(36)異世界でもお勉強は付き物でございます
「ユウキ君、さっきから悩んでいるようだけどどうしたの?」
「ああ、どこか魔法を学べるような場所はないかなぁと思って」
ランドルの馬の速度に合わせながら俺はセローにまたがってバイクを走らせる。
後ろにシトラスが乗っているので重心を安定させるのが難しい。
ちなみに日本ではバイクの2人乗りができるのは免許を取ってから1年後である。
俺はついこの前取ったばかりだから、まぁ交通違反になると。
ここでは捕まらないけど。
「私が幼い頃はどこか優秀な魔術師に弟子入りして魔法を学ぶのが一般的じゃったのう」
後ろのシトラスが何か懐かしそうに話す。
長いこと水晶に埋められてたもんね。
「亜神も魔術師に弟子入りするのか?」
「うーん、正確には亜神になる前じゃな。神々の使徒は魔術を扱える人間の中から適性などを見た上で選ばれておる。私はたまたまその適性があったみたいじゃの」
亜神は数百あるいは数千年の時を経てやがて神になるが、もとは普通の人間なんだそうだ。
いいなぁ、俺も亜神になりたい。
そして神と呼ばれる存在になってみたい。
あ、でもキビシイ修行はちょっと面倒だからやっぱやーめち。
「今は魔法魔術学校が各国に創立されていて、そこで学ぶのがほとんどかな。私はレイセン魔法魔術学校の出身だよ。授業料は国が出していて、魔術の研究なんかも積極的に行われているんだ」
「え、この世界にも学校が!?」
学校という単語を耳にするのは実に2週間ぶりだ。
長いと言えば長いし短いと言えば短い。
だが、ものすごくたくさんの出来事に遭遇して、たくさんの経験を積んだのは間違いない。
「そういやそろそろ勉強とかもやんねえと日本に戻ったら、間違いなく終わるな」
「ああ、勇輝は数学全然できないもんね」
「さすがヴォイテク、わかってんじゃん。」
「相棒だろぉ?」
結局いつものやり取りに収束するのだが…。
「って!バカにしてるだろ」
まぁ数学の出来がヒジョーに悪いのは事実だ。
俺一応理系なんだけども。
ここしばらく勉強なんてものは頭の片隅にもなかったし、今後忘れてもいいかと思ったがやはり人間というものは勉強と縁が離れないらしい。
「じゃあ俺もそのレイセン魔法魔術学校ってところに入学すっか」
「それはいい考えだね。あそこなら魔法だけじゃなく一般教養を基礎から勉強できるよ」
魔法魔術学校と聞くと某人気海外小説のような魔法に関連した事のみを教えるイメージがあるが、この世界においては数学や国語、社会科などの一般的な教科も重視されるようだ。
「あ、でもね。レイセン魔法魔術学校は4月しか一般生は受け入れないんだ。途中入学できるのは貴族の子息ぐらいなものだよ」
「今は確か8月じゃから、入学できるのはだいぶ先じゃの」
「あーそっか…」
俺は肩を落とした。
馬とバイクは相変わらずノロノロと進んでいる。
エンジン音と馬の足音だけが響き、しばらく沈黙が流れた。
「あ、そんな事ないぜ!」
沈黙の重い空気を破ったのはヴォイテクだ。
「貴族ってのは、要は爵位を持つ連中のことだろ?」
「あ、ああ。その通りだよ」
「言っとくが、こいつはバロンだぜ?」
「バロン?」
俺ははっと気付いた。
そういえば爵位なんてものをもらっていたことに。
「男爵だよ。勇輝男爵様だ」
「「何いいいいいいい!?」」
鼻を高くして威張るヴォイテクの言葉にランドルとシトラスが動揺する。
「どうして17歳の少年が男爵なんだ!?」
「一体どういう経緯でそうなったのか聞かせてくれ!」
俺はグラーデンに戻るまで質問攻めにされながらバイクをノロノロ運転した。
グラーデンの街に戻った俺は翌日学校へ向かうことにした。
ランドルやシトラスとはまた後日会う約束をして解散した。
俺たちは皆レイセンの街ではそれなりに有名なので、それぞれがその日の巷を賑わしたのは想定外であった。
こんばんはひぐまです。
いつもお読みいただきありがとうございます。
4章はこれで完結となります。
5章についてですが、まだ執筆が終わっていないので
しばらく休稿させていただきます。
閑話を12月26日(日)の23時に投稿予定です。




