(41)ルービックキューブガシャガシャ
「バロン、お前どうしてあんなに早く問題解けるんだ?」
食堂に向かいながらモンドが尋ねる。
どうもなにも…
「俺が習ってた数学ではあれは基本なんだ」
「あれが基本って…どこで学んだんだよ」
「日本って国だよ」
俺はさくっと答えると食堂へと向かった。
無論ランスやモンドに日本が分かるわけはない。
昼食は寮の食堂ではなく図書館の下にある学生食堂で食べる。
ここでもランス達がおすすめのメニューなどを教えてくれたのだが…。
「ん…なんだこれ」
食堂では2つの列ができていた。
一つは貴族の列。
もう一つが平民の列だ。
当然メニューも別のもの。
「貴族と平民じゃ食うものは違うんだよ。こりゃ俺たちにはどうにもできねえ」
ランス達はそれが当たり前であるかのように平民の列に並ぶ。
「階級社会ってのはやっぱり慣れねえな」
ヴォイテクは珍しく俺の肩に乗っていた。
VTWは寮の部屋に置いてあるらしい。
「俺は普通の飯を食うよ」
そう言って俺もランス達に続いた。
「あれ、バロン?お前はあっちだろ?」
「おすすめのメニュー紹介しといて食わせねえってのはそりゃねえだろ?」
貴族の制服と平民の制服は色などが異なるため平民の中に貴族がいるとやはり目立つ。
だが、俺はそんなことは気にせずランチの親子丼のようなものを食べていた。
「うん!美味いなこれ!こっちの世界も米ってあるんだな」
「米?ああ、これグランっていう穀物だよ。レイセンでは麦の次によく食べられる穀物なんだぜ」
「ふーん。魚もあって米があるのか…」
「魚と米?やっぱあれか?」
察しのいいヴォイテクは既に気付いているようだ。
「ん?どうかしたか?」
「俺が住んでた日本では魚を生で食う文化があるんだ」
「生で魚を?マジかよ!?」
「寿司っていう美味い料理があるから、いつも世話になってるお礼に作ろうと思ってね」
「それは楽しみにしてるぜ!」
俺達が談笑していると貴族の生徒が5人くらいの生徒を連れてやってきた。
「やあ、君が勇者の称号を持つって噂の新入生の男爵だね?」
「んー?なんだアンタ?」
見た目はまぁ学校に1人はいるイケメン男子って感じだ。
周りの女子生徒が遠くで貴族生徒を見ながらキャーキャー言っているのを見ると、おそらくそうなんだろう。
ダル絡みだったらお断りなんですが。
「バロン、その人はルービック公爵家のサイラス様だよ」
モンドがこっそり教えてくれる。
「失礼、名乗りが遅くなってしまったね。バロン君」
「いや、俺は旅野勇輝だ。で、ルービックキューブ公爵さんのサイコロステーキ様がなんか用でも?」
さっきの光景を見てから俺は貴族とあまり関わりたくはなかった。
身分制度は正直生で体験すると気持ちが悪くなる。
「勇輝、キューブじゃねえよ(笑)。あとサイコロステーキじゃねぇよ(笑笑)」
ヴォイテクがすかさずツッコミをいれ、ランス達が笑いを一生懸命抑えているが俺はそんな事は無視だ。
「いやなに、先程君がとても数学が得意なのを拝見してね。実はボクも数学が好きなんだ。よかったら向こうで話でもしないかい?」
「別に俺は数学が得意ってわけでも好きってわけでもないんだけど」
「まぁそう言わずにボクがせっかく誘ってるんだからこっちに来るといい」
「ずいぶんとまぁ偉そうに言うね。ビーフステーキさん」
俺は親子丼を食う手を止めて答える。
「いや、ステーキから離れろや(笑)」
お決まりのように入るツッコミにランスは感情抑制の深淵を突破したらしい。
盛大に椅子の上で笑い転げていた。
「バロン!サイラス様は偉そうなんじゃなくて偉いんだ!俺らに構わなくていいから一緒に行きなよ」
モンドが隣で叫ぶ。
「いい、俺は友達といたいからここにいるだけなんで。遠慮させてもらいますわ」
「そうかい…」
サイラスは大人しく引き下がって行った。
このやり取りを固唾を飲んで見守っていた生徒達が騒つく。
「あのサイラス様の誘いを断るって、あのバロンって男爵やばいな」
「こりゃ後々恨まれるぞ」
「サイラス様、あれでよかったのですか?」
「なに、気にする事はないさ。あぁいう奴はだいたい最初は調子に乗るもの。いずれ格の違いを教えてやるさ」
サイラスは不敵な笑みを浮かべて去っていった。
俺はそんなものは無視してお椀を持ち、厨房へ行く。
「おや、どうしたんだい?」
お椀を持って唐突にきた貴族生徒に食堂のおばちゃんは少し首を傾げた。
「親子丼美味いんでおかわりもらえますか?」
「それは嬉しいわ。ありがとうね。はい、どうぞ」
「どうも」
俺は美味しく2杯目にありついた。
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ひぐまです
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次回は1月11日(火)の23時に投稿予定です




