(32)ラスボス(笑)
「んーと、ここが最下層でいいのか?」
「ランドル今ここ何階層?」
優秀なAIのくせに階層を数えるのはランドルに丸投げのヴォイテクだ。
記録ぐらいできんだろうがや。
「え〜と第256階層かな。多分」
2の8乗なら尚更数えろ2進数の機械め。
「だいぶ深く潜ったんだな…それにしても、ボスが出てこないな。ボス倒さないと攻略したことにはならないんだろ?」
「うーん、もしかしたら奇襲を仕掛ける気かもしれないね…警戒をしっかりね」
俺たちはしばらく周囲を調査する。
壁や天井などあらゆるところを見て周っていった。
しばらくウロウロしていると、ヴォイテクが何かを見つけた。
「勇輝!ここ!なんか魔力が出てるぞ」
ヴォイテクが指差した先は壁だ。
「魔力?ただの壁にしか見えないが?」
首を傾げるランドル。
俺は壁をよく見てみた。
ゴツゴツした岩が不自然に飛び出ているところがある。
「まさか、壁と同化しているのか?」
「同化と言うか石化しているんだな」
「どう言うことだ?」
壁に触れながらランドルが尋ねる。
「永く誰もきてないから石になっちまったんじゃないかな」
「石になったって…どうやって倒せばいいんだ?」
倒すってこんな壁みたいなのとまともに戦ったら勝てるわけないじゃない。
「俺たちに任せな」
俺はそう言ってランドルを下がらせた。
「ヴォイテク、あれの図面あるか?」
「あれっていうと…あれだな?もちろんあるぜ」
そう言ってヴォイテクが出したのは試製66mmてき弾銃だ。
「さすがヴォイテク、わかってんじゃん。」
「相棒だろぉ?」
試製66mmてき弾銃とは、陸上自衛隊が昭和40年代から50年代にかけて開発した対戦車擲弾発射器だ。
威力不足などの問題から採用されることはなかった兵器だが、洞窟という閉鎖空間ではRPG-7や84mm無反動砲などの武器より危険性が少ないのでこれにした。
一つ気になる点があるとすれば、そのデータどっから持ってきた?
「なんだいそれは?」
ランドルが不思議そうに尋ねる。
「見れば分かるさ。耳、塞ぎな」
パシュッッ!ドォォォォォォン!!
哀れラスボス、壁ごと爆砕されてしまった。
まぁ細えことはいいんだよ!
「さぁて、これでクリアだな!」
クリア報酬の能力が体に刻まれる。
【男爵】【Fランク冒険者】旅野勇輝Lv13
天職 なし
職業 錬金術師
称号 【救国の勇者】【最短突破記録】
体力 197
攻撃力 135
防御力 207
魔力 204(91986)
素早さ 375
腕力 185
スキル 『言語翻訳』『鉱石鑑定』『アンデント特攻+1』『魔物特攻+2』『防護+2』『初級回復術』『初級錬金術』『初級防御術』『跳躍強化+1』『瞬足』『属性強化』水属性+1・土属性+1『速度上昇』『特殊眼』『隠密』
新しく付与されたスキルの中で気になるものは速度上昇だ。
「速度上昇ってどんくらい早くなるんだろうな」
俺は試しにスキルを発動してみた。
「?」
一瞬なにも変化がないように感じられたが、ヴォイテクやランドルの動きが異様に遅くなったのに気付いた。
どうなってるんだこれは。
しばらく状況の理解に頭を使う。
どうやら正確には自分の速度が化け物級に上昇しているらしい。
「なるほど、確かにすごいスキルだが…」
大事な問題があることに気付いた。
アニメや漫画の世界ならまだしも一応ここは物理法則がある程度はある世界だ。
物は落ちるし、空気はある。
スキル使用時に移動速度が音速を超えればそれだけで衝撃波が発生し、歩く(走る)災害となってしまうのだ。
「使い方要注意だな」
ちなみにだがこの階層に降りるまでには大量の魔物を倒さなければならなかった。
が、獲得できた経験値は非常に少なく噂通りのコスパで、普通の人なら多分100階層に行く前に心が折れるだろう。
つまり今後このボスが復活して石化するくらいにならないと次の冒険者は現れないということになる。
少なくとも俺らが生きているうちにワイト迷宮の速度上昇スキルを持っているのは俺とランドル(とヴォイテク?)だけだろう。
「チート能力サイコー!」
ここで後日談を入れて置くとこの噂を聞いたレベル100の冒険者がチート級の能力でチャレンジしたんだそうだが、ボスがめちゃくちゃ強くてクリアできなかったそうな。
ボスが石化するまで待とうね!
こんばんは
ひぐまです
いつもお読みいただきありがとうございます
次回は12月14日(火)の23時に投稿予定です




