(28)世界一斬れる刀を作れ。ただし魔法を使うものとする。
何食わぬ顔でロビーに戻ってきた俺に受付嬢が困惑の目を向ける。
「な?大丈夫だったろ?」
「お、おめでとうございます…」
開いた口が塞がらないという感じのようだ。
まぁそうでしょうねぇ。
30秒でダンジョンを突破するような奴はおそらく先にも後にもいないだろう。
てなわけで俺は新しい称号と初期スキルを貰った。
【男爵】【Fランク冒険者】旅野勇輝Lv10
天職 なし
職業 錬成師
称号 【救国の勇者】【模擬ダンジョン最短突破記録】
体力 168
攻撃力 100
防御力 181
魔力 100(88951)
素早さ 122
腕力 158
スキル 『言語理解』『鉱石鑑定』『アンデント特攻+1』『魔物特攻+1』『防護+1』『初級回復術』『初級錬金術』『初級防御術』
これでダンジョンや迷宮に入ることができるようになった。
ちなみにだが、模擬ダンジョンはFランクかつレベル5以下の者しか入れない。
なので、この新記録はその後も抜かれることはなかったらしい。
これを聞いたレベル100のとある冒険者がチート級の能力でレベルを詐称してチャレンジしたんだそうだが記録には全く及ばなかったという話はまた別の機会に…。
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「ここがワイト迷宮か…」
「らしいな。最下層に到達した者は今この世には1人もおらず報酬も少ないからほとんど誰も来ない迷宮…」
ロザンヌ平原の北にあるワイト迷宮は労力と報酬が非常に見合わない迷宮として有名、らしい(勇輝調べ)。
が、オスカーによるととんでもない量の鉱石が眠っているらしく、採集にはうってつけとのことだ。
さっそく俺たちは中に進んでいく。
オスカーの言ったとおり、内部にはたくさんの鉱石が埋まっていた。
確かに一般の冒険者なら興味ないだろうが、錬成師にはもってこいの場所だろう。
知る人ぞ知る文字通り穴場だ。
「クレット鉱石…柔らかく変形が容易な金属か…」
俺たちはオスカーのデータを元に鉱石を鑑定していった。
「一体どれぐらい柔らかいんだ?」
ヴォイテクが鉱石を持ってくる。
俺は金属板を生成した。
曲げたり叩いたり伸ばしたりしてみる。
「なるほど…俺らの世界でいう鉛のような感じだな」
「鉛か…なら銃弾の材料にできるかもな」
後ほどVTWのデータを使った精密鑑定をしたところ、俺が持ったそれは実は鉛そのものだった。
こっちの世界でも元素は共通らしい。
現世と違うのは魔力による特殊な結合や構成をしている鉱石があるという点だ。
「ヴァンカ鋼…発見例が極めて少ない希少鉱石、かなりの強度があり極めて丈夫か…」
俺はさっそくそれを加工する。
時々スマホを確認しながら作業をしていく。
「勇輝、一体何を作ってるんだ?」
最初は興味もなさそうだったヴォイテクが痺れを切らしたのか尋ねてきた。
「ふっふっふ…じゃーん!Japanese KATANAだぜっ!」
俺は一振りの刀を生成した。
モデルは某怪盗アニメの侍が持つ斬◯剣だ。
ただし、持つ部分と鞘はカッコよく黒塗りにしてある。
「勇輝…お前頭の中さぁ幼稚園生よりスカスカなんじゃねえの?厨二じゃんか」
グサっ(いろんな意味で)!
その時、奥の方から太い唸り声が響いてきた。
グルルルルルウゥ!
「なんだ?魔物か?」
目を細めると闇の中から狼のような魔物が現れた。
魔物が出るのは迷宮のお決まりである。
狼はこちらを睨み付けると一気に飛びかかってきた。
「チッ、挨拶もなしかよっ!」
俺はKATANAをさっそく引き抜いて構える。
狼が目の前に迫り、俺にその牙を剥こうとした瞬間俺はKATANAを振り下ろした。
ヌバッッッッッッ!
狼の体は普段聴き慣れない音を出して後方へ流れた。
数秒後、狼の体はスパッと2つに分かれて血とは思えない色の飛沫を上げた。
「切れる、なんてもんじゃねえなこれ…」
刃の先端の厚さは数字で書くと0.000000252mm。
つまり鉄分子一個分と、理論的に作成可能なもっとも鋭い刀だ。
錬金術恐るべしである。




