(20)相棒だろぉ?
ヤバい、とにかくヤバい。
「4時の方角から火球だ!回避しろ!」
ちなみに「やばい」という言葉は江戸時代にはもうあったらしい。
牢屋のことを泥棒達の間で「厄場」と呼び、それに関連付けて使われていたとか(諸説あり)。
まぁ、詳しくはG◯ogleで調べてもらうとして…。
この世界で唯一俺たちの知識が及ばない物、魔法。
それが俺たちに迫り来ている。
ぶっちゃけ車体自体は十分耐える事ができるはずなのだが、生身の人間である俺が耐えきれないだろう。
ヴォイテクは素早くハンドルを切った。
土砂を巻き上げながら車体がドリフトする。
とてつもない横Gに耐えつつ俺は火球の方を見た。
すると驚いたことに火球もグイッと進路を曲げこちらに向かって来ている。
「チッ、ホーミング機能まで付いてやがるのか。チャフ射出!」
そう言った瞬間、辺りに銀色の金属片が撒き散らされる。
ホーミング機能とは自動追尾機能のことだ。
チャフは本来はレーダー誘導のミサイルの欺瞞に使うものだ。
ホーミング機能があるならと思い試して見たのだが、魔法にチャフの欺瞞は通用しないらしい。
ヴォイテクも不規則なスラロームで回避を試みるが火球の運動性能は遙かにそれを上回る。
「くっ!ぶ、ぶつかる…!」
そう思い、目を閉じた瞬間爆発音が響いた。
ああ、俺死んだわこれ。
僅かに時間が経った気がした。
「死んで…ない?」
何が起きたのか分からず周囲を見渡す。
すると目の前を銀翼が駆け抜けていった。
「ミューリー?!」
彼女は一気に高度を上げながらこちらを振り返ってウィンクをした。
彼女は迫る火球を魔導弾(とでも呼んでおこう)で、次々に迎撃している。
「これくらいはできるんだからね!」
この世界の技術に助けられた。
胸が熱くなるようなそんな気がした。
「よし!この勢いで突っ込むぞ!」
車は敵陣に向かっって突き進み始める。
それに合わせて砲塔が前を向き、主砲同軸の7.7mm機銃が猛射を浴びせた。
俺も銃座に付き、12.7mmの機関銃を敵に向かって撃ちまくった。
今度は要塞での戦闘とは違い相手がよく見える。
銃弾が敵に当たり血飛沫が上がっていく。
普通なら気分が悪くなるような光景だ。
だが、その感情は高揚が全て飲み込んでいった。
敵兵は慌てふためいて撤退を始める。
車両が敵陣に入る頃にはいたる所に武器や防具が打ち捨てられており、混乱の様子を如実に表していた。
皆反対側の出口から一目散に逃げていく。
「逃げ足はすごく速いな。戦いは…終わったのか…?」
「らしいな」
俺は誰もいなくなった敵陣に足を下ろした。
激戦3日間、ついに戦闘は幕を閉じた。
機動戦闘車に寄りかかって俺たちは敵陣内を見渡していた。
ミューリーがゆっくりと降りてくる。
「ミューリー!さっきはありがとう。本当に助かったよ」
「ううん、気にすることはないよ。こちらこそ、あんな数の敵を追っ払ってくれて、本当にありがとう!」
彼女はにっこりと微笑んだ。
「ところで、北の方はどうなってるんだ?」
北、つまりナスールの方面は戦闘部隊は来ないとヴォイテクが予想したところだ。
万が一ロザンヌがここが突破された時に、敵の兵站部隊を断つためにレイセンの全部隊を派遣している。
「あー、それなんだけどね。敵の兵糧部隊、ほとんど護衛いなかったみたいでさ」
その言葉に安堵の息をつく。
まさかレイセンの全戦力が北の兵糧部隊に向けられるとは敵も予想していなかったに違いない。
結果瞬く間にハノーバー兵糧部隊は壊滅し、大量の食糧を置いて遁走したようだ。
危ねえ、これでレイセンが負けてたら俺たちは永久にA級戦犯だ。
フラグ成立でとりあえず安心。
「ユウキ、このあとはどうするの?」
「決まってるだろ。山にいる敵を襲撃する」
現在占領されている山の上のタリネという町はレイセンのものだ。
そこを奪回しなければ勝ったとは言えないだろう。
俺たちはこのレイセンから脅威の全てを取り除く使命がある。
日本に帰るため、だ。
今からでも出発するぞ!という雰囲気の俺たち。
「待って待って!1人でタリネに攻め込む気?」
驚くミューリーを見て俺とヴォイテクは顔を見合わす。
「当たり前」「当然だろ」
「ええ…!」
彼女が絶句したのは言うまでもない。
「さすがヴォイテク、わかってんじゃん。」
「相棒だろぉ?」
こんばんは
ひぐまです
拙い文章ですがお読みいただきありがとうございます
次回は11月13日(土)の23時投稿予定です




