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(22)第2回総合火力演習

勇者は敵に回せば死神となる存在である。


その異世界からの勇者はハノーバー軍の陣地が見下ろせる小高い丘に立っていた。


「ほー、あれが敵陣かー(棒)」


「あれを潰せばレイセンの領土が奪回できるってわけだが」


そう言いながら戦車を取り出す勇輝の隣で倒れている翼人が1人。


「ううううぅ…」


その翼人がのびている理由は勇輝のバイクに乗ったからである。


「乗せてやろうか?」という言葉に甘えて乗ったはいいが、ロザンヌの山を猛スピードで駆け巡るとは思ってもいなかったらしい。


山を半分ほど降りた頃には既にグロッキーになっており、丘についた頃には完全にノックダウンしていた。


「ユウキさん…うぅ…あんな…激しい乗り方するなんて…うぅ」


あーこりゃダメだな。


一瞬勘違いするような呻き声を上げるミューリーを無視して俺たちはとっとと戦車に乗り込んだ。


「目標、前方敵陣!砲撃は任せる!」


「柵と前の方の天幕だけぶっ飛ばして後はとっとと国に帰ってもらうんだろ?」


「さすがヴォイテク、わかってんじゃん。」


「相棒だろぉ?」


よし決まった。


俺たちが優先したのは敵を全滅させることではなかった。


少しでも多くの恐怖を味わせて今後の抑止力とすることを目的としている。


「主砲撃ち方初め!」


ドオオオオオオオン!




一方ハノーバー連合王国軍の陣地では想定外の速度で迫ってくる戦車に迎撃の態勢が整わなかった。


騎馬隊が馬に跨る頃には既に戦車が火を噴くのが見えた。


爆音を上げて柵が吹っ飛ぶ。


それを見たハノーバー軍の兵士は戦うより逃げることを決めた。


もともと奇跡のような確率でロザンヌの戦いを生き延びたのである。


あの死地を生き延びてここで死にたくはないという生き物の本能がそうさせたのだ。


地面を響かせながら高速で突っ込んでくる戦車に司令官のロックさえも戦意を喪失する。


この状況は勇輝にとっては都合がいい。


魔法による攻撃を受ければいくら変態装甲を備えた10式戦車といえどもどうなるか分からない。


「退けっ!逃げるんだ!」


無人になった陣に残っていたのは打ち捨てられた武器や防具と食糧だった。




「ありゃ?随分とあっさり逃げ出したな」


「さすがに勝てねえと踏んだんだろう。ありがたいことじゃねえか」


俺たちはハッチから顔を出して辺りを見る。


「確かにこれ以上殺戮をするのもごめんだな」


勇者としての存在がただの大量殺人マシーンであればいつかはこの世界の全てから敵対視されるだろう。


それはどうしても避けるべきだ。


「さて、あれが城塞かな」


俺たちは解放したタリネの街に入ることにした。

長らくお待たせしました

次回は11月21日(日)の23時投稿予定です

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