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(23)さあ目立とう!

俺たちはタリネの町に戦車のまま入る。


その姿はタリネの人々の注目をモロに集めた。


そりゃそうだよね。


この世界には、戦車どころかエンジンでさえ存在しないんだから。


俺たちは町の広場らしき場所で停止した。


この世界の誰もが見たことのない乗り物に興味を持ったのか、戦車の周りにはどんどん人だかりができていった。


皆不安そうな表情をしつつも、こちらをじっくりと見ている。


「えーと、どうすりゃいいのこれ」


ハッチから頭を出して辺り見回す。


人前に立つのは苦手ではないが、この状況に合う言葉が出ない。


とりあえずなんか言っとこう。


何か…何か…。


「…よっこらせっと、ちとかったりいなぁ」


ヴォイテクがハッチに上がってきた。


動作はすごく可愛い。


推せる。


でも発言が完全におっさんだ。


そのせいで台無しだよ。


「勇輝、とりあえずなんか言っとけよ」


こちとらそのなんかを考えてんだわ。


どうしよう、本当に何も思いつかない。


どうしようもないのでヤケクソだ。


俺はスマホを取り出すと戦車のスピーカー(2秒で増設した)に繋いだ。


そして日曜の朝に放送してそうなヒーロー戦隊モノの登場BGMっぽいのを流したあとマイクに向かって叫んだ。


「タリネの町は今、レイセン王国に召喚された勇者、この旅野勇輝に解放された!」


一瞬の沈黙が走った後、


「ウオオオオオオオオッッッッ!」


歓喜の声が町中に響き渡る。


「おいおい勇輝、今のパフォーマンス完全にスベっt…」


「黙れ。」


大事なことなので言う。


今のネタは決してスベってなどいない。


ただの文化の違い、それ以上でも以下でもない。


終わり!閉廷!




俺たちはハッチから外に出て、地面に足をつけた。


すると群衆の中から老人が出てきて深々と頭を下げる。


「私はタリネの首長、セヴァン・クオーヌと申します。この度はこの町を解放して下さり感謝に絶えません」


「あー、堅苦しい挨拶は抜きにしてください…その、苦手なので。現在困っている事などはありますか?」


後頭部をポリポリ掻きながら俺はセヴァンさんに聞いた。


「そうですね…占領の際に食糧を徴収されまして、現在食糧不足に陥っていまして…」


なるほど、本来ならハノーバー連合王国軍は北を進む兵糧部隊と合流するはずだった。


だが、ヴォイテクの作戦で彼らは山脈を越せず、また本隊もロザンヌで俺たちに阻まれた。


結果として現地調達するしかなくなったのだろう。


「それなら心配はいらないかなと。空っぽの敵陣に食糧がたっぷり残っていますから。


「本当ですか?」


「ええ、何人か運搬要員が欲しいです。早速こちらに運びましょう」




俺はトラックを生成して何度も陣地と町を往復して、食糧の運搬を手伝った。


ハノーバー軍は食糧も武器も丸ごと置いて逃げて行ってくれた。


殊勝な心がけである。


「おい勇輝!中型自動車の運転免許もってんのか?」


「ないです」


「帰ったらタイホだな」


「やめてくれよ…」




夜にはほとんどの搬送が終わり、食料の配給も始まった。


とりあえず食糧問題は解決だ。


町の広場で一休みしてるとセヴァンさんが話しかけてきた。


「勇者殿、食糧の件、本当に助かりました。しかしあんなものを一体どこで?」


「あんなもの?」


彼は戦車やトラックを指差した。


まあ気になりますよねぇ。


「えーっと自分は錬成師なので、魔法で生成をして作りました」


「魔法で生成…あれをですか?」


見たところ彼の疑問は戦車やトラックそのものではなさそうだ。


「どういうことですか?」


「あなたが持っているあの動く箱はおそらくアーティファクトの一種というのはわかります。ですがその材質に驚きましたよ。あの金属は軽量の割にかなり丈夫だ。我々の錬金術をもってしてもあのような金属を作るのは極めて難しい」


あ、そっちの方ですか。


あまり気にはしていなかったが、俺は設計図通りの金属を使用した。


その金属はこの世界の物に比べ遙かに研究がなされて作られた物だ。


「この町の産業は今は商業が中心ですが、かつては採掘業が盛んだったんです。それで私も金属や鉱石について多少知識がございます」


なるほど、それで材質が気になったのか。


この世界でなにを作るとしても最先端の金属がヴォイテクのデータを使えば手に入る。


だが、この世界には魔力が付いた鉱石があるそうだ。


その性質などは完全に未知数である。


その鉱石などを混合すればさらに強力な金属などができるかもしれない。


「勇者殿の技術であれば優れた金属が作れるでしょう」


「セヴァンさん、そう言った鉱石はどこで収集すればいいんですか?」


「基本は地下ダンジョンや迷宮に多く存在します。ですが鉱石鑑定の技能が無ければ判別は非常に難しいかと。知り合いに良い鑑定士がおりますからその方に学んでみてはどうでしょう?」


「ぜひ紹介してほしいですね」


俺たちはセヴァンさんに鑑定士の家を教えてもらった。


そしてその鑑定士のもとに行こうと足を進めた時だ。


「あー!いたー!」


広場に翼人の声が響く。


「あ…」「やべ…」


丘の上に放置していたミューリーが目を覚ましたらしい。


これはハノーバー軍より厄介そうである。

こんばんはひぐまです。

拙い文ですがここまでお読みいただきありがとうございます。


主が繁忙のため投稿頻度がかなり落ちていますが、毎週2回は投稿できるようにします。


評価やブックマーク、感想や誤字脱字報告等頂けると今後の励みや参考になりますのでぜひお願いします。


今後とも本作をよろしくお願いします。

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