(46)エンジン始動
「さあ!サイラス様とバロン男爵の勝負第2回戦!今度の競技は…馬術だぁ!」
「なんで先生が一番ノリノリなんだよ」
俺のツッコミを完全に無視してサイラスの馬が引かれてきた。
その馬は見事な白馬で、その上なかなかの駿馬らしい。
まぁ誰が見てもカッコいいと思う。
重要なので言っておくが馬がカッコいいのであってアヤツは別だ。
「いつ見てもサイラス様の馬はかっこいいなぁ」
「こりゃバロン勝ち目ねえぞ」
そりゃまぁ普通のチャリなら勝てないだろうね。
俺たちはスタートラインにつく。
ハンドルに手をかけてキーを捻りエンジンをかけた。
初めて聴くエンジンの音に皆が驚く。
「おいなんだあれ、なんか不気味だな」
ナイスリアクションあざす。
「それでは!スタート!」
先生の持つ旗が下された。
サイラスはものすごい勢いで走り出す。
「ほー、まぁまぁあの馬速いな」
「さすが駿馬と言われるだけあるな。まぁ科学技術の粋を見せてやろうぜ」
コースはすでにヴォイテクが調査済みだ。
いきなりエンジンとギアをフルにするとバイクが壊れるので俺は徐々にギアを上げて加速した。
「こりゃ競馬競技にバイクで出るようなもんだな」
実際そうなってるけどな。
最初のカーブをリーンアウトしながら俺はサイラスを追う。
カーブでの減速は必要だが、直線コースでは圧倒的にバイクの方が有利だ。
あっという間にサイラスの横に俺は並ぶ。
「このボクについて来るとはなかなかやるじゃないかバロン君。でもこの先は突破できるかな?」
俺はハッと目を前にやる。
「なに!?川だと?バイクであれ飛べるのか?」
「心配すんな。このコースの地形は小さな傾斜や段差、石など含めて全て調査してあるぞ」
さすがはヴォイテク。
コイツにできない事など存在しない。
「勇輝!ちょっと右に寄れ!あそこの傾斜を使えば飛べるぞ!」
バイクは馬のように跳ねる事ができない。
飛び上がるためにはジャンプ台になる地形などが必要だ。
俺はギアを5速に入れて思いっきりアクセルを開く。
ジャンプ地形に突入した瞬間俺はバイクをやや上げ気味にした。
フワッと空中に飛び出す感覚に若干不安になりながらも俺はハンドルを握り続けた。
バイクは綺麗に放物線を描き無事着地。
初めてにしては上出来だ。
この時点でサイラスを馬2頭分引き離した。
「次はなんだ?スラロームか?」
スラロームとは進路転換コースのことである。
バイクの教習では必ず項目に入っていて、蛇行走行しながらコーンを避けていく。
分かる人には分かるが、一本橋と並ぶバイク教習の難関だ。
「勇輝、これ大丈夫か?」
「任せろ!スラロームなら散々練習した!」
アクセルと後輪ブレーキをリズム良く使いながら右に左に車体を傾けて通過していく。
これによって俺は大きくサイラスを突き放し、圧倒的な差をつけてゴールした。
結果的に勝ちはしたものの、貴族には知り合いがいないため誰も話しかけようとはしなかった。
ランス達が居ないのが残念だ。
俺はバイクを収納空間に戻すと1人で長椅子に腰かけた。
周囲はまぁまぁ気まずい雰囲気になっている。
「やべえ勝っちゃったよ」
「まぁエンジンついてるのと生き物じゃ比べ物にならないだろ」
ゴール付近に目をやると、ちょうどサイラスがゴールしていた。
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ひぐまです
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