTWで常に上空から警戒をしているのだ。
「お姫様みたいな格好した銀髪縦ロールが1人、地図みたいなものを持った魔導師が1人、剣持ってるコワソ〜な娘が1人…全部で3人だ」
「またなんかヤバそうな連中だな…」
ん?今銀髪縦ロールって言ったか?
そんなん現実にまじでいるんだ。
だんだん声が聞こえてくる。
相当賑やかな様子だ。
「Shera, ɪtiː ˈɑːɪəliː ɛɛfɪˈtiˈɛs əˈrɑʊnd iɪʧɪə」
「ʃɪpi əˈʤaɪɛɛɛn」
「ʤju iɪʧævaɪ tu ʧɛkeɪ ɪti, ʤju duʊnt noʊʊ」
「な、何語だ…?」
聞こえる声が聴き慣れぬ言語で多少動揺した。
だがヴォイテクは全く動じていない。
「うーむあの見た目日本人じゃねえな…」
あ、理解が追いついてないだけだった。
俺とヴォイテクは画面に見入る。
その時だった。
「ˈʃɛɛləɑr! ðɛɑr ɑɑr ɛsʌɛm streɪɛnʤ ˈɪɛnˌɛsɛkts!」
画面に唐突に人の顔が映る。
え、VTWって飛んでなかったっけ?
「なんだこりゃ?こいつ空飛んでやがるぞ!まさかVTWを捕まえる気か?」
よく見れば背に羽を持っている。
これはアニメでよく見る有翼人種…?
有翼人の手が伸びる。
「やばいっ!緊急回避軌道!」
ヴォイテクが叫ぶ。
「任せろヴォイテク、アクロバットなら得意だ!」
俺はゲームさながらにスマホのコントローラーを動かす。
宙返りから螺旋飛行などあらゆる軌道で回避を試みた。
「おい、全然振り切れないぞ!」
これでもかと俺はVTWの強力な6機プロペラを最大出力に上げる。
そして鋭いカーブ軌道を描き、何度も有翼人の手を躱そうと上下に動かす。
しかしなかなか相手を引き離せない。
第二次世界大戦時のプロペラ機同士の戦闘は自機が有利な位置、つまり相手の背後につくためにグルグルと2機の戦闘機が回ることがあったそうだ。
これを日本軍では巴戦、アメリカではドッグファイトと呼んでいたが、やがてVTWと有翼人はちょうどそんな形でグルグルと回っていた。
「勇輝!いつまで回る気だよ!バッテリー上がっちまうじゃねえか」
「だってこいつ離れねえんだよ!」
俺は躍起になってVTWを操る。
「今とは逆方向に振ってみろ!」
ヴォイテクの指示通りジョイスティックを逆方向に動かした。
「だめだ、ついてくる…」
「やり方が悪いんだよ貸せ!」
「あ!お前!」
わちゃわちゃと喧嘩が始まった、その時である。
岩の横から剣を下げた女が現れた。
「…!」
さっきから大声で会話していたことが災いして俺たちは見つかってしまったのである。
こんばんはくまくまです
拙い文章ですが読んでいただきありがとうございます
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10月17日(日)の23時に次回投稿を予定しています
今後ともよろしくお願いします