(29)なんだこのおっさん!?
どんどん下の階層に降りていくと、希少鉱石はどんどん増えていった。
これは迷宮探索ハマるわ。
「シオーネ鉱石、高温にさらすと爆発する鉱石…か」
「どんくらい爆発するんだろうな?」
「試してみるか」
俺はひとかけらのシオーネ鉱石を火力魔法で火にかけた。
スンッ!ドオオオオオオオン!!
「へ?」
点火した鉱石は指の先ほどの小さなものだった。
それが半径2m近くにもなる爆炎をあげたのだからこれには驚いた。
「こりゃすごい威力だな。こいつを火薬に使ったら相当なものになりそうだぞ」
「確かになぁ…ってなッ!?」
その時奥の方から何かがが飛んできた。
物凄い速さだ。
おそらく魔弾か何かか。
俺は素早くM29を引き抜いて魔力を込め迎撃した。
あ、説明していなかったがこの銃は魔力を込めると魔弾が撃てるように改造してあるのだ。
もちろん監修はヴォイテクである。
放たれた魔弾は目の前で飛んできたそれとぶつかり炸裂した。
パッと身を伏せて出来る限り衝撃をかわす。
まるで地下鉄のトンネルで列車が側を通過していくような音と勢いの爆風が吹き抜けていく。
その威力から見て間違いなく人間が撃った魔導弾だ。
「おい!あぶねえだろ!」
俺は大声で怒鳴った。
「いや、申し訳ない。人だったか」
そう言いながら奥から冒険者のような人が出てきた。
一応警戒して身構える。
「まさかこんな迷宮に人がいるとは思わなくてつい魔物かと勘違いしてしまったんだ。許してくれ」
身長は180cmくらいあるだろうか。
165cmの俺からするとかなりデカく見える。
見たところ悪い印象はなかった。
「私はランドル・アールフレデリック。見ての通り冒険者で1年くらいずっとここで過ごしているんだ」
「俺は旅野勇輝。こっちが熊のヴォイテクだ」
お互いに挨拶を交わす。
まあ最初のアイサツはちょっと過激だったけど。
「いや、本当に申し訳ない。ここの迷宮に入って以来人間にあったのはのは初めてだからびっくりしたよ」
それはこっちも同じことだ。
気配なんてなかったし、まさかここに人がいるなんて思ってもいなかった。
出会ったらすぐ勝負を仕掛けてくる某RPGゲーに出てくるようなヤバい人じゃなくて少しホッとしている。
冒険者のランドルがヒャッハーしながら勝負を仕掛けてきたなんて展開はごめんだ。
「それで、どうしてこんな所にユウキ君はきたんだい?」
「鉱石の採掘にここがオススメだって言われて…」
「ああ、なるほどね。確かにここは希少な鉱石も手に入るからね」
俺がこれまで集めた鉱石を見せるとランドルさんはしきりに感心してくれた。
「ランドルさんはどうしてここに?」
「ん?私か?実は、私は修行のためにここに潜っているんだ」
ランドルの目がやや下を向いた。
「修行?」
「ああ、ちょっといろいろあってね」
「何があったんだ?」
ヴォイテクが尋ねた。
「わっ!?熊が喋った?」
ナイスリアクション!(ニヤリ)
「喋ったらなんかまずいのか?」
「いや、そんなことはない…って、近い!」
ヴォイテクはグイッとランドルに迫る(もちろんVTWドローンモードに乗ったまま)。
場が和んだところでランドルさんは彼がここに来た経緯を話してくれた。
「私は、レイセンの勇者パーティの一員だったんだ。攻撃担当でね、パーティではいつも前方に立って敵や魔物と戦う役だったんだ」
「それであんな強力な魔弾を撃てたのか」
ランドルさんの魔導弾は詠唱無しで超強力な拳銃M29と同等の威力を持っていた。
「まさか迎撃するような人がいるとは思わなかったけどね」
ランドルさんは苦笑いしながら話を続ける。
「1年前、ハノーバーが攻めて来た時も私は前線で戦ったんだ。だけどその戦争では負けてしまってね。タリネの街も陥落してしまったんだ。その時にパーティの回復役だった猫耳の亜人女性が戦死してしまって、その責任をパーティの皆は私に押し付けたんだ。彼女はすごく美人で人気があったからこっ酷く追及されて、しまいにはパーティを追い出されたんだ。私はあまりにも悔しくてやり返そうとしたけどあっさり負けちゃった。だから修行して強くなるためにこの迷宮に籠もっているんだ」
追放ざまぁのために頑張っているのか。
いいね、これは応援してあげたい。
「それは辛い体験をしたんだな…」
珍しくヴォイテクが相手を労っている。
多分俺が同じことを言ったら煽り散らされるんだろうな。
「でも飯とか困らないか?どうやって1年も生活を?」
今度は俺が尋ねた。
「飯って…倒した魔物を生で食ってどうにかしてるけど…」
「は?」
あ、やっぱりこの人ヤバい人だったか。




