(4)異世界に転移する確率を求めよ。但し天変地異が発生するものとする。
ある日、ヴォイテクが面白い記事を見つけてきた。
「おい勇輝、これ見てみろよ。面白そうだぞ」
「どれどれ」
最近は利用者の検索履歴や閲覧履歴を元に利用者が興味のある記事をスマホのトピック欄に表示するという機能がある。
あの機能はなかなか便利だ。
だが、なんとヴォイテクは記事を見つけると俺が暇そうにしている時に持ってきてくれるのだ。
これは時代の先端のテクノロジーだよね。
俺は謎の優越感に浸った。
それはいいとして、記事の名前はこうだった。
“まるで神隠し!?消えた銅像の行方は?”
ん〜と、内容は面白そうだけどタイトルが微妙なので−1点。
記事によると横浜にある高さ3mの銅像が一晩で忽然と消えてしまったらしい。
銅像付近に設置してあった監視カメラの映像は消える瞬間突然乱れたそうだ。
俺は推理系小説をよく読んでいたので確かにこの事件は興味深かった。
最も推理がそこまで得意というわけではないが。
「監視カメラが乱れたってことは計画的に泥棒がなんかして盗んだのか?」
「いや乱れたのはわずか1.5秒らしい。地上から運び出すのはまず無理だ」
銅像があったのは大きな広場だ。
1.5秒で運び出すのはまあ物理的に不可能である。
「じゃああれだ。ヘリで運び出したとか?」
「いやそれもない。フライトレーダーを見たが消えた当時飛んでたヘリはない」
「ヘリでもないなら一体どうやって…」
像が消えた際の気象は特に異常もなく、突発的に竜巻が発生したという情報もなかった。
となれば人為的な何かが起きたと見るのが普通だろう。
「周辺の状況もまとめて調べてみたんだが、一つ気になることがある」
「気になる事?」
「ああ、消える前後で異常な磁気反応が周辺の複数の機器で確認されてるんだ」
磁気反応、いろんな思考が頭の中を駆け巡っていく。
別に解決のために捜査に協力しに行ったりするわけじゃないけどこういうの考えるのって楽しいよね。
「まさか、リニアモーターカーとかレールガンとか使ったんじゃ?」
「はは。随分面白い発想だが、現実的じゃない」
なぜ銅像が消えたのか誰も明確な答えを出せない。
ゆえに神隠しとは確かによく言ったものだ。
記事のコメントには異世界に飛ばされたのかもしれないという意見まである。
「異世界か、どんなとこなんだろうな。行けるもんなら行ってみたいよなあ」
「いや絶対危ないところだろ。俺はあったとしても行こうなんて思わねえぞ」
確かに行って帰ってこれなかったら意味がない。
そう考えると怖いかも。
異世界なんて妄想や夢の中だけで十分なのだ。
「ん?勇輝、地震だ!5秒後に来る!」
どうやらヴォイテクが地震検知システムの情報を確認したらしい。
こいつ緊急地震速報より有能かも?
「これはちょっとデカいやつだ!」
俺の目は咄嗟にキッチンの方を向いた。
母親は夕飯の支度中である。
「母さん!火を止めて!地震がくる」
言い終わると同時にカタカタと物が揺れ始めた。
理科で習った、初期微動ってやつだ。
「本震まで3秒前!」
「来るぞ!」
本震がいつ来るって分かってると何故かちょっと緊張した。
家全体が大きく揺れ始めた。
我が家ではある程度防災意識が高かったので幸い物が散乱したりすることは無かった。
「結構デカいな。震度は4ってところか?」
「震源は千葉、最大震度は5強だ」
ヴォイテクが確認した情報を伝えてくれる。
最近地震は多いし、正直慣れている感じはあった。
そんなに焦らずに情報を確認していく。
「あれ、なんだ?磁気反応?」
突然スマホの画面が乱れ出した。
ヴォイテクなんかした?って一瞬思ったが違うようだ。
「勇輝!VTWの電源を強制切断しろ!」
俺は言われた通り電源を切った。
地震の影響かどうかは分からないが、ヴォイテクが磁気を検知したらしい。
「ぐわっ!なんだこれ?頭が…」
次の瞬間俺は激しい偏頭痛に襲われた。
おそらく相当強い磁気なのか。
あれ磁気って単語ちょっと前に聞いてたような…気がする。
けどなんだか思い出せない…意識が遠くになっていく…。
俺は頭を抱えたまま気を失ってしまった。
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「勇輝!おい!勇輝!目を覚ませ!」
遠くのほうでヴォイテクの声がする。
そうだ、俺生きてるんだった。
なんとか意識を引き戻していく。
「ああ…ヴォイテクか…今のはなんだったんだ…?」
「おい!呑気な事言ってられる状況じゃねえって!」
俺はゆっくりと重たい頭を持ち上げ周囲を見渡した。
当然そこには俺の部屋が…なかった。
こんばんはひぐまです
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10月10日の23時に次回投稿を予定しています
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