(45)またお前か
「あーあ。いいところで終わっちゃった」
「まあ、血の海作ればそうなるよね」
俺はヴォイテクと話しながら廊下を医務室の方に歩く。
「あの片付け誰がやるんだろ」
俺がそんな心配をし始めた時だ。
「ユウキ君!」
後ろから走ってくる生徒がいる。
誰かと思い振り返ると生徒会長のエレーナだった。
「あ、会長さん」
「傷大丈夫?」
エレーナは心配そうに俺の血塗れの訓練着を見る。
これはちょっとまずいな。
言い訳が苦しい。
「ああ、なんとか致命傷は回避したからね」
明らかに赤に染まりまくってるんだけども。
俺はとりあえず無傷がバレるとまずいので痛そうな格好を見せた。
「でもあの血の量は大変よ。回復魔法を…」
彼女は回復術を俺に施してくれた。
が、俺は別にどこも負傷していないので何も効果はない。
とりあえず、 何かリアクションをしないと彼女に申し訳ないので、訓練着をまくって
「ありがとう、おかげで傷が癒えたから次の訓練に向かうよ」
と伝えた。
三十六計逃げるに如かず。
「え?私の回復術ってそんなに効果あったっけ?」
自分の手を見ながらキョトンとするエレーナを後に俺は馬術の訓練に向かった。
作戦成功。
剣術は全生徒共通だが、馬術は貴族のみの訓練だ。
その間平民の訓練はと言うと槍術の訓練になる。
つまりは実戦を想定した訓練カリキュラムになっているということだろう。
ランス達とは別の訓練ということになる。
平民が歩兵で貴族が騎兵というのはもう中世に於いては逃れられぬ定めか…。
「ほ〜、まるで車の教習所みたいだな」
俺の通った学校では陶芸工房にあたる場所に馬が走るコースが設けられていた。
簡易的な橋があったり柵があったりと馬術の練習場っぽくなっている。
奥の方に厩があり、そこに生徒の馬があるらしいので俺はそこに行くことにした。
「やあバロン君、さっきの傷は大丈夫だったかい?」
どっかで聞いたウザい声。
もちろんその声の主はサイラスだ。
「別に。治ったからここにきてるんだ」
「ボクの斬撃を受けてなお屈しないその根性は称賛に値するが、やはりボクには及ばないようだね」
おっとそう来たか。
「こっちは抜刀すらしてねえんだ。勘違いするな」
「抜く間もなかったってことかな?」
「お前相手にKATANAはもったいねえんだよ」
どうにかしてマウントを取ろうとするサイラスは口をつぐんでしまった。
全く攻撃してこない相手に一方的に攻撃して勝った気になっていたことに気付いたのだろう。
だが、こういう奴はマウントが取れなくなると別の方からきたりするわけで…。
「そういえばバロン君は馬は持ってるのかい?」
「馬は持つ物じゃなくて飼うものだろ。それに俺の国では馬に乗って移動はしない」
「ふーんどんな物に乗るんだい」
俺はここぞとばかりに16式機動戦闘車や10式戦車…ではなく、オートバイを取り出した。
「おい勇輝、今戦車出そうとしてたろ?」
あ、ヴォイテクにはバレてた。
サイラスは例によってバイクを見下しながら言った。
「馬より小さくて弱そうだ。ぜひボクと馬術で勝負してもらおうか」
「なんですぐ勝負にこだわるんだお前は」
「非礼な男爵には教育が必要だからね。格の違いを教えてあげるよ」
サイラスはずいと迫る。
近い、離れろ。
そして格の違いを教わったのはお前じゃい。
「なぁヴォイテク、また負ければいいのか?」
「さあな。でもバイクなら余裕で勝つと思うけど」
てなわけで、第2ラウンドが始まってしまった。
こんばんは
ひぐまです
いつもお読みいただきありがとうございます
次回は1月18日(火)の23時に投稿予定です




