(53)魔王とは
「魔王について教えてほしい?」
「ああ、頼む!」
転移系魔法の学会当日、俺はシェラの研究室を訪ねた。
主な目的は学会の詳細を聞くことだったが、ついでに魔王のことも聞いてみる。
「どうして急に魔王のことを?」
「実はかくかくしかじかで…」
これを言うのに合わせて将棋の角駒と鹿の手袋人形を使ってみたのだが、あんまウケなかった。
「レイセンで日本語が通じるわけねえだろ」
ヴォイテクからしっかりツッコミが入る。
スキル、言語理解によりお互いの会話は差し支えなくできるので、ここんところは日本語が相手に伝わっているものと勘違いしていた。
それはともかく、俺は先生に銃のことを質問されたときのやりとりを話した。
「なるほどねぇ。その杖、私にも見せてくれるかしら?」
「ん、これなんだけど…」
俺はM24を出した。
シェラはそれを手に持ったり様々な角度から見たりして観察した。
「杖というより筒と言った感じに見えるわね。これどうやって使うの?」
俺は銃に弾を装填し構える発射する一連の要領をやって見せた。
もちろん実際に弾は込めていないので引き金を引いてもカチンと音がするだけだ。
ついでに言っとくと、ヴォイテクがトリセツ出してくれたお陰で扱いができるんだけどね。
「なるほど、実際にはこれに鉱石と爆轟薬を入れて弾き飛ばすわけね。これで先生は東の魔王の杖と言ったのね」
流石シェラさん、頭がいいから理解が早い。
しかも可愛い、推せる。
「魔王の杖ってのはどういうやつなんです?」
「一回それについて書かれた文書を見たことがあるわ。構造はこれにすごく似てるんだけど、火を使って爆轟薬を燃やして丸玉を弾く仕組みだった。名前は確か…トネー・グーンシュムだったかしら」
なんとなくだが、マスケット銃か、それに準じた兵器だと思われる。
この世界も既にそこまで技術は発達しているようだ。
ただし、魔法の方が場合によっては強力ゆえに普及してないと言ったところだろうか。
「いいえ、普及する以前に作れないの」
「作れない?」
「ええ、正確にはその筒そのものは作れるんだけど、爆轟薬の調合が今のところどこの国でも成功していないのよ」
確かに火薬の調合は古来は秘伝とされ、研究にも時間を要したという。
最古の火薬とされる黒色火薬でも純度の高い材料を必要としたし難しそうだ。
「誰にも作れない武器を使う。まさに魔王ね。もちろん正統ではないのだけれど」
話が銃にズレたので本題だ。
「魔王ってのはいったい…?」
「魔王は通常は西の魔王の事を指すわ。魔人族の王として君臨し、大量の魔物を保有する巨大勢力を形成しているのだけど、人間族、最近は主に帝国としばしば領土戦争をやっているわね」
なんとなく一般的なイメージの魔王で良さそうだ。
ただ領土戦争とか起きるあたり、魔王というよりは普通の国家なのでは?
と、思ってしまう。
「歴史的に、人間族と魔人族は常に対立してきたのよね。お互いを異端者として際限なく殺し合いを続けてきてる。本来なら魔人族の方が圧倒的に魔力は強いから敗北は必死なんだけど。彼らの唯一の弱点は強い光だから、なかなかこちらには攻めて来れない。一方光の薄い魔王領では圧倒的に彼らの方が強いからこちらも攻めて行けない。そうやって均衡が保たれている」
「なんだか虚しい戦いだな。どうにかしてケリ付けれないのかね」
「それなんだけど…」
シェラがやや重い口調で話す。
何か嫌な予感がした。
こんばんは
ひぐまです
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